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第6幕〜卒業そしてガイアールへ

青葉ナナ→青葉爽太、青葉マキの娘。高校生になる15歳。豆腐好き。


水嶋サキ→青葉マキの実姉でナナの叔母。シングルマザーで息子のダイキがいる。


おぼろ→飼い猫きぬ♀子供でキジトラ柄の♂猫、額に菱形の傷がある。


魔導士ゼクセン→喋る黒い石

 

 現代・3月初旬━━


 ナナの卒業式を迎えた。本来なら両親に見守られて卒業が一般的だが、叔母のサキが一人保護者席に座る……。


(ナナちゃん!卒業おめでとう!マキと爽太君じゃなくて申し訳ないけど……叔母としてちゃんと見届けるからね)


 卒業証書をもらうナナ。

 頑張った勉強……笑顔で生活した日々……そして両親の死……。色々な想いが思い出が駆け巡り……涙を光らせたナナ。それでも、笑顔で席に着くナナ。


 青葉家━━


「ナナちゃん、着替えてらっしゃい。お腹空いてるでしょ?軽く何か作るからぁ」


 リビングのソファーに荷物を置きながら話すサキ。


「わかったぁ!パパとママに報告もしとく!……あっ!湯豆腐が良いな!サキさん!」


 足元にじゃれているきぬを気遣いながら話すナナ。


 ナナの部屋━━


 本棚の一角に少し前の家族写真を飾っているナナ。中学に上がる前に庭で撮った家族写真……。爽太とマキが並び、その前にきぬを抱き抱えているナナ……。三人とも微笑み幸せそうな写真……。


「パパ……ママ……中学高卒業しました……今はサキさんとダイ兄と……きぬとおぼろで楽しく過ごしています……ぐすっぐすっ……もう……パパとママに……会えないってことはわかってるの……でも……それでも!……心のどこかで……また会えるんじゃないのかなって考えちゃうの!」


 ━━キィィィ


 おぼろが静かにナナの部屋へ頭をグイグイ押し込みながら入って来て、ベッドに飛び乗り首を傾げ見つめている……。


 卒業証書を見せて、机に置くナナは、涙を手で拭い……


「来月からは高校生!もう少し大人にならなくちゃ……駄目だよね?」


「ナァ……ナァ……ナァ……ナァ……」


 おぼろの鳴き声が後ろから聞こえ、振り返るナナ


「今、パパとママに報告してるから……待っててね、おぼろ」


 おぼろの首輪の肉球のアクセサリーが力強く光る!


「ナァ……ナァ……ナァナァ……」


 ナナをジッと見つめ、鳴き続けているおぼろ……。


「さっき肉球の所……光った?」


 気付くナナ。


「ナーナー……ナーナー……」


 ━━!


 聞き覚えのある声!


「ナナ!ナナ!……ナーナー!ナーナー!」


 まだ鳴き続けているおぼろ!


 ━━間違い無い!パパの声!


「パパァァ!私はここに居るよっ!」


 おぼろに向かって話しかけるナナ!


 ━━!


 と、ナナの足元に赤く光る魔法陣が現れた!


 魔法陣が光の柱のようになり、ナナを包む!


「え?何?ちょっと!パパー!おぼろぉー!」


 ……


 光の柱は集束し魔法陣も消滅……。


 部屋にはまだ鳴き続けているおぼろ……。


「ナーナー……ナァ……ナァ……」



 そこにナナの姿は……無かった……。

 着ていた中学の制服と下着を残して……。



 ━━ゼクセン迷宮


 拳くらいの黒い石が、退屈そうにふわりふわりと浮いている……。周りの壁は明るい黄土色で不規則なラインが青く光り流れている。

 部屋中央には複雑な大きな魔法陣!


(ふぅ……誰も来ぬ!)


 黒い石はふわりふわり魔法陣の前を動く。


(ここを完成させて……どのくらい経つじゃろか……百年くらいまでは数えておったが……)


 ……


 静寂な室内……


(やはりこの魔法陣では……無理かのぉ……複雑過ぎて……)


 ……


(もうちっと簡単にしておけば良かったかの……)


 ━━!


 魔法陣の周囲が光り、柱となった!


 黒い石「ぬぉぉぉ?」


「え?何?ちょっと!※※━!おぼろぉ!」


 魔法陣の中から一人の少女が現れた!


(き、奇跡……じゃ!)


 くるりくるり回る黒い石!


 その少女は艶のある黒髪で少し長めなボブヘアー。そして裸で首から二つの指輪を通したネックレスをしていた。


 魔法陣の中でペタンと座る少女は━━!


「えー?何で私、裸なの!」


 両手で大事な所を隠す少女!


 パサァ……


 魔法陣の外から布を投げられた!


 サッと掴み上げ、身体に巻く少女は……


 ━━!


(こ、これって……魔法……陣?……見た事無い綺麗な壁!映画とか……アニメみたい!)


 床の赤く光る魔法陣に触れ……魔法陣の外側にふわりと浮かぶ黒い石を見つけた少女!


「あー!石が浮いてる!不思議ぃ!」


 触れようと手を伸ばすと━━


 バチバチ!


 手が弾かれ、尻持ちをしてしまう少女。


(弾かれた?……で、出られない?)


 黒い石はふわり浮かびながら


(んー……人間、で良いのじゃろか?わしに匹敵するくらい魔力量がありそうじゃ!……この娘なら……もしかしたら……)


 尻持ちつきながら少女は


「ねぇー?誰か居ないのー?……ここは……どこ?……日本?」


 大声を出す少女の声が響くだけ……。


 黒い石は魔法陣ギリギリまで移動し……


「ここは……ガイアールじゃよ……お主の言うニホンなど……聞いた事無いわい」


 ━━!


(へっ?石が喋ったよ?)


「ガ……ガイアール?」


 首を傾げる少女。


「左様。わしはこんな姿をしておるが……『大魔導士ゼクセン』じゃ!」


 一回転する黒い石。


「大魔導士……ゼク……セン?」


(え?大魔導士ってことは……魔法?魔法が使える人なの?)


 子供の頃から魔法少女系のアニメや特撮が好きだった少女は……心踊る!


「あ、あの!私は……青葉ナナ!15歳のお豆腐大好きな女の子です!」


 立ち上がり思わず自己紹介するナナ!


「アオバ……ナナ……女の子、のぉ」


 ゼクセンは復唱するように声に出す……。


 少し興奮気味なナナは


「ねぇ!魔法使えるの?見せて見せて!私、子供の頃から魔法に憧れていたのっ!使えるんなら……見せて見せてっ!」


 その場でかけっこをするように身体を動かし訴えるナナ!


「……んー余分な事はしたくないのじゃがな……」


 少し渋るゼクセンであったが━━


 黒い石の前に魔法陣が現れ━━


「良く見ておれ……」


「……ファイアボール」


 魔法陣から炎の玉が放たれ……黄土色の壁に当たり……消えた!


「わぁぁぁ!凄い!……凄い凄い凄いっ!定番中の定番だよね!ファイアボール!」


 飛び跳ね喜ぶナナ!


 バチバチ!


 はしゃぎすぎて魔法陣の輪郭から吹き上げられている光に触れてしまうナナは、また尻持ちをつく!


「もぉ!これ何なの?……私出られないの?」


 ……


 黒い石のゼクセンは左右に大きく動き……


(んーこの魔法陣が成功したようだが……この世界の者ではなさそうなんじゃが……)


「えーお主……ナナだったか?どこから来た?」


 と、質問する。


 尻持ち状態からペタリと座り直すナナは……


(あれ?私……どこから来た?)


 頭の中を整理するナナ。


(卒業して……サキさんと家戻って……自分の部屋に戻って……)


 ━━!


「痛っ!」


 頭を抑えたナナ!


(えーと……自分の部屋で……何か独り言を言ってたような……そこだけ……霧がかかってるようで……思い出せない!)


 まだ頭を抑えているナナ!


(そうだ!おぼろが部屋に来て……沢山鳴いていた……私の名前を呼ぶような鳴き声の……おぼろ……)


 頭から手を離し、両手をペタッとつき


(気付いたら……ここ!)


「あ……えーと……学校から戻って来て……自分の部屋に居て……飼ってる猫が居て……最後に聞いたのが……その猫の鳴き声で……気付いたら……ここにいた」


 覚えている限りで伝えたナナ。


 くるくる縦回転する黒い石のゼクセン……


(こやつの話が……本当なら……ガイアールの者ではなさそうじゃな……)


 ピタリと止り浮いている黒い石のゼクセン……。


(無理強いは……良くないのぉ)


「よし!お主に選択権を与える!」


 スっと立ち上がるナナは


「……選択……権?」


 魔法陣から少し離れる黒い石のゼクセンは


「左様……その魔法陣から出て、ガイアールで生きるか……お主の居た世界へ戻り……生きるか」


 ━━!


(……急にそんな事……言われても……)


 困惑するナナ。


「まだ魔法陣が赤く光って居るから……戻す事は可能じゃ!どのくらいで光が消えるかわからぬが……じっくり考えるんじゃ!」


 ふわりふわりと移動し、黒い石がゆったり入る台座に納まるゼクセン。


 話を聞いていたナナの両手は無意識のうちに、ネックレスの二つの指輪を強く握っていた……。


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