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第7幕〜ナナ、コーディネーターになる

 

 ギルドパスも獲得しその日の夕方少し豪勢にお店で食事をしたナナは雑貨屋へ行き店内を巡り色々買い揃える。


(結構探せばあるなぁ。私達が使っている物)


 ハサミやナイフ、裁縫道具、髪止めやアクセサリー、見れば欲しくなる物ばかり。


 ━━宿屋


「ご苦労じゃったのナナよ!」


 D(ディメンション)B(ボックス)から出て来て労う魔石片ゼクセン。


「本当だよぉー先生!魔力抑えて戦うのって……しんどい」


 実際ナナは実技試験では魔力を押さえ込んで戦うのがやっとであった。


「その発言は……魔力の少ない魔法使いには……決して言わぬことじゃな」


「はっ!そ、そうだよねぇ」


「嫌味としか取れぬわい」


 ナナもゼクセンも声を出して笑ってしまう。

 そのナナの笑いが次第に妙な笑い方へ変わる……。


 じぃーとD=Bを見つめるナナ……。


「せぇーんせぇ?デコっていーい?」


「でこ、る?」


「えと、可愛くしていい、みたいな?」


 雑貨屋で購入した紙袋から色鮮やかなガラス片や安い宝石をテーブルへ広げた!両手に宝石を持ちD=Bへ近寄るニヤけたナナ。


「まさか?それらを付ける気か?」


「にっひひぃ!その、まーさーかぁ!」


 D=Bの周りを忙しなく飛ぶ魔石片ゼクセン!


「これはわしの家のようなものじゃて!」


「私の魔力が無いと……だめじゃん?」


 ピタリと動きが止まる魔石片ゼクセン!そこをすかさずキャッチし服のポケットへ入れボタンを締め閉じ込めるナナ!


「ぬぉぉ!わしの家ぇー!」


 ポケットの中で暴れるゼクセンを気にせず作業を開始するナナ。


 ━━♪♪♬♬


 鼻歌交じりで黙々と作業するナナ。ガイアールにも接着剤的な物が有りそれを使い色鮮やかなガラス片や宝石の類をD=Bへ貼り付けて行く。


 ……


 ━━完成!


 鉄枠と木で出来た地味な宝箱はカラフルかつ豪華な宝箱へ変化を遂げた!


「ふっふーん!上出来!」


 満足そうなナナはポケットから魔石片ゼクセンを取り出し


「どう?可愛いいでしょ?」


 D=Bを何周もするゼクセン……。


(なんとまあ……普通の宝箱として使いたかったのじゃが……)


「わしの……新しい家?」


 満面の笑顔でナナは大きく頷く。


「ぬぉぉ!わしの家ぇー!」


 嘆くゼクセン!


「可愛い弟子からの、お・れ・い」


 可愛らしく言うナナ。


「ええーい!可愛らしく言うても何も返せぬわい!」


「私も使うんだから良いじゃん!良いじゃん!」


 ゴリ押しするナナ!


 ……


「……まぁ……お主が恥ずかしくないのなら……」


「さっすが先生!」


 鮮やかに装飾されてしまったD=Bを見つめるゼクセンはどことなく魔石片が前方へ傾き落ち込んでいるようにも見えた。


 ━━むんず!


 両手で魔石片ゼクセンを掴むナナは顔を近付け魔石片を覗き込むように凝視。


「な、なんじゃ!急に!」


「ねぇ先生は……どっちが前?」


「……特にどちらが前で後と言う訳ではない……」


「ふぅん……そっかぁ」


 魔石片から手を離しサッと立ち上がりゼクセンの前を左右に歩きナナは話し始める。


「先生はさ、友達同士で明日山にピクニックに行く予定があって当日天気が雨だったりしたらどんな気分?」


「そりゃ良い気はしなのぉ……それに天気が悪かったら延期するじゃろ」


 大きく頷くナナ。


「私の居る日本にはね、天気を晴れにしてくれるおまじないがあるの!」


「おま……じな、い?」


「えーと……天気の神様にお祈りする、みたいな?」


「……祈祷の類じゃな」


 ゼクセンの方へぱっと振り向き━━


「そう!たぶんそれ!」


 指差しされ大声で言われビクッとなるゼクセン。

 ナナは羽ペンで紙に絵を描き始め……それをゼクセンへ見せた!


「なんじゃこりゃ?また妙な姿じゃて……」


 紙から顔を半分出しナナ


「日本では、てるてる坊主って言うの!」


「して、それが何かわしと関係でもあるのか?」


「いや……特に関係はないんだけど……」


 気を取り直しナナ


「前日にてるてる坊主を作って、ベランダとか窓側に吊るしてお願いするの!」


 両手を組み合わせ


「明日天気になりますように!」


「ふーむ」


「そうすると、翌日は太陽が出て良い天気になるの!」


 自分で話していて子供の頃を思い出してしまうナナ。幼い頃家族で出かける予定の前の日には何個もてるてる坊主を作り家中に吊るした想い出。


(……ママ)


 事故で無くした母親を思い出して目に涙を浮かべてしまう……。


(ん?あれ?家族……家族って……あの頃は……ママと……飼い猫のきぬと……他に誰かいたような……)


 ━━キーン!


 思い出そうとすると頭痛が襲ってきた!ふらつき、頭を押さえテーブルに手を掛けるナナ!


「━━痛っ!」


「どうしたのじゃ?大丈夫か!ナナよ!」


 支えたいが魔石片ではどうすることも出来ないゼクセン。

 そのまま床に座るナナは


「あ……うん……大丈夫……」


(前にも似たような事が……)


 コップに水を注ぎ、一口……二口と飲むナナ。にたにたしながら魔石片ゼクセンへ手を伸ばし━━


「━━先生をてるてる坊主みたいにするの!」


 と、言い購入した白い布で魔石片を包み込む!そして一気に縛りさらにその上から赤いリボンで可愛らしく蝶結びをした!次にナイフで目と口の部分を切り抜いた!


 てるてる坊主の魔石片ゼクセン!


「どう?見える?」


「特に問題は無いようじゃ」


 切り抜いた目を見て話すナナ。


「先生のね……表情が知りたかったの……いつも話し方の強さとか言葉使いで先生の感情を読み取ってたから……」


(そんな苦労させてしていたのか……わしは)


 魔力を包み込んでいる布に伝え表情を作るゼクセン。

 切り抜いた目と口が微笑むように動く!


「ど、どうじゃ?これならわかるじゃろ?」


 顔を近付けるナナも笑顔で返す!


「おぉ!ばっちりだよ先生!」


 と、今度は残った布で作った腕と手を接着剤で前方へ固定させた!


「どうどう?腕と手を付けてみた!」


 魔力を伝え動かすゼクセン。うねうねと両腕が持ち上がり、伸ばしたり折り曲げたり……。


「問題無いようじゃ……欲を言えば……切れ込みでも入れて5本指にできるかの?……人間の頃のように……」


 同意しハサミでゆっくり切れ込みを入れて行くナナ。

 指先まで魔力を伝え動かすゼクセン……テーブルの上のナイフを持ったり、宝石を掴んだり……。


(これはこれで良いかも知れん)


「中々やるのうナナよ!」


「でしょ?これで少しは先生も人間らしく動けるし」


(気が効くと言うか……世話焼きと言うか……)


「うむ!このてるてる坊主とやらは悪くない!じゃが……過渡な装飾に関しては……わしは好かん!」


「そんなはっきり言わなくてもぉ」


「好かん、と言っただけで……嫌だとは言っとらんじゃろが!」


 口が尖るゼクセン。


「あぁーその口ってぇ照れ隠しぃ?」


 笑うナナと両手で顔を隠すゼクセン。さっそく感情表現が解る一場面であった。


 ━━翌日


 早速ギルドの初めての依頼を受けに行く。てるてる坊主のゼクセンはD=Bの中、そして過渡な装飾のD=Bを肩掛けし歩くナナ。ギルドパスが貰えた後の説明はほとんど聞いていなかったナナは昨夜ゼクセンから長い長い説明を受けていた。おかげで頭の中がパンクしそう。


 受付に行き、冒険者ランクゼロの依頼を受けに来たと話すナナ。スタッフより説明を浮ける。


「この小さい籠に薬草か毒消しの実をいっぱいにすれば良いってことですか?」


 確認するナナにスタッフは笑顔で返答してくれた。

 小さな籠と言っても薬草1つが小さいため満杯にするのはそれなりな量を採取することにはなりそう。採取可能な場所の地図を頼りに向かう事に。


 ロビーや出入り口で何人からパーティを組まないかと申し出があったがゼクセンの指示で全て断ったナナ。


(ナナが魔法を派手に使う所はあまり見せられんからの)


 途中露店でお昼用のパンをいくつか購入し町を出ることに。門周辺では、数台馬車が待機し、他に馬や大きな蜥蜴も数体待機していた。


「王国方面の乗り合い馬車はこちらでーす」

「貸し馬、貸しアースランナーはこちらでーす」


 どうやら代金を支払っての移動手段のようだ。ナナにはレッドポニーと言う心強い味方があるので移動には困らない。人目を避けるように町の外壁を歩き……レッドポニーを出し乗り込むナナ。以前ゼクセンに指摘された半透明な容姿も改善され、白いポニーに赤毛のたてがみに尻尾。地図を頼りに一番近い場所へレッドポニーを走らせる。


 そよ風が心地良い。


 そして採取場所へ行くと……道端に馬車が待機していて何人もの冒険者達が薬草採取をしていた!


『他の所にしたほうが良さそうじゃな』


『そうだね』


 地図を確認し先の林道の脇道の採取場所へ向かう事に。乗り合い馬車を颯爽と抜いて行くレッドポニーに乗るナナ。それを見た馬車の運転手


「もしかして先の採取場所行くのか?あそこは……」


 どのくらい走ったか、やっと看板のある林道を見つけた!


「この地図って……距離感全く無いよね!」


 細い林道をレッドポニーで進む。木は密集しておらず程良く陽が差し込む。しばらく進むとナナの顔くらいある蜂に遭遇!茶色の胴体にオレンジ色の羽……羽音が頭に残る……。


 口から針をぬるりと突出させた!


 大き目な魔法陣からエアショットを放ち風圧で吹き飛ばし気絶させたナナ。


『良え反応じゃな』


『エアショットならかろうじて当たる感じ?』


 続けて数体襲って来たが、同じくエアショットで吹き飛ばし気絶。


 奥へ進むと……レッドポニーが止まり鼻をひくひくさせ、首をナナの方へ向けゆっくり歩き始めた。少し進みレッドポニーは首を木の根っこあたりへ持って行く。降りて確認すると、なんと薬草が!周囲を見渡せば結構生えている!


「ポニー凄い!凄い!ありがとう」


 鼻筋を撫でるナナ。

 ゼクセンから採取方法を指導され、そのように採取するナナ。根から取ると生えて来なくなるため、最低限、数枚の葉と根は残す。見張りはレッドポニーとブルーキャット。


(こやつらも使いこなしているようじゃの。頼もしいわい)


 ━━ドーン!ドゴーン!


 少し先の大木に体当たりをしているレッドポニー!何かを咥えて寄って来るブルーキャット。手のひらを出すとそこへ落としてくれた。見ると……毒消しの実!どうやら近くには毒消しの実の木があるようだ!


「ねぇちょっと先生!この子達凄くない?」


「お主の固有魔法じゃろが?何を驚いておる」


 ブルーキャットの背中を撫で、毒消しの実を拾いに行く。根元にはレッドポニーの体当たりで落下した実が沢山!その大木を見上げると……登らないと取りに行けなそうなくらい高い枝に毒消しの実は付いていた。


「あの高さじゃ……登らないと無理だよね……」


 落ちた毒消しの実を回収し、残りは薬草を回収し籠を満杯にさせたナナ。しゃがみ込んでいたため腰をトントンと叩く。


 と、ブルーキャットが警戒し遠くを威嚇し始めた!レッドポニーも脚を踏ん張り今にも突撃しそうな態勢!


 ブブブブゥゥ!


 さっきの蜂が木々の間から何体も現れた!明らかにナナを意識してこちらを見ている!


 腰に装着してある杖を持つナナ!プロテクトを展開し迎え撃つ!


(落ち着け!落ち着け!)


 自分の前、両斜め横に魔法陣を展開しエアショットを放ち風圧で吹き飛ばす!エアショットから逃れた蜂が襲ってくる!引き付けた所にアクアカッターで切断!飛び散る茶色の体液!プロテクトにねっとり付着してしまう!


(さすがに体液まみれはごめんだよぉ)


「うーむ……これだけ居ると言うことは……恐らく縄張りか巣があるじゃろ」


「じゃあ……危険そうだから……討伐?」


 討伐と言う言葉を自分で言って少し嬉しそうなナナ。


「べっこう蜂……わしが生きていた頃から居た昆虫型の獣じゃて」


 ゼクセンは当時の知識ではあるがべっこう蜂の生態などを教えてくれた。毒性はあるが即死にはならないこと。口から針を飛ばし攻撃か体当たりによる噛みつき攻撃。腹部の体液は粘着性が有り当時から接着剤の原料として活用していること。巣は地中にあり、地表に出入り口の穴があって盛り上がっている。


「巣の周囲はべっこう蜂の出入りがあるから見ればわかるじゃろ。用心して討伐じゃて!」


「うん!わかった!」


 杖を強く握り締めた。


 ナナにとって初めての大型イベント到来!


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