第1幕〜呼び出しくらうオボロとクロネの変化
陽射しと潮風が心地よい……。
いつ戻るかわからないクロネのために、多めに狩りをしているオボロ。
(野ウサギの干し肉ばかりが増えてくな………)
砂浜で訓練的なのをしてると━━━
数匹の猿が両手を挙げて寄ってくる。
………?
オボロ「えーと、なにか用?」
猿たち「キキキ。キッキ、キー」
敵意ないように両手を挙げて鳴く。
(敵意はなさそうだが……怪しい)
オボロの口元の猫髭が、そう感じている。
猿たちは手招きして森へ行く。
━━━?
(着いて来い、てか?)
少し悩むオボロ……
いまだ手招きしてる猿たち……。
(警戒しながら着いていくか。数匹くらいなら、逃げられるだろう……)
少し距離を取りつつ猿たちに着いていくオボロ。
案内されるまま、かなり歩く………。
横を見ると━━!
(ダンゴクワガタを狩りした広場だ)
さらに案内する猿たち……。
小高い丘を超えて草むらを抜けた。
━━━猿たちが、止まった!
草むらの先を指差す猿たち。
草むらをかき分けるオボロ……。
少し開けた場所へ………。
見渡すオボロ……。
(何か……あるのか?)
……
……
━━━━━!!
先に檻のようなもの!
よく見ると━━━!!
中にクロネが!!!
━━━!!
(こ、こいつら………なんてことを………)
苛立つオボロ。
猿たちはオボロに近付き、檻の方を指差す。
と、同時に━━━
無数の猿たちが両脇から姿を現し、檻までの道筋が出来上がる!!
猿たち「キッ!キキー!」
ほら、行け!と、言わんばかりな鳴き声。
オボロはなぜか冷静になっていた!と、言うか静かな怒りと言うべきか、身体が震えている!
(猿たちは俺に手を下そうとしない……。檻までの一直線……何かある)
地面を見極めるオボロ。
………
………!
(なるほど……落とし穴、か)
檻から少し離れたところに地面が加工された形跡があった!
(サル知恵ってやつにゃ。獣人だけど、中身は人間だからな!バレバレなんだよ!)
猿たちは、オボロを煽るように合唱している。
(一気に駆け抜ければ!)
四つ足になり檻まで突っ走るオボロ!
「んにゃー!」
落とし穴近くになると━━
「ギギャーガァーゲェー!!」
(訳:来ちゃダーメー)
「ゴォゴォゴォ……ガァギャー!」(訳:オボロ……さまー)
クロネが精一杯叫んでいる!!
オボロ「クロネー!今、行くからにゃー!!」
と、怪しい落とし穴をジャンプし、クロネが捕らわれている檻の手前で着地━━━━!!
ドスーン!!
オボロ「んん?」
目の前が暗くなった!!!
さほど深くはないが……もう1つ落とし穴があったようだ……。
オボロ「ちっ!やられた!まさかの二段構え!」
上の方で猿たちの鳴き声とクロネの鳴き声が、混じっていた………。
(どうする?脱出出来そうだが………)思案するオボロ。
━━━!
穴の方へ笑い声が近づいて来る。
猿たちの鳴き声が止まる。
一匹の猿が穴を覗き込む!
身構えるオボロ!
「手荒な真似して、悪かったなぁ。俺はこの猿の群れのボスのダリルだ」と、少しニヤつくダリル。
「ほら、出てきなよ」
手を差し出すダリル。
異常に腕が長い!!!
(罠だとしても、ここは脱出が先だ!)決意するオボロ。
手を取り、落とし穴を出るオボロ。
ダリル「いやぁ本当、手荒な真似してすまない!」再び言う。
オボロ「おまえ……話せる……のか?」今、気付いたオボロ。
ダリル「あーそうだが?お前さんも話せるみたいだなぁ?」
(聞きたい事は沢山あるが、そういう雰囲気ではなさそう)と、オボロは分析。
ダリル「いやぁな、おまえさんにお礼を言いたくて」
オボロ「お礼?」
ダリル「あの変な牙の丸くなるやつ始末してくれたんだよな?」
(あーダンゴクワガタのことだな)
オボロ「たまたま出くわしたから、退治した」
ダリル「あの場所、俺らの狩り場の1つでさぁ、ちーと前から住み着いてて俺らも、手を焼いてたとこでよぉ」
(お礼にしては、手荒だと思うが……)怪しむオボロ。
ダリル「ここの長として、礼を言う!ありがとう!」
と、頭を下げる。
どう対応してよいか悩むオボロ。
オボロ「あー、まぁ問題解決したんだし、良かった、良かったー」
まだ頭を下げているダリル。
ダリル「で、だなぁ。喋る獣はぁ、この島で、俺様だけで良いんだよ!」
頭を起こし、棍棒をオボロに向ける!!
━━━!!
(この島?ここは陸続きじゃないのかよ?)
新たな事実に驚愕なオボロ………。
そうこうしてる間に━━
ダリル「やっちまえー!」
号令とともに猿たちがオボロに襲いかかる!!
(え?タイマンじゃねーのかよ?)慌てるオボロ!
クロネが心配そうに鳴く声が聞こえる………。
(仕方ない……一人訓練の総決算とするか!)
オボロ「なら!相手してやるにゃーーー!」
やけくそ、ではない!自分自信を鼓舞したオボロ!決してやけくそでは、ない!
襲いかかる猿たちを、猫ならではのセンサーでかわして蹴り・爪を出して牽制!!
(こいつら、動き単調すぎる。攻撃らしい攻撃は、長い腕のパンチくらい……)
ひょいひょい避けながら、猿たちを倒していくオボロ!
檻からクロネは不安そうに戦況を見ている。
(ここで頑張らないで欲しい)と。
猿たちは、入れ替わり立ち替わりでオボロに襲いかかる!
(きりがないにゃー……アレ使うか)
避けながら集中しエネルギーを身体に巡らせる!
オボロ「んにゃー!!」
鋭い爪を出し手を広げ
「行けー!裂空爪ぉぉぉ!」
下から爪を振り上げる!
爪を型どったエネルギーが飛んで行く!!
上からも爪を振りかぶる!
同じように、爪の型のエネルギーが飛んで行く!
飛距離は………いまいちだが……。
━━━!!
(あいつ!オーラ使えるのか?)ダリルは目を丸くする。
オボロの攻撃に猿たちは怯みあがり、ダリルの後方へ避難する。
息が上がり始めたオボロ。
(やっぱきついなぁ)
………
地面に座っていたダリルが立ち上がる!
ダリル「おまえさん、オーラ使えるのか?」
オボロ「ん?……オーラ?」
ダリル「本来獣人はオーラが使える。使いこなせる奴は多くないがな」
オボロ「なるほどー。わざわざ教えてくれてありがとう」
(じゃーあのエネルギーが身体を巡るのがオーラってやつか!)
ダリル「……そうだ、まだ、おまえさんの名前聞いてなかったな!」
オボロ「……オボロ……」
ダリル「ほーオボロの子猫ちゃん、な」鼻で笑うダリル。
そのやり取りを聞いて苛立つクロネ
(なんて失礼な!!!)
ダリル「さて、子猫ちゃんよー。そろそろ寝る時間だねぇ」
ぶんぶん棍棒を長い腕で振り回す!
(手下使って、戦い方見てたのか?それともスタミナ減らしか?もぅやり方が、せこいヤンキーなんだよ!)呆れるオボロ。
オボロ「んにゃー?まだ陽は高いから……まだだにゃー?」
と、空を見上げ眩しそうに手をかざす。
ダリル「そうかい!そうかい!………なら目の前を暗くしてやんよ!」
棍棒を、振り上げながら向かってくるダリル!
避けるオボロ!
━━━!
腕が長いから避けきれない!!
肩を棍棒がかする!!
真横に棍棒を流すダリル!
脇腹に当たり、飛ばされるオボロ!
オボロ「くっ!」
(あの腕の長さ、厄介だ)
クロネはダリルを睨みつける!
「ギ、ギャ、ギャー!!!」
(訳:き、さ、まー!!!)
飛ばされて距離があるため集中しオーラを身体に巡らせるオボロ!
(短期決戦しかない!)
ダリルに立ち向かうオボロ!
爪を出し牽制!
素早く背中に回り込み━━
「肉・球・掌・底!!」
よろめくダリル!
棍棒を杖代わりに態勢を保つ!
ダリル「やるじゃねーか」
息が上がってるオボロ。
ダリルに敵意むき出しのクロネ!
「グゥゴォガァグゥガァーー!!」
(訳:くそざるがぁー!!)
ダリル「ちーと騒がしいですぜ?これから食料になるんですから、お静かにぃ」
檻の近くに行き、棍棒を振り下ろす!!地面に食い込み土が飛ぶ!!
━━━━!!
オボロ「今………なんて言った?」
ダリル「あー?俺らの食料になるって言ったが?」
オボロ「俺の………相棒を……食料……だと?」
(これまでのクロネとの生活を思い出し怒りが込み上げる)
それを聞いたクロネは
(わ、私を相棒?そんなふうに思っていたなんて)
と、はにかむ。
ダリル「悪いか?この島は強いものが一番なんだよ!」
オボロ「じゃー俺が勝てば……俺が一番……だにゃ?」
(オーラを溜め込み構える)
ダリル「さーそれはどうかねぇ?」
棍棒を構えるダリル。
対峙する二匹━━━
オボロが先に動く!
オーラを巡らせ真正面へ!!
と、ギリギリでかわし裂空爪を横から放つ!!
両腕で防ぐダリル!!
ダリル「ぐっ!」
身体全体が裂空爪で浅く斬れる!
長い腕を最大限使い棍棒で突きまくるダリル!
オーラのおかげで避けやすくなるオボロ!
━━━!
左腕にしがみつくオボロ!
大きく口を開け━━
噛み付く!!
飛び散る血液!!
ダリル「ぐぉぉ!」
さらに爪を立てて腕から離れながら裂く!!
左腕は血液で体毛が染まる!
「ふー!はぁ……はぁ……」
ギリギリなオボロ。
(オーラ使いすぎ……かにゃ)
ふらふらしてるオボロ。
そこへ━━━
ダリルがオーラを込めた右腕でオボロ目掛けて振りかぶる!!
(あっ………俺……また……死ぬのか、な?………ナナに……マキちゃんに……守るって言い切ってた………のに………ナナ……ナナにもう一度………逢いたかった………よ………)
ダリルの棍棒の一撃が迫る!!
ダリル「お寝んねの時間、だせ?オボロの子猫ちゃん!」
棍棒が当たる直前━━
後ろによろめくオボロ。
勢いがつき過ぎそのまま振りかぶるダリル!
━━━!!
オボロの眉間に棍棒の角が食い込む!!!
そのまま棍棒を振り下ろすダリル!!
眉間の体毛が棍棒の摩擦で削ぎ落とされる!!
そして眉間から血が流れるオボロ!!
そのまま仰向けに倒れ込むオボロ………。
ダリルは左腕を押さえている。
クロネは目に涙を溜めている……。
「オ゛…ゴォ……ゴォ……ザ……バァ…」
(訳:オ…ボ……ロ……さ……ま……)
もう一度、棍棒を構えるダリル!
ダリル「この島に、喋る獣は……一匹で……いいんだよぉぉ!」
棍棒を振り上げ、オボロへ近づいて行く。
オボロは息はしているが、立てそうもない!
クロネは助けたい!
なんとかして助けたい!
砂浜でのお礼を!今ここでしなくては!!
そんな強い思いが、願いがクロネの魔力を目覚めさせる!!!
身体から滲み出るかのような、威圧感ある黒い魔力!!
その魔力で捕縛の縄は蒸発するように消えた!
クロネは羽に力を込めて目一杯広げる!!
バキバキ!バキバキ!
檻からの脱出!!
そのまま地面すれすれな低空飛行で、オボロの元へ向かう!!!
クロネ「オーボーローサーマー!!イマ、タスケ、マス!!」微妙だが、何を言ってるかはわかる!!
(え?……クロネ……今……喋った……?)
オボロはクロネの声に耳を立てていた。
棍棒を振り下ろそうとするダリルを、大きな羽でバサッ!バサッ!っと牽制!!
そのまま、かぎ爪でオボロを掴み、高度を上げて振り返らずに二人の寝床へ飛んで行った………。
【戦歴】
オボロ VS ダリル
ダリルの棍棒の振り降ろし。
オボロの眉間への負傷・及びクロネの判断により敗走。




