第7幕〜人間と妖精②
ホノカとの連携技「闇巻き羽炎舞」で上空の怪鳥達をあらかた撃退したクロネは詰所周囲をプロテクトで必死に守って居るホムンクルス達を援護のため戻る。ブレスを吐き尽くしたホノカはよろめきながらメルの元へ……。ぶつぶつ文句言いながらホノカを休ませ介抱するメル。
「感謝」
クロネの耳元でそう告げたミナモ。向かってくる大蛇を撃退しながら
「ミナモは何か試したいのでは?」
何かを察したかのように告げたクロネ。
「ここ、お願い」
オボロ、アミュの居る方へ飛んで行ったミナモ。クロネはプロテクトを発動しているホムンクルス達を避難させ詰所の最後の砦となった。息切れしながら、ふらつきながら詰所内へ避難して行くホムンクルス達……。
(メル達……やりますわね……お疲れ様)
「せっかく完成したオボロ様の作品!臭い唾液一滴すら逃しませんわ!」
羽扇刀に魔力を込め目つきも険しく構えたクロネ!その気迫を間近に見たトスクール達は押されはしたが、強さを知っているため心強いとも感じた。
「我々は荷馬車を守りましょう!」
乗ってきた荷馬車と隅で怯えているアースランナーの方を指差すトスクール。
「クロネさん、私達は移動します!」
魔法を放ちながら移動するミティーラ達にスコットも合流した。
アミュの変速的な動きに着いていけないオボロがいた。
(蜘蛛独特なんだろうな……あの動きは……)
あっちへ飛び、こっちへ飛びと動きながら仕留めて行くアミュは……やはり楽しそう。人間から見たらニコニコしながら戦闘とか考えられないし気味が悪いと思われても仕方ない。そうも考えてしまうオボロ。
「お兄ちゃんっ!見て見て!」
魔操撚糸・糸鋸にて細かな刃の糸を操りスライスしているアミュ。取りこぼしや逃れた獣を裂空爪で仕留めるオボロ。四方から押し寄せる獣達。大技で終わらせたいオボロだが、現在整地中の場所なので渋っていた。
『マスター、アミュ、提案』
と、ふわり浮くミナモからブレインマウスが!
蹴散らしながら提案を聞く二人……。
『わかった!時間は俺が!』
『アミュとミナモで?そんなこと出来るの?』
『可能……失敗したら……その時はよろしく』
アミュはロックピラーで台座を作り地面から高さを作り、魔獣化し集中し始める……。その間オボロはアミュに近寄る獣の撃退。
アミュを中心に大きく広がる魔法陣……。
上からその魔法陣を見下ろすミナモは重ねるように別の魔法陣を展開させて行く……。
(多重魔法陣ってやつ、か?)
『マスター、退いて』
ミナモの合図で魔法陣から出るよう移動したオボロ。
「アースグレイブ!」
「アクアボール」
アミュの魔法とミナモの魔法、同時に発動!
ズブズブズブ……
ボコボコ、ボコボコ……
土と水が混ざり魔法陣の部分が泥沼化した!
「あれ?アミュの魔法は?」
周囲をキョロキョロするアミュ。
「マッドグレイブ、アミュ、成功」
澄ました顔のミナモ。
泥沼化した所へ足を取られ身動き出来ない野犬や猟犬、大蛇は胴体をくねらせ泥水を撒き散らしながらもがく!広範囲な泥沼にはほとんどの獣達が!危険と感じ逃げて行く者も確認出来た。
「マスター、アミュ、後は任せる」
膨大な魔力の持ち主のアミュに合わせた事を後悔しつつやり遂げたミナモは退いていく……。
「アミュ!沼の上から巣で捕獲だ!」
さらに逃げられないようアミュに指示を出すオボロ。
両前脚を高く掲げ
「まっかせてぇ!捕縛網・麻痺」
お尻から大小様々な巣を落として行く。その巣に捕らえられた野犬、大蛇を仕留めて行くオボロ!
「裂空連爪!」
手に巡らせたオーラが爪の形で連なり飛んで行く!泥水を巻き上げ巣も裂き仕留められて行く!
「魔操撚糸輪っ!」
人型へ戻ったアミュは指先から糸を出しその先に撚糸輪を巻きつけ獲物を斬って行く!
詰所周囲はすでに落ち着いていた。オボロとアミュの戦闘を見つめていたスコットは自身の相棒ディフェンダーの持ち手を強く握っていた!
(少しは人間だって出来るとこ見せなきゃ!)
「トスの旦那、ここはもう良いよな?」
「まさか……加勢しに?」
「当然よぉ!」
大声を張り上げ走って行くスコット。呆れ顔のミティーラは
「かっこいいとこ、見せたいだけでしょ……」
後方に居るミナモの方をチラリと見て
「あぁ言う単細胞な人間もいるから、気にしないでね」
「……ホノカと同類」
小声で漏らしたミナモ。
泥沼化した場所で残った獣を仕留めているオボロ達の元へスコットが気合い入れて登場した!
走りながらディフェンダーの剣先が地面に擦れている!
ディフェンダーの剣にオーラが集中していた!
両手で大振りに振り上げたスコット!
「行っけぇ!オーラザッパー!!」
擦れた地面を走るようにオーラが放たれた!
泥沼ごと裂くように通過して行くオーラザッパー!
低い泥沼の津波が発生する!
「どうだいオボロさん?これでも冒険者ランクDだぜ?」
ディフェンダーを肩に担ぎ白い歯を見せた!
スコットの一撃で片付いたので褒めるオボロ!
「やるじゃないかスコット!」
「こんな大技、何回も出せないけどな!ははは」
二人で笑いあっていると……スコットの背後にアミュが!
「ねぇ?アミュのお洋服……泥だらけなんだけど?」
泥まみれのゴスロリメイド服のアミュが泣きそうでもあり、怒っているようにも見える複雑な顔で立っていた!
罰の悪そうな顔で一目散にミティーラの背後へ逃げたスコット!それを大股でゆっくり追うアミュ!オボロは汚れを気にしながら戦うアミュを知っていたためアミュから離れた所から撃退していた。
「相当怒ってんなアミュ……」
「後先考えず大技放つからですわ」
「自業自得かにゃ?ははは」
オボロとクロネはアミュを止めようとしなかった。
━━━
詰所の損傷はほとんど無く、整地した箇所が死骸だらけになったことくらい。皆で協力し後始末をする。死骸は山積みにしホノカのブレスで焼却。素材になりそうな物、食べられる部位の見極めをメルが仕切る。もくもくと働くホムンクルス達。手伝うトスクールは
「彼女達は働き者ですね。嫌そうな顔をしていない」
「そういう習性なんですよぉ」
おそらく妖精とは違うと考えているオボロはそれとなく誤魔化す。
と、スコットが食事を振る舞いたいと提案してきた。日頃のお礼と妖精達との出会いと言う名目で。お店ほどの味は保証出来ないがスコットの野営料理は食べてみるべきとトスクールが後押しした。
そしてアミュがお風呂に入りたいと言い出すので食事の前に。女性陣が談笑しながらお風呂場へ……。
スコットとトスクールは台所で調理を始めた。近くで興味深く調理する様子を眺めるホムンクルスも居れば、後方で距離を保ちつつ見学するホムンクルス。怖がって避難してしまうホムンクルス。個々の性格が現れていた。
オボロの耳がぴょこぴょこ動く……。お風呂場からの楽しげな会話……。
「メルちゃん達はお風呂好きなんだぁ」
「アミュも好きぃ!」
「クロネさんはスタイル良いわよねぇ」
「そ、そ、そんな事ありませんことよ!」
「俺だって、スタイル良いだろ?」
「ホノカの胸はブレス吐くための空気袋みたいなものでしょ!」
お風呂場には、人型の魔獣、ホムンクルス、人間……。普通の人間なら敬遠するであろう組合せにも屈しないミティーラの度胸に感心していたオボロ。
出来上がった料理をテーブルへ並べるスコット。獣肉と木ノ実のシチュー。どうやら甘口と辛口で別けて作ったようだ。照れながらスコットは説明してくれた。
「お店ほどでは無いが……外で食べるには贅沢だと思うぜ」
樽からお酒を注ぎ、男性陣は早速呑み始めた。先ほどの戦いの武勇伝を各々語りながら。
と、飛んできた風呂上がりのホノカは湯気なのか煙なのかわからないくらい火照っていた。テーブルへペタンと座り、近くのコップの飲み物をグビグビ飲んだ。
「風呂上がりの水分は最高だな!」
「おっ?良い呑みっぷりだな!ガハハハ」
ほろ酔いオーノルがホノカに話しかけた。
ホノカの様子がおかしい。釣り目が垂れ目になり
「あれぇ?マスターが二人?……三人?」
どうやらお酒を飲んでしまったらしい……。酔ってしまったホノカはふらふらと飛び回りスコットやトスクールからお酒を一口ずつ貰いに回った。
呆れるメルとミナモ……。
(ちょっと前までビビってマスターの後ろに隠れてたのに……)
オボロの隣へ座ったアミュがお酒を呑む人間達を羨ましそうに見ていた……。
「アミュにはまだ早いから、こっちを飲もうね」
ミルクを勧めたオボロ。
お酒を呑み談笑し合うスコット達を見てオボロは元の世界での飲み会を思い出す。仕事終わりの上司との飲み会。同僚との飲み会。友人との飲み会。良い記憶も悪い記憶も。
(まぁお酒も……悪くない)
コップに注がれた赤いワインをフィルターにし楽しげな雰囲気を楽しみ、それを一気に飲み干した。
これでまたスーデルの町の人間達と仲良くなれたと感じたオボロ。
━━夜更け
詰所では酔い潰れた人間とオボロ達が寝息を立てていた。
「グルルル……フシュー」
崖の上から何者かが様子を伺うように地上を見ていた。
ガリガリガリ……
鋭い爪で大木に傷を付ける……。
「ゴルルル……」
低い唸り声を上げて森の奥へ去って行った。
真っ赤なTシャツを着て居るような大柄な後ろ姿……。
【能力】
・マッドグレイブ
アミュのアースグレイブと
ミナモのアクアボールの合わせ技
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