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第6幕〜張り付く記憶・想う気持ち

オボロ→額に菱形の傷のある茶トラの猫獣人で青葉爽太の転生後の姿。災害により、娘のナナを残し妻のマキとともに死亡。


クロネ→魔獣黒鳥♀で人型時はスタイルの良い有翼人


アミュ→魔獣蜘蛛ブラックウィドウ♀で人型時はゴスロリ風な幼児体型


トスクール→スーデルの町のギルド長


スコット→グレードD冒険者、彼女はクルミ


オーノル→スーデルの町で棟梁をしている





 

 ギルド前━━


 青年達から、南西の橋が崩壊した事を受け、トスクールをリーダーに数名の調査団が出発の準備をしていた。


 まだ町の復旧作業は完全ではないため、本日の指示をもらいにギルドへ来たオボロ達は、何かあったのか尋ねた━━!


(橋の崩壊?こっちにも自然災害みたいなのはあるんだな……)


 さらに話を聞くオボロ……。

 町の南西に川幅も有り深い川の上に建設された橋が、土石流で崩壊し流されていた。その橋が無いと王都方面にはかなり迂回しないと行けないらしく、重要な橋だと。仮に迂回したとしても獣も多く出現し、支流の浅瀬や泥濘、高低差ある平野を通行する悪路となる。


「迂回する方面には……自然の魔消石が多数ある地域も通るため……危険かつ無謀な手段なのですよ」


 説明してくれたトスクール。


 オボロ「魔消石?」


 聞き慣れない言葉なので質問した。


 魔消石━━自然に出来た魔法を消してしまう石。岩場に混ざるのもあれば、大きな岩として存在していたり、見ただけでは区別は難しい。仮に持ち去ろうとその場から離れれば効果は無くなるらしく、なんとも不思議な石。


「魔法が消されると言う方もいますが……魔力が吸われると言う方もいますようで……わかりやすく言えば……魔法が使えない地域と思ってもらえれば」


(そんな石があるんだ……そこだと……クロネとアミュが力を発揮出来ないな……)


「詳しく教えてもらいありがとうございます!」


 と、オボロは思い返答する。


『クロネ、アミュ……ちょっと気になるから俺だけ調査団に同行したいんだけど……良いかな?』


 ブレインマウスで相談するオボロ。


『そんな危険な所、オボロ様一人では……心配でなりませんわ!』


 反対するクロネ。


『えーお兄ちゃんと離れるのアミュ……嫌だなぁ……』


 寂しさを訴えるアミュ。


『トスクールもスコットも居るから大丈夫だ!確認して戻るだけだからさ!』


 オボロは説得する。


 ……


『わかりましたわ……非常に寂しいですが……どうか無事にお戻り下さいオボロ様!』


『うぅ……クロネちゃんと仲良くしてるよ……お兄ちゃん……』


 心細い返事をするクロネとアミュ……。


 トスクールへオボロは、自分だけ同行させて欲しい事を伝える。護衛も兼ねてもらえる事も考えると頼もしいと考えたトスクールは快諾してくれた。

 調査団メンバーは……トスクール、スコット、オーノル、オボロ他数名の少人数。


 オボロはクロネにミティーラとヌイケンの指示で動いて欲しい事を告げ、調査団は南西の現場へ向かった。


 見送るクロネは……


(人間達が居るとは言え……凄く不安ですわ……)


 橋崩壊現場━━


 スーデルの町を出発し二日目の夕刻前に現場へ到着した調査団。現場から少し離れた所へアースランナーの荷車を置き徒歩で向かう……。


 ━━!


 川の流れる音が低く、濁流が流れ広がり、木々や岩が散乱し泥濘んだ地面が邪魔をする!それでも橋があったであろう所まで進む。


 トスクール

「なんと……川が……橋が……」


 スコット

「こりゃ……やばいねぇ」


 オーノル

「普段より流れが違うではないか!」


 王国方面には往来が難しいと絶望感な三人に対し後方でオボロは


(濁った水……押し流される大木、岩……それにこの音……)


 ドドドードゴドゴー


 トスクール達はあれやこれやと現場を見て相談している……。


(泥水……泥……土石流……押し流される……流される……)


 ドドドドドドー


 ━━!


 怯え、頭を抱えしゃがみこむオボロ!


(ぐっ……似た光景は……目に、脳裏に張り付いているさ……俺が……爽太が……巻き込まれた土砂崩れ!)


「ぐっ!はぁ……はぁ……」


 その時の記憶がフラッシュバックし身体を震わせているオボロ!


 スコットが長い棒持ち、流れが弱い所へ向かう……。


「ちょっと深さ確かめて来るぜ!」


 それをチラリと見るオボロ……。


(駄目だ!……危険な行為だよスコット!)


 死の直前の土砂崩れの光景に怯えているオボロ!


 濁流で底の見えない川……。


 足場になりそうな岩を一つ足場にし……。


 そして、もう一つ……。


 長い棒を川面に突き刺すスコット!

 勢い良く、川面に吸い込まれるように刺さった!


 ガゴッ!


 突き刺した棒は人間の大人くらいの高さだろうか……。


 棒を引き抜こうとするスコットに━━!


 ドドドッ!ドドドー!


 太い大木が流れに任せ向かってくる!


「スコットー!危ないぞ!」


 叫ぶトスクール、オーノル!


(だから……危険っだって━━)


 ━━「言ってるにゃー!」


 夢中で助けに行くオボロ!


(この時の俺は……勝手に身体が動いていた……。自然の脅威が怖くて怖くて仕方なかったのに……)


 流れてくる大木が、足場の岩にぶつかり、よろめくスコット!


「うぉっ!やばい……!」


 バランスを取るが━━


 そのまま濁流へ落ちるスコット!

 川底に足が着かない!顔を上げ何かに捕まろうとするが、滑り掴めず、流されるスコット!


(俺……駄目かも……クルミ……ごめん……)


「んにゃ━━!スコットォォォ!」


 四つ足で川沿いの泥濘を駆けるオボロが吠える!

 一気にスコットの方へ飛び━━!


 藻掻いている片手を強く掴み━━


「肩が外れても恨むなよ?」


 思い切り川岸へ放り投げた!


「んっ!にゃ━━━っ!」


 ほぼ真横に飛ぶスコットは泥水にまみれ転がりながら……脱出!


 トスクール、オーノルは走ってスコットの救助へ!


 ━━ドガッ!……ドボーン!


 助けたオボロはそのまま近くのゴツゴツした大岩に背中を強打し、跳ねるように濁流へ落ちた!


「オボロさーんっ!」


 トスクールが叫ぶ!

 濁流に流されて行くオボロ……。


(確かこの先には……落差のある滝が!)


 オボロが流されて行く先には、十数メートルほど落差のある滝がある!


 どんどん見えなくなるオボロ!


 背中の強打で、意識が薄ぼんやりなオボロ……。


(……スコットは……助かったみたいだな……背骨、折れてないよな……)


 沈む身体を藻掻き必死に顔を出す。

 濁流が速くなる!

 その先には……滝!


 ザバザバザバザバー!


 ドドドッ!ドドドー!


 濁流に身を委ねるように滝に流され……滝壺へ……。


(あぁ……俺って……土砂に……災害に縁があるん……だな……)


 ドゴッ!ドガッ!


 落ちる滝の中では、岩の出っ張りにぶつかりながら落ちて行くオボロ……。


(……痛いよ


 ……冷たいよ


 ……クロネ……アミュ……)


 ガコッ!ドカッ!


(……マキちゃん……


 これでまた


 会えるかな?)


 何でも良いから掴もうと手を動かすが……掴めない……。


(ナナ……ナナ……パパはナナに……会いたい……よ)


 ドガッ!ガゴガコッ!


(ナナ……


 ナナ……


 何でも良いから……


 ナナに……


 逢わせてくれよぉぉぉ!


 ナーナー!


 ナーナー!


 ナ━━ナァ━━!)


 ━━ザッバーン!


 激しく岩にぶつかりながら滝壺へ落ち、そのまま濁流に呑まれ下流へと流されて行くオボロ……。


 完全に意識を失うオボロ……。


 ……


 ━━ほわーん!




 燻し銀の【願いの首輪】が力強く光った!




 スーデルの町━━


 クロネとアミュはヌイケンの指示で瓦礫集めや残りの死骸集めを町の中を駆け巡り作業していた。


(クロネさんは空を飛べるから何かと助かるし、アミュちゃんは、頑張り屋さんだし……体力が有り余っているのか?)


 自身も作業しながら思っていたヌイケン。


 細い水路に挟まるエービーの死骸を魔操撚糸で引っ張り出しそのまませっせと運ぶアミュ!


(お兄ちゃんが戻って来たら……褒めてもらえるかな?)


 ニカッとしながら作業するアミュ。


 屋根の瓦礫を鉤爪で掴み運ぶクロネ。


(多少強そうな獣が出ても… 今のオボロ様なら問題無いですわ!……とは言え……側に居ないのは……寂しいですわ……)


 本当は速く戻って来て欲しいクロネ。


 オボロは濁流に飲み込まれ……どんどん下流へと流されている……。



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