第6幕〜ナナのスマホデビュー
青葉ナナ→青葉爽太と青葉マキの一人娘、中学三年生
水嶋サキ→青葉マキの実姉
水嶋ダイキ→サキの一人息子、高校二年生
きぬ→青葉家の白色の飼い猫♀
おぼろ→青葉家のギジトラ柄の飼い猫♂できぬの子供
現代・初夏━━
7月に入りもうすぐ7月7日━━青葉ナナの15歳の誕生日を迎える。
今年の誕生日プレゼントは……そうスマートフォン!周りが持っていると足並みを揃えるのが日本人。サキとしては中学卒業したらと考えていたが……ダイキとナナの子供連合の圧力により撃沈し、受験生なので条件付きで双方合意に至った。
キジトラ柄のおぼろと玩具で遊びながらナナ
(やっとスマホだぁ!モモカちゃんと連絡し合えるし……おぼろときぬの写真も撮れるぅ!)
ソファーに寝そべり足をパタパタさせていた。
おぼろは玩具を口に咥えて、ナナの見える所で、ちょこんと座り遊んでもらえるのを待っていた……。
サキは━━
ゴールデンウィーク明けから爽太の会社へヘッドハンティングでの再就職をし、二ヶ月経っても奮闘していた!
水嶋副室長━━
今のサキの肩書き。新しく新設された災害復旧室の副室長。室長は爽太の上司であった浜田さん。そして爽太の後輩の山本君と合わせて十名ほどの部署。
今はとあるプロジェクトに向け、根回しや人脈の開拓をしている段階。そのメインプロジェクトに加え、近隣の大小様々な災害現場を巡り、建設会社として提案をする業務も並行して行っている。同級生の本田君の会社も提携していて、多方面で協力してもらっていた。
浜田室長がサキを呼ぶ……。
パソコンの画面を切り替えた浜田室長は話す。
このデータは青葉君の生前使用していたパソコンからコピーしたもので……夢なのか、希望なのかは本人しか知らないが……我々が引き継ごうと言う会社の、社長の提案からスタートしたと。
「まぁ……非現実的な部分もあるが……彼が想い描く理想に少しでも近づけたら、とね」
少し寂しく話す浜田室長。
爽太の残したデータとは……災害に強い都市、建物、道路そしてそれを未然に防ぐ予測設備……国も他の企業も同じような事を実現しようとはしているが、とても一人で可能な訳ない絵空事を考えていた爽太。
「しかもこれを見て下さいよ……映画やアニメでしょ?こんな空中都市や都市を覆うシールドとか」
涙を堪え話す浜田室長。
サキはパソコン画面を見つめながら
(爽太君……こんなこと考えていたんだ……)
と、下の方に文章が見えた━━!
「子供達の未来のために」
(爽太君……らしいな)
サキはそう思い
「室長!今は新規参入で他社との競合は確実と予想されます!どれか一つでも実績を作り、優位に立ちましょう!」
「水嶋君……少し成長しましたね!我が社のモットーは熱意!」
浜田室長を励ますサキ。
週末━━
ナナ、サキ、ダイキでスマホを購入しに行く。サキが契約し店舗で待つ間、決めた機種の周辺機器を選ぶナナ。
(あぁーなんか色々あって迷うなぁ!)
目移りしてるナナ。
後ろからダイキが
「とりあえず気に入ったのでいんじゃね?」
声をかけた。
猫耳の可愛らしい背面ケースやイヤホンを選ぶ。それをダイキに渡し、ダイキが支払い……
「俺からの誕生日プレゼントは……これな!」
予算より高くつき、肩をおとしながらダイキ。
満面の笑みでお礼を言うナナ。
帰宅後━━
早速スマホをいじるナナ……。
サキもダイキが不安そうにチラチラ見る。
「アプリのダウンロードって時間かかるんだ!」
「なんかすっごい通知来るんだけどー!」
「もぉー!おぼろ邪魔しに来ないでよぉー!」
スマホに夢中なナナに嫉妬したのか、スマホを遮るようにうろちょろするおぼろ!
クスクス笑って見守るサキとダイキ……。
(ナナちゃんが喜んでくれてるなら良いかな!後は……学校推薦が決まったから……それに向けて頑張ってもらわないと!)
6月上旬━━
三者面談があり、そこで担任から残り一人の学校推薦がまだ未定でそれを勧められた。理由としては、中学二年になってから成績も上がり学年でも上位の常連であること、学校生活も真面目に取り組んでいること、そして━━
「青葉さんは……ご両親を亡くし前向きに自分と向き合い、遅れた勉強も頑張っていました。それに青葉さんの笑顔でクラスの皆も明るく学校生活を送っています」
との理由で、勧められ、ナナも学校推薦で希望の高校へ入りたいと意思表示を示してくれた!
学校推薦での入試は、国、数、英と面接、事前にテーマに沿った作文を提出となり、他の一般的な受験生より科目が少ないのがありがたい。
月日は流れ━━
十二月半ば、学校推薦の結果発表の前日。
リビングに集まるナナ、サキ、ダイキ!
おぼろを強く抱き締めながらナナ
「落ちてたら……一般受験、なんだよね……」
……
「やれる事はやったんだから!ダメだったらその時考えれば良いの!」
と、熱々の揚げ出し豆腐を出してくれるサキ。
ふぅふぅと冷ましながら、食べるナナ。
(寒いときはこれだねぇ!)
「そうだよね!サキさん!」
笑顔で答えたナナ。
翌日━━
学校から走って帰るナナ!
鍵を明け、部屋にあるスマホでサキとダイキにSNSで伝える!
『合格したよ!応援ありがとう!』
と。
寄って来たおぼろときぬにも、
「来年から高校生だよ!JKだよ!」
二匹の頭を撫でたナナ。
学校で、会社で連絡を受けたダイキとサキ。
(ナナ……受かったんだな!……俺の後輩、か)
(ナナちゃん!おめでとう!……なるべく早く帰るね)
それぞれの気持ちを心の中で思い、返信した。
そして中学を卒業する日を迎える━━




