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第7幕〜ナナ魔法少女になる

 

 仰向けから起き上がりてるてる坊主姿のゼクセンを机に座らせたナナも椅子に座り頬杖をついた。ゼクセンはナナがあまりにも近いので少し壁側へ後退。ぼんやりと記憶をたどる様にゼクセンに話す。


 ……


「そう!だからね!あの時現代の事、私の家、そこに住んでるサキさんとか皆の事を強く思ったの!」


 小難しい顔のゼクセンを見つめ


「どう先生?私の思いとか願いだけでは……無理、かな?」


 自信は半々と言った感じのナナ。腕組みでふわりふわり左右に移動するゼクセン。


(確かに魔法を扱う上で気持ちは必要な要素……。しかしナナの話す事では不安定過ぎる……)


「私の多すぎる魔力を燃料って言うか……なんかそんな感じで……戻れるかなぁって、さ」


 ぽつり呟くナナの前をちょこちょこ移動しているゼクセン。


(そう言われれば……病室で一瞬膨大な魔力を感じたのぉ)


 ナナを見下ろす感じで浮くゼクセン


「ここで試すのは危険過ぎる!じゃから隠れ家へ一旦戻る!」


 ゼクセンを見上げるナナは


「うん!わかった!先生の助けが無いときっと無理」


 数日静養した後、生活雑貨など色々購入し町を出る準備をするナナ。


 ━━数日前ギルド


 ナナからの提案でヘレンがべっこう蜂の討伐をしたと虚偽報告したギルドでは、数日その話題が冒険者間で騒がれていた。


「お付きの兵士は強いからなぁ」

「ヘレン様も多少魔法使えるんだったよな」

「ヘレン様が活躍出来なかったかから言い出せなかったんじゃねーか?」


 など様々ではあるが最終的に納得していた冒険者達。しかし冒険者兼スタッフでもあるララは半信半疑であった。


(あの無数の死骸とやり口を目の当たりにしていないから皆、納得してしまうのでしょう……私は……)


 そして現在━━


 町の出口ではララを班長とした一団が最終的な準備をしていた。その中にはヘレンとお付きの兵士2名の姿もあった。木箱に乗ったララはおっとりした口調で集まった冒険者達に話す。


「今日は集落近辺に縄張りを持つ猪達を討伐します。目的地へ行き野犬の死骸の餌でおびき寄せ包囲して討伐します。皆さんよろしくお願いします」


 総勢10名が熱の篭った掛け声を上げ出発。ヘレンは何かぶつぶつ言いながら自分の馬で最後尾を追う。


「使えなさそうな冒険者より私の魔法で一網打尽ですわ」

「それに私が後方支援とか……ありえませんわ!」


 どうやらララから前衛ではなく後方支援を頼まれた模様。お付きの兵士は怠そうに馬に乗っている。


 ━━集落近辺


 すでに調査済みの小さな洞窟近辺の広い場所に大きな魔法陣を展開するララ。残りの冒険者は岩陰や大木に身を隠す。魔力消費が激しいのか息切れ気味なララは水分補給し辺りを見渡す。


 ララの固有魔法【鈍化】

 魔法陣内に存在するものは感覚が狂わされ動きが鈍る。対象の強さや抵抗力で効果に差が出てしまうのと魔力消費が激しく何回も使用出来ないのが欠点。


 冒険者に合図を送り魔法陣の中心に野犬の死骸を数体重ねた。ちなみにヘレン達は冒険者達よりも離れた後方にて待機させられていた。


 待つこと数十分……。


 一頭……二頭……また一頭と鼻をひくつかせ低く鳴き死骸に群がる猪達。死骸を引っ張り独占しようとする者、重なる死骸に頭を埋め貪る者……。物陰から息を潜めララの魔法が発動するのを待つ冒険者達……。ララは大木の枝から見下ろす様に観察……そして━━


「鈍化」


 広がった魔法陣をうっすらと光がドーム状に包む!魔法が発動したのに気付かず死骸を貪る猪達。魔法陣の外側から弓やボーガンで仕留めて行く冒険者達!それに気付き逃げる猪を剣で仕留めるララと冒険者!討伐する声に気付き現場へ近づくヘレンも活躍したいため魔法を放つ!


「ロックゲイザーよ」


 見事魔法陣内の死骸を貪る猪の横腹に当たり討伐!当然と言うような態度のヘレン。お付きの兵士は小さく拍手する。


 広場には数十体の新鮮な猪の死骸が広がる!

 安堵のため息を吐き出しララ


「皆さぁん!お疲れ様でしたぁ!」


 ララの周りに集まり冒険者達の歓喜の声が周囲に響き渡った!


 ━━討伐地付近


 足の痛みも万全、生活雑貨も購入しレッドポニーに乗りゼクセンの隠れ家へ戻っているナナ。


「あっ……近くで魔力反応?」


 警戒のため魔力感知を定期的にしていたナナは気付く!耳を澄ますと喜んでいるような声が複数!ちょっと気になるナナはその方向へ向きを変えた。近づくにつれ、歓喜の声から悲鳴や怒声に変化していった!


(ん?どうしたんだろ?)


 ポニーの速度を上げ小高い崖から見渡すナナの目に飛び込んで来たのは━━!


 ハイエナの群れに襲われている冒険者達が!討伐された猪を喰らうハイエナもいればそれを庇う様に隊列を組み冒険者達を威嚇し襲いかかっていた!応戦している冒険者達。


「クソッ!あいつらどこに潜んでやがった!」

「猪よりも多いじゃないか?」

「私の鈍化……討伐で使い果たしてしまいました……」

「仕方ねーよララさん!数減らしつつ撤退しましょう!」


 ララ達から離れた場所のヘレンは唸り襲いかかるハイエナにビビり大木にしがみついて動けなくなっていた!お付きの兵士はヘレンを仕方なく守る態勢。あわよくばヘレンを抱き抱えて逃げる事も考えている様子。


「うわっ!凄いハイエナ!」


 思わず声に出てしまうナナは大木にしがみついているヘレンらしき人物を発見してしまう!


「ヘレン?」


 口をあんぐり開けているヘレン。

 襲われている冒険者達。

 戦況を見ているナナ。


(んー私の魔法なら討伐出来るんだけど……)


「先生!ちょっと助けて来るね!」


 ポニーを魔法陣へ戻すナナ。魔力を抑えて発動出来る事を信じてゼクセンは


「ナナよ、わかっておるな?目立ち過ぎるなよ」


「にっひひ!そ・こ・は・大丈夫!」


「そこは?じゃと?」


 ナナは祈る様に胸元で手を組み、地面と頭上に魔法陣が現れた!


「先生!見ててね!」


 上下の魔法陣に光り円柱に包まれるナナ


「空想魔法・コスプレ!」


 魔法陣から現れたナナは━━


 茶系の地味な服から、現代で言う魔法少女のような派手な服へ!黒髪ツインテールのナナ!


(やっぱりツインテールだよね!)


「ちょっと待てぇい!派手ではないか?」


 騒ぐゼクセン!


「これなら私ってバレないと思わない?魔法少女!にひひ!」


 得意気なナナは


「先生!たぶんこの姿長く保てないから、行くね!」


 と言い残し崖から飛び降りた!


「やらかしおったのぉ!」


 と、飛び降りたと思ったナナは崖よりも高く浮く!

 ハイエナ達と混戦中の冒険者達。戦況を見極め冷静になるナナ。


(ハイエナに絞って……良し!やるぞ!)


 まず、冒険者に襲い掛かっているハイエナ間近に魔法陣が展開された!突然現れた魔法陣に驚く冒険者達!そこからロックシュートが放たれハイエナに風穴を開け仕留めた!次に威嚇している者と死骸を貪っているハイエナの地面に魔法陣を展開!数にして数十頭はある。呼吸を整えナナ━━


「アクアカッター!」


 青い刃がハイエナ達を切断し上空へ消える!ハイエナ達は何があったかすらわからぬまま散っていく……。

 敵わないと感じたのか残ったハイエナ達は猛烈な勢いで退散して行った……。


 貫通され舌を出したハイエナの死骸……。

 切断され鮮血が広がるハイエナの死骸……。


(上手く行ったぁ!)


 小さくガッツポーズしたナナ。


 地上には無数の猪とハイエナの死骸……。

 冒険者達は一瞬の出来事に感じ、ただ武器を持ち立ちすくむ……。班長であるララも同様で剣を握り締め構えたまま……そして空を見上げた。


 上空には見慣れない服の少女が浮いていた!


(助けてくれたのかしら?見た事ない子……。それに魔法の使い手なのかしら?)


 色々考えてしまうララはお礼を伝える。


「どなたか存じませんが、助けてくださり感謝します!」


 ララに話しかけられたナナは満足気な顔で両腕をぶんぶんと振ってみせた!


 ━━と、服が溶けるように歪み始めた!


(やばいかも!)


 飛び去ろうとするナナを呼び止める大声が!


「ちょっとぉー!待ちなさいよっ!」


 木々の奥からヘレンが小走りで現れた!ヘレンとわかり再度飛び立とうとするナナ!


「名前くらい名乗りなさいよねっ!」


 ━━名前?


(ナナって名乗るのは……駄目だよね……)


 なおも追求するヘレン!


(……一応、魔法少女だからぁ━━)


 大きく深呼吸し━━


「魔法少女ゼクセぇぇ━━」


『わしの名前はよさんかぁぁ!』


 ギリギリのタイミングでゼクセンからブレインマウスが来た!


『へ?……だめぇ?先生ぇ?』


 甘えた声で許可を求めたナナ。


『駄目なものは駄目じゃて!』


 間髪入れずキッパリ伝えるゼクセン。


 無言のナナに少し苛立っているヘレン。


 考えて出した名は━━


「魔法少女ゼクセブン!……またどこかで!」


 小高い崖のさらに向こう側へ消え去ったナナ!


 ナナが現れてからわずか数分の出来事にその場に居た全てが驚き、呆然となっていた……。そんな中でララは冷静に状況を見極めていた!ゼクセブンと名乗った少女が仕留めたハイエナの死骸が先のべっこう蜂の死骸と重なる……。


(もしかしてべっこう蜂の件は……あの少女?)


 数歩先に立つヘレンの疑惑がさらに怪しくなった。そんなふうに思われているとは知らないヘレンは、悔しそうに空を見上げていた。


(あの地味な小娘と言い……魔法少女だかなんだか知りませんけど……私よりも強いとか……)


「強く……ならなくては!負けてられませんわ!」


 貴族のプライドなのか、個人的なのか……拳を強く握り締めた。


♢私とキャットふぁーざぁーを見つけて下さりありがとうございます!

♢不定期更新ですが、ブックマークや応援、コメントよろしくお願い申し上げます!

      ⇩⇩⇩⇩⇩

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