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第6幕〜二つの捜索

 

 現代・青葉家━━


 玄関でナナのローファーを抱き締めペタリと座り込むサキ……それを見下ろす帰宅した息子のダイキ……。玄関の隙間から夕陽が射し込む……。


 一筋の涙を流すサキは


「居ないの……ナナちゃん……どこにも見当たらない……」


 ダイキは家の中を急いで探し回る!風呂場……トイレ……押入れ……クローゼット!


 聞こえるのはおぼろが


 ナァナァ……ナー……ナー……


 と、まるで探しているかのように鳴き続けているだけ……。


 サキの後ろに呆然と立つダイキは事情を聞く……。涙、鼻水混じりで途切れ途切れ説明したサキ……。


「これ以上……身内を……失いたくないのよぉー!」


 叫ぶサキをリビングに誘導しソファーに座らせたダイキ……。


「スマホも……財布も……家にある……靴も……部屋の鍵もかけられたまま」


(こんなのまるで神隠しじゃねーか!)


 そんな考えを持ってしまうダイキ。


 サキはスマホを手に取りどこかへ電話をかけた!


「……捜索願いを……えぇ……お願いします……」


 ……


「名前は……青葉ナナ、15歳の女の子で、中学を卒業したばかりです」


 ……


「身長は150センチくらい、痩せ方で黒い髪で顎くらいまでのボブヘアー」


 ……


「はい……では……お願いします」


 静かにスマホを置くサキ……。

 両手で顔を覆い……啜り泣く……。ダイキも下を向き……黙る……。


 ナー……ナァ……ナー……ナ……。


 まだ鳴き続けているおぼろ……。


 一時間ほど経過し、話を聞きに刑事が到着した……。


 サキの代わりに玄関へ向かうダイキは━━!


「……あ!」


「どうも……お久しぶりですな……ちょうど通報もらった時に署内に居ましてね……まさかと思って来てみたら……」


 軽く会釈をする年期の入ったスーツ姿の年配刑事の奥原さんだった!この奥原さんは爽太とマキの事故の時にお世話になった人情味ある刑事。ダイキは奥原さんと数名のお巡りさんをリビングへ通す。


 ソファーで啜り泣くサキを見て……奥原さんは優しく


「話を伺いに来た刑事の奥原です……あまりこう言うご縁は……良い事ではありませんが……お顔を上げてもらってよろしいですかな?水嶋サキさん……」


 どこか聞き覚えある声と口調……顔を上げるサキは━━!


(奥原さん?)


 奥原さんの両腕を掴み━━


「ナナちゃんがー!ナナちゃんがー!……居なく……なりました……」


 そのまま両腕を離し床へ座り込むサキ。


 ……


 まだ動揺してるサキに代わり、ダイキが奥原さんやお巡りさんへ説明をする……。

 奥原さんはお巡りさんへ現場の確認や初動捜査の指示を飛ばす。

 部屋を見渡す奥原さん……。

 スッキリしたリビングに片付けられた台所……確か……玄関も庭も乱れたり争った跡は無し……。


(この家族の事は知っている……虐待などの家庭内での原因であるはずが無い!)


 そう考えた奥原さんは、学校や友人関係のことを聞く……。ダイキが知る限り代わりに答え……特に問題は無いと判断した奥原さん。


 二階のナナの部屋を見る奥原さん。

 おぼろが知らない人間が来て驚き逃げていく!

 窓の鍵はかかった部屋……。

 スマホや財布の私物は放置されたまま……。

 その場で脱いで床に落としたとされる制服と下着、靴下……。


(時間的には……部屋に一人の時……玄関からの出入りの音はなかった……リビングには水嶋さんだけ……あとは飼い猫が二匹……)


 経験ある奥原さんは……頭の中で……過去の事件と向き合う……。誘拐……失踪……家出……何か事件に巻き込まれたか……。


(無難なのは……家出……だが……服を着替えた形跡も無し……全裸で家出をするものか?……しっくり来ないのが現状)


 リビングへ戻り説明をする奥原さん。サキは落ち着きを取り戻しお茶を用意していた。

 現状では、家出と言う事で周辺の聞き込みや防犯カメラのチェックをする予定と説明してくれた。ついで話に、今年度からここの管轄の警察署へ異動してきたとも伝えてくれた。


 丁寧にお礼をし、奥原さんを見送るサキとダイキ。


(ナナちゃん……どこに行ってしまったのよ!)


 この生活が不満だったのか……言えない悩みでもあったのか……色々考えてしまうサキであった……。



 ガイアール・スーデルの町━━


 ボロボロのトスクール……異様な雰囲気のクロネとアミュ……噴水広場がざわめき立つ……。陽も落ちはじめ、露店を閉める者、家へ帰る者……。ギルド館から出て話を聞いていたミティーラとヌイケンは、呆然と立ち尽くすクロネとアミュに後ろ髪を引かれながらも、二人掛かりでトスクールを医務室へ運ぶ……。


 立ち尽くすクロネとアミュの長い影……アミュの影が小刻みに震えている!


(私がしっかりしないと!)


 アミュのお腹を両腕で掴みどこかへ飛んで行く!


 スーデルの町・郊外━━


 アミュを抱えて地面に降り立つクロネ。

 すぐさま魔獣化してしまうアミュ!


「うぅぅ……助かったよ……クロネちゃん」


 同調するようにクロネも魔獣化する。


「気付けて良かったわ……私も戻りたかったし……」


 八本の脚を折り畳みコロコロ転がるアミュ……。落ち込んだり、悩んだりするとこの行動をしてしまうアミュ。


 アミュの血の盟約の一言がなければクロネ自身が町中で魔獣化し暴れていたかも知れない……。今は冷静なクロネ。


(私達が生きているのが、何よりの証明ですわ!)


「はぁぁ……駄目だよぉクロネちゃん……」


 コロコロころがっていたアミュは脚を広げ立つ。


「えぇ……私は駄目なメスですわよ……」


 アミュに説教されたと思っているクロネ……。


「違うよっ!……ブレインマウス……お兄ちゃんにも、メル達にも……届いて無さそう……」


 ━━!


(あら?アミュに説教されたかと……)


「そう……離れすぎてるのかしら……」


 今は弱さは見せたくないクロネは


(町から南へは……行ったことがなかったですわね……何も情報無しで……大丈夫かしら)


 まだブレインマウスを送っているアミュは唸っていた……。


「アミュ?狩りをしながらオボロ様が流された現場まで行くわよ!」


「うんっ!それが良い!近くまで行けばアミュの声届くかも!」


 二匹は、狩りをし食事をしながら崩壊現場まで向かう事に。すでに陽は落ち、闇夜の中を……。



 流された川の支流━━


 ザザーザザザー


 川の流れる音……。


 目が覚めるオボロ……。


 太い大木に身体ごと引っかかり川の流れでくの字になっていた!


(身体が冷たい……痛い……重い……意識が朦朧としてる……)


 ザザザーザザザー


 濁ってはいるが川底が確認出来るくらいの水質……。


 ゆっくり大木を伝い脱出するオボロ……。


 ドサッ……ズリ……ズリズリ……


 濁流と水分を吸った体毛が鎧のように重い……。


「ふぅ……はぁ、はぁ……」


 匍匐前進で少しでも川から離れるオボロ……。


 ごろん!


 砂利の上で仰向けに大の字になるオボロ!

 太陽の陽射しが眩しいが、身体を乾かすのに適してきた!


(しばらく……乾かさないと……)


 目だけ動かす……。


 見たことない景色……

 川のせせらぎの音……

 平坦な河原……

 大きな岩もいくつか点在している……


 耳をちょこちょこっと動かし遠くの音を探る……。


 ……


 聞こえるのは……木々が揺れ葉っぱがざわめく音と……かすかに波の音。


(あー……なんか……転生した直後を思い出すな……)


 思い出に浸るオボロ……。


 一時間後━━


 ブルブルブルブルッ!


 身体を震わせ水気を飛ばすオボロ。水気は取れたが……砂や小石が奥の方にあるのが気持ち悪い……。


(そうだ!ミナモを呼ぼう!)


D=D(ディメンション=ドア)!ミナモ居るかな?」


 ……


 ……


 D=Dが出現しない!ミナモからも返事がない!


「ん?あれ?なんでだ?」


 ━━!


(迂回ルートには魔消石(ましょうせき)のある地域がありまして……簡単に言えば魔法が使えない地域)


 トスクールが話していたのを思い出す!


(ここが……その場所なのか?)


 周囲を見渡すオボロ!


 砂地や砂利が広がり……何本もの支流が流れ、遠くに雑木林……。所々に大きな岩が置かれているような、地面から出ているような……。


 何度か試すが……D=Dは現れない!


 ブレインマウスでメル達に話しかけるが……全く反応が無かった!

 無理だろうと思いつつ、クロネとアミュにもブレインマウスを送るが……音沙汰なし……。


「……俺……独りぼっちだ……」


 ……


 川の水は、まだ濁っているので新鮮な水を求め、ふらふらと歩き出すオボロ……。


(俺って……一人では何も出来ないのでは?)


 そんな悲壮感なオボロ……。


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