第6幕〜ゼクセン大迷宮・③
【空想魔法】
ナナの固有魔法━━
理屈は不明だが、ナナの魔力で空想し魔法陣を介して現れる魔力の塊。それぞれが獣のような姿でナナの号令通りに動き、攻撃する。
ゼクセンはそう解釈した。
今は空想魔法を使わずにプロテクトにて防御の訓練中……。
黒い魔石のゼクセンから魔法が放たれる!それを避けたりプロテクトで防いだり……。ナナにしてみたら地味な事だが、ゼクセンから死んでは意味がないと酸っぱく言われたため渋々訓練している……。
「ほれ、防ぐにも魔力は消費するぞい!単純な魔法くらい防ぐことじゃ!」
必死に防ぐナナ。床を転がり擦り傷だらけ……。
床から棘のような岩が無数に飛び出す!
「え?何これ!」
腕、太もも、脇腹と貫通してしまうナナ!
「ぐはっ!」
血反吐を吐いてしまった!ガイアールへ来て初めての吐血!
「ちと、やり過ぎたかの……」
虫の息のナナに近寄り治癒の魔法・ヒールを施すゼクセン。
(痛い……苦しい……痛いよ……あれ、痛みが和らぐ……)
起き上がり壁に寄り掛かるナナは
「ひどいよ先生……死ぬかと思った!」
ホロリと涙を落とすナナ。
「すまんかったのう……」
申し訳なさそうに告げながらもゼクセンは
「まぁ痛みを知ってほしかったんじゃよ……お主の居る世界では、きっと流血するほどの争い事や貧富の差など無いように思えたのでな……」
ナナはぼんやり遠くを見つめ
「……あるよ……ただ、私の居る国がそういうのが少ないってだけ……」
……
それ以上何も話さないナナはうつむき加減。世界にはゼクセンの言うような事があるというのはニュースや歴史で知っていたから言い出せずになってしまった……。
「ガイアールは、先生の言う世界なの?」
ぽつり聞くナナに対しゼクセンも声を弱め
「少なくとも、わしが生きていた800年前は……そうじゃったよ」
傷が治るまで寝ていろと言われ丸くなり身体を休めるナナは疲れたのか、すぐに寝息を立てた。
無防備な寝顔を見つめゼクセン
(そろそろ頃合いかのぉ……)
メモを残し、奥の扉の先へふわり去って行った……。
数時間くらい経っただろうか、大欠伸しながら目を覚ますナナ。
落ちていたメモ書きを読む━━!
「最終試験を行う。準備万端にして、奥の部屋へ来なさい」
ついに最終試験!
緊張と不安がナナを襲う。身体の怪我が嘘のように治っていることに驚く。着ているワンピースの皺を伸ばし……奥の扉を見つめた!
(最終試験……どんなのかな?)
震える手をもう片方の手で押さえた。
近づくと自分の身長よりも何倍も高く厚みを感じた!両手で扉をゆっくり押す……。
ギッ……ギギィ……。
自分が通れるほどの隙間が出来たので食い込ませて奥の部屋へ……。
1歩……2歩……ゆっくり前へ進むナナ。
さっきまで居た部屋とは違い薄暗い……。
唾を飲み込むナナは
「あ、あのぉ……先生?」
恐る恐る呼びかけた。
……
さらに奥の方でくすんだ光を発見!
ギギギィ……バタン!
後方で扉の閉まる音!振り返ると━━
扉は無く、見慣れた壁に!
(あれ?戻れない?)
嫌な予感しかしないナナ!
と、床、壁、天井と青いラインの光が走り出し、見慣れた外観へ変化していった!
「傷は大丈夫かの?」
ゼクセンが心配そうに聞く。
大きく頷くナナは
「はい!先生のヒールのおかげです!」
「では最終試験の前に……ここから出られたら、まず何をすべきか覚えとるかの?」
「えーと、確か先生の隠居生活の小屋があって……そこは結界があるからそれなりに安全ってことと……本棚の本を読んでガイアールのことを知ること……それと……元の世界への帰還」
自信無く答えるナナ。
「よぉ覚えとったの!……無事に出られたら、元居た世界に帰還出来るかも知れん。諦めるでないぞ」
励ますゼクセン。
「して、最終試験じゃが……」
唾をゆっくり飲み込むナナ!
「このゼクセン大迷宮を破壊し脱出せよ!」
「へ?え?」
期待していたのと違ったので思わず声に出してしまったナナ!
(壊す?脱出?って……私の魔法全力で壊せば良い?)
ゼクセンの後ろに扉を見つけたナナは走って手前に行く!
ブラウンベアーを出し、扉を壊させようとした!
(この子なら扉壊せそう!)
少し離れ様子を見ている黒い魔石のゼクセン。
びくともしない扉……。
レッドポニーと交代し火球を当てるが、呆気無く吸収されてしまう……。
ぺたりと座り込むナナ。
(これどうやって脱出するの?どうやればあんな広い大迷宮壊せるの?)
行き詰まってしまうナナ。
落胆しているナナにゼクセンは
「お主、わしから何を学んだ?わしとどんな会話をした?良ぉく思い出してみぃ」
……
……
両手を床についたまま聞くナナ。
(何をって……魔法でしょ?使い方、魔法陣の仕組み……ガイアールの世界のこと……あとは先生のこと……)
━━!!!
扉を支えにゆっくり立ちナナは
「……先生!いや、大魔導士ゼクセン!勝負!」
(こう言う事だよね?先生?)
うっすら涙目なナナ。
すぅーと距離を取るゼクセン。
「正解じゃて」
間を開けず拳大の魔石から様々な魔法を繰り出すゼクセン!
プロテクトで防ぐナナ!
(異世界物はこう言う展開あったっけな……師を超えてみせよって……いざ自分がそうなると……何か切ないし……悲しい……)
さらに距離を取り魔法を繰り出すゼクセン!
(ヒールでだいぶ魔力減ってしもうたからの……今この大迷宮は……この部屋のみして残りの部屋は魔力変換しといて正解かのぉ)
プロテクト越しに四体の空想魔法を出す!
「みんなお願い!」
それぞれゼクセンへ攻撃を仕掛けていく!
二人の魔法が相殺されていく!が、経験あるゼクセンのほうが押している!
(こんなんじゃ……動けないよ!)
プロテクトで守ることに必死なナナ。少しでも集中欠くと四体の空想魔法も弱くなってしまう!
「まだ知らん魔法も行くぞ!」
「アイススパイク!」
床下から太く大きな氷の棘がナナを襲う!
ゼクセンの情けか、身体の貫通は免れたが無数の棘で身動きが取れないナナ!
「さ、さすが先生……だよ、ね……敵いっこないよ」
弱音を出すナナ。
距離を縮めるゼクセン。
「最終試験のなぞなぞ、良ぅ気づいたの?」
目だけ動かしゼクセンを見るナナ。
「だって……先生、さ……すっごく自慢気に話してた……から」
大きく息を吸い込み
「このゼクセン大迷宮は!わしの有り余る魔力で作ったからのぉ!って」
息切れしてしまうナナ。
「ほんと良ぅ覚えとった……」
口だけ笑うナナは
「先生の……最後の……弟子、だもん」
「ほぅ……最後の弟子が……そんな無様なのでは……大魔導士ゼクセンの弟子など名乗らせたくもないのぉ……取り消さないとかのぉ……嗚呼、時間の無駄使いしたようじゃのぉ……」
(お主の最大魔力なら!きっと!)
ちょっとムッとするナナ。
「えーそれは何か……嫌だ」
「こっちで死んだら……お主はどうなるのかのぉ?ちと興味深いわい」
ナナの目線より高く浮き、魔石の周りにバチバチと稲光がほとばしる!
(ちょっと待ってよ!先生!私まだ死にたくない!)
バチバチ!バチバチ!
(もう魔力……ほとんど残って無いかも……きぬ、おぼろ……もう抱っこ出来ない、かも……ママ……会いに、行く……ね)
両方の目尻から涙目が溢れるナナの心臓からドクンドクンと音が響く!ゼクセンにも聞こえるほどに!
「な、なんじゃ?」
ナナの身体の周りに溢れ出る魔力!棘の氷をも溶かして行く!
目は閉じたままのナナ!
溢れ出る魔力が何かを形作る!
━━!
ナナの真後ろにクリスタルのように輝く女性の翼の生えた彫刻が現れた!
その彫刻が翼を広げると優しい光が解き放たれた!
ナナの傷が癒え、ゼクセンを包み稲光が消えて行く!
(なんと!魔法を打ち消したのか?)
そして魔石のゼクセンに光輪が現れ動きを封じた!
━━ササッ!
ナナの背後から男性のような黒い人影が飛び出しゼクセンよりも高く飛ぶ!
強く拳を握り━━勢い良く振り落とす!
大きな拳が魔石のゼクセンに直撃!
亀裂が走り━━
粉々に砕け落ちる魔石のゼクセン!
(嗚呼……これがお主の底力……なのかのぉ……これで……やっと……脱出出来……る)
……
(今しばらくは、ここも崩れん……ありがとう……ナナよ)
女性の彫刻は男性の人影とともに、静かに消えて行った。
ナナを見守るかのように……。
(……ママ?……それと黒い人影は……誰?)
意識が朦朧なナナは、母だけの温もりを感じ取っていた……。




