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第7幕〜仮設橋と武芸団

※オボロ

猫を二足歩行にしたような猫獣人。青葉爽太の転生後の姿で青葉ナナの父親。固有魔法はD=D。任意で異空間へ物質の出し入れが可能。


※クロネ

魔獣黒鳥のメス。血の盟約により魅惑なボディラインの有翼人へ姿を変えられる。オボロを強く慕い想っている。


※アミュ

魔獣ブラックウィドウのメス。血の盟約によりゴスロリメイド服の幼女へ姿を変えられる。オボロの事を王子様と思い、普段はお兄ちゃんと呼ぶ。


※メル・ホノカ・ミナモ

オボロをマスターと呼ぶ知能あるホムンクルス達。人の手に乗せられるほどの大きさ。普段はD=Dの中で生活し色々生産している。

 

 スーデルに滞在したエレナータ達を無事に川を渡らせた後のオボロ達。


 ━━ギルド依頼と武芸団の両立


 を、従者の魔獣クロネ、アミュ、ホムンクルスのメル達に高らかに宣言した。クロネもアミュも聞き慣れない言葉に戸惑いつつもオボロを手伝うことに。

 仮設橋は単純に丸太を並べ、組み合わせ表面を平らにし設置したもの。とりあえず人の往来が可能であれば良しとしたはずだが、出来上がりは馬車が1台通れるくらいの幅の橋になっていた。安全のため注意書きの立て看板を仮設橋手前に設置した。オボロとメルはハイタッチをし満足そう。アミュも完成したのが嬉しいのか一緒に喜んでいる。クロネは建設の工程すら今ひとつ把握出来ず、言われた事をこなし、一つの事に真剣に取り組むオボロを羨ましくも熱い視線を送る。人間だけなら何日もかかるであろう作業を丸1日で仕上げてしまった。オボロの前世での知恵、ホムンクルス達の器用さ、クロネ、アミュの魔獣の力、それらが噛み合ってなせたこと。


 ━━仮設橋から離れた所


 多種多様な木々がひしめく奥へ行くと少し開けた場所へ。以前にクロネの背に乗り上空から発見した所である。

 オボロとメル、ミナモが紙を広げ周囲を見ながら、指差ししながら相談し合っている。クロネは邪魔にならぬようアミュを連れ狩りに行く。面白そうだからと口から煙を漏らしホノカも付いて行く。

 そして狩りから戻るクロネ達。

 地面に線が描かれていてオボロが説明してくれた。今いる場所を作業員の休憩所と資材置き場のような詰所にすると。その建物の見取り図を地面に描いていた。その説明するオボロの手には黒い羽ペンがあった!クロネはそれを確認すると


「オボロ様!その羽ペンは?」


 指で羽ペンをくるり回しオボロ


「良く気がついたね!クロネの抜けた羽から作った羽ペンだよ!まだ試作品なんだけどさ」


 自分の抜け落ちた羽が使われていてオボロに触れられているような感覚に陥るクロネは恥じらいながら


「あ、使い勝手は、ど、どうでしょう?」


 羽ペンをしっかり持ちオボロ


「手に馴染むし書きやすい!」


 悟られぬよう尾をパタパタさせ喜ぶクロネ!


「お役に立てて光栄ですわ」


 アミュはホムンクルス達に巣網の中の獲物を広げ自慢していた。その獲物の中からクロネは見覚えのある獲物を引きずりオボロの前に差し出した。

 クロネはにやつき、照れながらも


「見覚え、ありませんか?オボロ様?」


 顎に手を添え見つめるオボロは━━!


「あー!おぉ!この大陸でも生息していたのか!」


 灰色の硬い表皮を重ね合わせたようなダンゴ虫、クワガタ虫のような強靭な顎!はぐれ島で初めて大きな獲物!そしてクロネとの初めての共闘!2人共、当時を懐かしむ表情をしていた。その時の事をアミュやメル達に興奮して話し出すオボロ。当時のクロネは意思疎通がほとんど出来ておらず役に立てなかったことも思い出してしまう。


「俺だけでは倒せなかったからなぁ……クロネがいてくれてあの時は本当助かった!」


 オボロの感謝の言葉が心に響くクロネは顔には出さず尾をパタパタさせ喜んでいた。そしてダンゴクワガタの顎と表皮以外は皆で焼いて美味しく頂いた。


(この顎と硬い表皮はダリルに譲ろう)


 はぐれ島で共に生活していた手長猿のダリル。今はマーマン達のザザ村に移住している。


 翌日から本格的に詰所の建築が始まった。見取り図の部分を掘り基礎を作り木造のログハウスを目指して作業は続く。と同時に詰所から橋の建設現場までの道の整備も。オボロの肉体と頭脳はフル回転、チビちゃんもサポートと指示で慌ただしい。それに応えるかのように奮闘するホムンクルス達。

 一方クロネ、アミュは……武芸団での出し物の訓練をメルの指導のもと行っていた。武芸団についてはオボロから技や芸を民衆に見せて楽しんでもらうと説明されてはいたが全てを理解していないクロネ。アミュは理解と言うよりも楽しさ優先していた。

 クロネもアミュもギルドからお願いして借りた魔力制御の腕輪をして訓練する。それを装着する意味は魔力を使用していないことを見ている側にアピールするため。普段から魔力を使うクロネ、アミュにはそれが負担となり思うようにいかない。笛を持ち応援と指導するメル。


「ほらクロネ!しっかり的を見て!視線をずらさない!」

「アミュはもっと集中よ!」


 クロネは自分の羽で作成された矢を的に当てるダーツの訓練。アミュは大きな酒樽に乗りバランスを保ちジャグリングの訓練。2人とも元々の運動神経は人間よりも優れているためコツさえ掴めば大丈夫とオボロは信じていた。クロネはオボロの期待に応えるべくメルのイタズラにも耐える。


(はぁ……メルが周りを飛び回るから……気が散りますわ……)


 アミュも服を泥だらけにしながらも楽しんで覚えようとしている。


(魔力使えないのって……こんなに大変なんだ……)


 訓練の休憩中クロネは時折強めな魔力反応を遠方から感じていた。自分やアミュとも違う何か異質な魔力反応。こちらに接近している訳ではないので気に留めておく程度にしていた。


 ━━数日後


 詰所と道の整備が完了した!オボロはげっそりと痩せ、ホノカはブレスを出す気力も無さそう。ミナモは安心したような表情で水浴びし他のホムンクルス達も詰所内で各々くつろぐ。訓練終わりのクロネ達が詰所へ入る。

 ザザ村の集会所をさらに広くしたような室内。殺風景だが木の香りがどこか癒やされる。


「お疲れ様でしたオボロ様!」

「広い!広ぉい!お兄ちゃん凄い!」


 室内を走り回るアミュ。

 クロネとアミュの進捗状況が気になるオボロは明日見させてもらうと告げた。急な事に動揺を隠せないクロネは何気にプレッシャーに弱く、アミュは二つ返事で動じていなかった。


 ━━翌日


 作業は全て休みにし、開けた場所で武芸団の出し物のチェックをする事に。ずらりと並んで見学するホムンクルス達。緊張気味なクロネを気遣いオボロが手本的な意味でやり始めた。

 手に収まる程度の麦の殻を入れた布袋をジャグリングして行くオボロ。2個から3個そして4個、5個……高さや速度を上げ最後は全てをキャッチし終了。さらに同様に万能ナイフでやってみせた!拍手と歓声が飛ぶ!照れながらもオボロ


「こ、こんな感じかなぁ。にゃはは」


「お見事ですわオボロ様!」

「アミュも頑張らないとっ!」


 次はアミュ。自分よりも大きな樽によっこらせと乗りバランスを取りながら転がし移動しその上でメルから投げられる布袋をキャッチしジャグリング。目がかなり真剣なアミュ。ジャグリングが少し苦手なアミュにはとりあえず3個まで頑張ってもらった。多少バランスを崩しながらも終了。やり切ったのか牙をニョキッと出しスマイル。

 続いてクロネはいわゆるダーツである。何回も深呼吸し集中と落ち着きを保ち、一投。

 中心スレスレに命中!

 続けて二投目、三投目!

 これらも一投目と同様スレスレで命中。大勢のホムンクルス達とオボロが見ていたためか今ひとつと言った感じのクロネ。

 オボロは立ち上がり2人を励ましアドバイスする。


「クロネもアミュも頑張ったみたいで嬉しいよ!アミュはバランスと集中かな!ジャグリングの布袋を単眼で追い掛ければ上手く出来そうだな!」


 ━━!


 アミュは八つの単眼を持つブラックウィドウ。人型でも場所は違うが単眼がある。オボロに言われるまでなぜ気が付かなかったのかと言うような顔になったアミュ。


「クロネはぁ……ちょっと照れがあるか?まぁ俺も恥ずかしい気持ちはあるんだけど……。そこは気にせずクールなクロネでやれば良い!それと━━」


 ━━クロネの手を取り立ち上がらせ、ダーツの構えを後ろから密着してアドバイスするオボロ!触れるオボロとクロネの翼!後方からオボロの息遣いと優しい声!クロネの手首、肘にオボロの肉球の温もり!久々に接近され舞い上がってしまうクロネ!


(はぁ!駄目ですオボロ様!全く頭に入ってきませんわ!)


「あ、ありがとうございます……オボロ様」


 冷静を保つので必死なクロネであった。その二人のやり取りをメルとミナモもニタニタしながら見学していた。

 その後鍛冶屋的な事をお願いしたホノカの所へ様子を見に行くオボロとメル。詰所から離れ小屋を構えてある。煙突からはもくもくと煙が立つ。汗だくになりながら作業に没頭していたホノカ。どこか透明な羽が濁っているようにも見えたオボロは声をかけた。


「お疲れホノカ!金型は上手く行きそうか?」


 火とにらめっこしているホノカは振り返らずに手だけ出し待っててとジェスチャー。


 ……火の跳ねる音


「ぬぉぉ!マスター!俺頑張ったよ!」


 テーブルで大の字に転がるホノカ。メルが団扇で風を送ってあげた。金型の種類は現代で言えば主に釘やビス、金具である。棚に並べられた金型とそれのサンプルを手に持ちチェックするオボロ。改めてホムンクルスの器用さを実感していた。


「今回の橋の建設はホノカの能力は非常に重要!」


 サンプルの釘を試し打ちしたオボロ。


「うんうん!サンプルも良さそうだ!」


 寝転がりながら親指を立て得意気なホノカ。


 そして夜中━━


 テーブルのランプの薄明かりで図面を広げ話しているオボロとメル。目が覚めてしまったクロネはこっそり聞き耳を立てる。


「どうマスター?こんな感じな衣装!」

「サーカス団みたいだな!うん良いんじゃないか?なんだちょっと……多めだけど……」

「それくらいが良いのよ!私達のもあるから!」

「ん?なんでメル達のまで?」

「むふふ!雰囲気だけでも!」


 どうやら武芸団の話のようだ。


「それとあっちの方はどうだメル?」

「作れたけど……今ひとつな音なんだよね……適正ありそうな子に頑張ってもらうわ」

「苦労かけるなメル、ありがとう」

「そんなこと言わないでマスター!私達も楽しんでるから」


 ……オボロの睡眠時間が気になるクロネは再び眠りについた。


 ━━翌朝


 詰所の小窓から陽が射し込む。屋根の上には小鳥が囀る。仮設橋、詰所の建設で疲労が溜まっていたオボロ達は気持ち良さそうに寝ている。メル達ホムンクルスも羽を休めるかのように寝ている。


 ……遠くから話し声が聞こえる。


「おぉ!ここかぁ!詰所は!……おっ邪魔しまーす!」


 静かにドアを開けると━━


 オボロと黒鳥姿のクロネの周りには小さな妖精達!天井の角には巣を張り人型で寝ているアミュ。その周りにも小さな妖精達が!その光景はまるで異空間!

 訪れたギルド長トスクール、ギルド職員のミティーラ、冒険者スコット、棟梁のオーノルとその他人間達は言葉を失ってしまう。


「こ、これは……」


 トスクールが声を出す。


 奥から活動していた数体のホムンクルス達が現れた!


「ピー!ピピッ!ピピピーッ!」


 オボロとメルの周りを飛び回り起こすホムンクルス達!

 目をこすり寝癖のままのメルがむくりと起きる。


「んん?もう……朝?」


 ぼんやりと周りを見渡すメル……。


 ドア付近には人間達が!


 ━━!


 バタバタ慌てるメル!


「マ、マスター!起きてぇぇぇ!」


 詰所に響き渡るほどの大声を出したメルに反応し寝ていたホムンクルス達が起き出す!クロネもその声でゆっくり目を開ける。詰所に見慣れた人間達が確認出来たクロネは一気に目を覚まし、人型へ戻った!


(確実にメル達の事がバレてしまいましたわ!)


♢私とキャットふぁーざぁーを見つけて下さりありがとうございます!

♢不定期更新ですが、ブックマークや応援、コメントよろしくお願い申し上げます!

      ⇩⇩⇩⇩⇩

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