第1幕〜クロネ失踪?
先の狩りから、洞窟へ戻る途中、オボロは薬草や木の実を採取していた。
(自分よりもデカイ獲物に、対処できるようにならねば……)
そう考えるオボロ。
洞窟へ着くと━━
入り口にクロネが、ビシッと立っていた。
「待たせちゃったよね?」
申し訳なさそうに言うオボロ。
クロネは、両方の羽の先の間隔を少し開けて嘴の前へ出す
……!
(これって、もしかして……少し、とかのジェスチャーか?)
オボロはそう理解した。
洞窟へ入り獲物を確認。
……
……
オボロは
「俺は食べないから、クロネ食べていいぞ!」
と、保存してある干し肉をかじるオボロ。
「んで、このハサミと、鎧は残しといてね」
言葉と身振り手振りで、伝えるオボロ。
クロネは理解したかのように、獲物を食す。
嘴で上手に身を啄んで取り出し口をパクパクさせて、流し込む………。
(何度も見ても、直視できない)
オボロは、毎回思ってしまう……。
残ったハサミと鎧は、湧き水の池で洗い、そこそこ綺麗にした。
「んにゃ!今日は頑張ったから寝るぞー!」
両腕を挙げて、枯れ葉ベッドに転がるオボロ。
首を縦に振るクロネ。
……
さすがに疲れたのか、安心したのか、速攻で寝たオボロ。
寝姿をジッと見つめてるクロネ。
(さっきの狩りでは、ほとんど役に立ててなかった……。あんなにも勇敢に戦って、自分も気にかけながら……。そう簡単には、出来ない)
首をカクンと落とし、うなだれるクロネ……。
(必ず……戻ってきます!)
黒い羽を何枚も、何枚も嘴で取り、オボロの顔付近へ、置くクロネ。
静かに洞窟を後にし、星のない夜空へ飛んで行くクロネ……。
所変わって猿の群れでは━━
位置的には、オボロの寝床の洞窟のほぼ反対側。直線上には、森、小高い岩場が有り容易には行ける感じでもない。が、行けなくもない感じである。
先の狩りを見ていた猿たちがボスに報告してる━━
「キッ!キキッ!キキキー!キッ!」手下の報告。
神輿に大きめな椅子にどっしりと座り、野ウサギを、くちゃくちゃかじりながら聞いているボスと思われる猿。
「あー?俺らの狩り場を住処にし始めた獣を倒した奴らが居ただと?」
驚き、そして声を荒げるボス猿!
「キキキ!キッ!キキッ!キーー!」手下の報告。
………!
「はー?大きな黒い鳥と、俺みたいに喋る猫、だとぉ??」
と、野ウサギの骨を手下の方へ投げつけるボス猿!
手下近くの地面に刺さる野ウサギの骨!
怯える手下の猿たち!
……
……
「んー。喋る獣は……この俺、ダリル様だけで、十分だろ?」
と、ダリルは指をぽきぽき鳴らす。
「じゃー、俺たちの狩り場の邪魔者を掃除してくれたから、お礼を言わねぇとなぁ?」
細めの木の枝で、歯の掃除をするダリル。
しばし思案するダリル。
手下たちも、黙っている。
と、ダリル
「よーし!黒い鳥を捕らえてこい!生け捕りで、だ!」
「ほら、さっさと捕らえてこいやー!」
号令を出すダリル。
手下たちは、散り散りに森へ行く。
「トツ!お前も行け!」
と、ダリル。
ダリルの近くにいる槍持ちの猿に、指図した。
トツは、一言鳴いて、颯爽と森の中へ消えて行った………。
トツを見届けながらダリルは
「そう、ちゃーんとお礼を言わなきゃな」
と、不適な笑いをする。
その頃オボロは━━━
目が覚め辺りを見渡してもクロネの姿がない!
下を見ると━━!
大量の黒い羽が山盛りになっていた!
(なんだこれ?)
腕組みし首を傾げるオボロ。
………
………
(何かのお知らせ的なやつかなぁ……)
さらに思案するオボロ。
洞窟の外、砂浜を見ても、クロネの姿は無い……。
「そのうち、戻って来るだろ?」
軽く考え、つぶやくオボロ。
砂浜へ行き、器用に座禅をするオボロ。
(…………身体に巡るこのエネルギーみたいなもの……上手く使いこなせれば━━)
眉間にシワを寄せるオボロ。
━━集中
身体の中が熱くなり、エネルギーが巡るのを感じる!
サッと立ち上がり砂浜を走る!
━━━!!
(やっぱり動きが軽い!そして速い!五感も冴える!)
爪をチャキンと出し、勢いよく下から掬い上げるように描く!
「裂空爪!!!」
ちなみにオボロ命名。
(おぉ!これなら戦える!クロネの事も守れる!)
色々と期待するオボロ。
━━!
急に身体の力が抜け、へなへなと倒れ込む!
「ありゃ?エネルギー切れ?」
(長く使うのは……慣れてないからか?)
「多様は……禁止かにゃ……」
砂浜に座り、海の方を眺めるオボロ……。
クロネ失踪から一週間ほど経つ━━━
オボロは、エネルギーの使い方の特訓、狩り、砂浜清掃と忙しなく活動していた。
使い所を見極めれば、上手く使えるようになった。
クロネの方と言えば━━━
河原付近で、生きるための狩りと、凶暴な獣にも対応出来るように飛び方・牽制の方法など試行錯誤の日々を送っていた。
あの時、助けてもらったオボロのために!何よりこれからの自分のために!
試行錯誤をしていくうちに、砂浜で気絶して記憶が曖昧であったこと、自分が【黒鳥】と言う種類であること、魔力的なものが宿っていることを思い出した!
━━!
(この魔力的なものは、役に立つかも)
確信するクロネ。
独り訓練の終わりとして、上流に生息してる大きな魚を狩ることにした。魚はオボロが、普段より美味しそうに食べているのを知ってるからだ!
……心鎮め、水面近くに来る獲物を目で追い………一気に滑空!!鋭いかぎ爪で腹を刺し、そのまま掴む!!
意気揚々にそのまま寝床の洞窟へ向かうクロネ。
クロネの頭の中は……喜ぶであろうオボロの姿ばかり………。
森を抜け━━
砂浜に出た時━━
真横と斜め上方から勢いよく、何個も石が飛んでくる!!
━━━!!
気付いた時には遅い!
羽を、背中を、無数の石が襲う!!
(迂闊だった………全く警戒してなかった!)
悔やむクロネ………。
バランス崩し砂浜へ落ちる━━━
「キッ!キキキー」
猿たちが、一斉にクロネにのしかかる!!
(こんなに猿が!!??)
猿たちの重みで動けないクロネ!
そこへ槍持ちのトツが現れる!
「キキッ!キッ!」
何言ってるのかわからないクロネ。
━━と
槍の柄の方を頭に振り落とす!!
「グガ!グガガァァァァー!」
けたたましく泣き叫ぶクロネ!
(オボロに、この鳴き声が届いて欲しいと願い)
その後、クロネは意識を失う………。
猿たちはトツの指示でクロネを捕縛し、神輿に乗せ去っていった………。
砂浜には……
大きな魚の獲物が、寂しく放置されていた………。
その頃のオボロは━━
砂浜でクロネが襲われてるとは知らず、エネルギーの訓練で疲労したため、洞窟内で、昼寝をしていた………。




