第6幕〜町の復旧と自然災害
棟梁オーノルと別れ、かろうじて営業しているオッテハウスでフルーツタルトをたらふく食べたオボロ達。店主オッテが気を使い以前使わしてもらったテラスに案内され、看板娘クルミから助けてくれてありがとうと言われた。メル達のお土産も購入し、オッテからも町を救ってくれた事を感謝された。
宿屋までの戻り道では、軽く会釈をしてくれる人や少し震えながらも声をかけてくれる人、あからさまに冷ややかな目線を送る人、少し悲鳴をあげ距離を取る人……ギラクの話していた通り……町民の反応は半々であった。
オボロだけでなく、クロネやアミュにも声をかけてくれる人もいて少し安心していた。
(ちょとずつで……良いんだ)
クロネは若い女性から良く声をかけられ、相変わらず男性は視線が怖いのか中々近寄っては来ない……。
(クロネのスタイルなら男なら普通は寄ってくるよなぁ……やっぱり凛とした雰囲気だからかなぁ……)
アミュは幅広い年代から声をかけられている。手には……お菓子や串焼き……食べ物で釣る人間達……。アミュは食べ物を貰って嬉しそうにニコニコしている。
(食べ物やお菓子に釣られそうだから……しっかり教えとかないとな……)
誘拐の危険を考えてしまった子煩悩なオボロ。
翌日━━
言われた通りトスクールの部屋へ来たオボロ達。そこで町の現状を聞く。
損壊としては、大きな物は無く、屋根や窓、壁など細かい箇所くらいで町民が避難するほどではない。路地や石畳みの損壊が多数有るが、通行止めをする程ではないと。それよりも先に瓦礫やエービーの死骸の回収で人手が必要と。
「と、そんな感じです。そこでオボロさん達には瓦礫撤去や死骸回収のお手伝いをしてもらおうかと」
クロネとアミュを見るオボロ。二人とも頷く。
「はい!わかりました」
快諾する。
「町民の目もありますので……お手伝いしてもらいたい区域をギルド前の噴水広場とその周辺までと、制限させてもらいたい」
と、トスクールは話す。
オボロ「?」
「何かあれば私やミティーラ、町長が駆け付けられるので」
(トスクールさん達の目の届く範囲でってことか……)
「それは構いません!精一杯やらせて頂きますよ」
と、意気込むオボロには理由があった!数日間も部屋に篭りきりだったため、身体が鈍っていたから!
(きっとクロネもアミュもそうだろうな)
━━噴水広場
指揮をしている棟梁オーノルの元へ……。トスクールから話は聞いていたようで、すんなり馴染めた。
「まぁ見ての通りだ!エービーの死骸の回収の方で作業の遅れが出ている……皆、頑張ってはいるんだが……」
布を口に当て、気持ち悪そうにエービーの死臭や溢れる体液に耐えながら作業している……。数体ぶんしか乗らない荷車で何往復も町の外へ捨てに行く……。
(人間にはきついよなぁ……それに荷車での往復も時間かかる……)
クロネとアミュを呼ぶオボロは相談している。
「魔獣化すれば楽ですが……怖がらせてしまいますからね……」
クロネは言う。
……
アミュがオボロを見て
「お兄ちゃんが使っても良いって言うなら……アミュ気にしない!」
……
「では、捨てる場所確認してきますわ!」
クロネは飛び立つ。
オーノルの元へ行くオボロは
「オーノルさん?図々しいとは思いますが……死骸回収は俺達でやります!そうすれば手の空いた人達は他へ回せますよね?」
……
しばらく考えるオーノル
「それは助かるが……三人で大丈夫なのか?」
自信を持ってオボロ
「周りの目は気にしません!一日でも早く日常に戻れれば皆さんも安心でしょう」
「わかった!オボロさん達に頼みましょう。何かわからないことがあれば、一声下さい!」
オーノルは死骸回収する人を集め一旦休憩させた。
(さてと……)
「じゃーアミュ!やろっか!」
「うんっ!お兄ちゃんっ!」
と、少しお尻をあげスカートから蜘蛛のお腹を出すアミュ……膨らむお腹……
「んんー!えいっ!」
お尻から網目の巣が地面に置かれるように噴射された!少し細かな網目で大きく広い巣。そこへせっせとオボロは死骸を担ぎ置いていく。アミュは……魔操撚糸を出して操り死骸を絡め取り巣へ運ぶ。
(まだ操作するの難しいっ!でも……感覚は掴めそう!ありがとうクロネちゃん!)
アミュはクロネに、魔操撚糸の訓練になるのでは?とアドバイスされていた。
オボロはと言うと……瞬撃の長次郎の戦いぶりが頭から離れずにいた。見ていて無駄もなく、鮮やかな体さばき。
(あの流足と流転……身につければ……もっと楽に戦えるかも!)
そんな希望もあり、作業中はオーラの使い方を探りながら進めていた。
捨てる場所を確認したクロネも鉤爪で死骸を運び……ある程度集まったところで、オボロが巣を風呂敷のように隅を纏め、それをクロネは鉤爪でしっかり掴み空から町の外へ捨てに行く。
その繰り返しで作業を進めた。
一連の作業を見ていたオーノルや人間達は、色々とざわつく……皆、子声で……
「あの子なんか出したな?」
「え?蜘蛛の巣だって?」
「火吹き猫だっけ?いきなり火炎放射とかしないよな?」
「あの美人さん……以外と力持ちなんだな!」
「おい!あのアミュって子……糸みたいので死骸動かしてるぞ?」
怖さもありなるべく聞こえないようヒソヒソ話す人間達……。棟梁オーノルの見方は違っていた!
(アミュちゃんはあんな事も出来るのか!クロネさんは空を飛べるし……オボロさんは動きが良い……。それに三人の長所と言うべきか……噛み合っている……)
オボロ達の連携を感心して見ていた。
魔操撚糸に魔力を込めすぎ……糸が身体中に纏わりつき、あたふたするアミュ……。そうかと思えば魔力を込めなさ過ぎて絡め取る死骸をボトボト落とすアミュ……。
「……」
(うぅぅ……クロネちゃん……上手く行かないよぉ)
そんな四苦八苦しているアミュをギルド館の中から観察するミティーラは
(もぅ!アミュちゃん可愛いぃ!抱き締めたくなるぅ)
陶酔していた。
オボロは足だけにオーラを集中し走る!こちらもいきなり加速したり、急に止まったり……。
「……」
(狩りや駆除の時は結構出来たのに……意識し過ぎか?)
山積みの死骸を巣で包み運ぶクロネ。
バサッバサバサッ
(しばらく動かなかったから……羽の調子が今ひとつですわ……)
バサッバサッ……バサバサッ!
少しふらつきながらも、捨てに行くクロネ。
(私はオボロ様の為に動いているのです!……決して人間のためにしてるのではありませんわ!)
プライドの高さが伺えるクロネ。
ちょこちょこ動き死骸集めをするアミュ。魔操撚糸を操りホイホイ巣網へ放り投げる。
(長くすると……言うこと聞かない……長い方が楽なのに……)
魔操撚糸を少し太くするアミュ……。
(どうかな?)
「あっ!いい感じっ!」
天性の才能か、閃きか……魔操撚糸を今までの数倍の長さで操りだす!
一方オボロは……屋根を壊さぬようにひょいひょい登り、死骸を担ぎ巣網まで運ぶ。
ガリッ!
(痛っ!)
足の裏を見ると……爪がかけてしまったようだ……。
(あの出っ張りの石畳みの隙間でやっちゃったか……)
足の爪をしまい動くオボロ……。
……
……!
何か足の裏の肉球が凸凹の地面にフィットする……。
足の裏にオーラを集中するオボロ……。肉球がオーラに包まれぷにぷにの感覚からゴムのような感覚に変わる……。
軽く跳ねるオボロ……。
(普段の脚力よりも楽にジャンプ出来るな……高さも十分)
胡座をかき足の裏を持ち上げ眺め、触る……。ゴムのボールみたいな感触……。
足の裏に半円状の膨らみ……。
(なんかに似てるな……)
その足の裏とにらめっこするオボロ……。
この膨らみ……半円状……。
……
━━!
肉球のオーラを流すように意識するオボロ!
……
そこを手でサッと擦る!
シュシュシュー!
オーラがローラーキャスターのように転がった!
━━!
立ち上がり意識を集中し動くオボロ!
ヒュン!
まるでローラスケートのように勢い良く発進した!
(うん!想像に近い!)
その後、死骸回収しながら色々試すオボロ……。
(肉球をオーラでコーティングする感じでオーラを進行方向へ流す感じ……後は力加減か……)
地面を滑るように移動出来るようになったオボロ!
(長次郎のとは少し違う感じだけど……自己流の流足と流転かにゃ!)
自己流の流足、流転の完成の瞬間!
空からオボロを見ていたクロネは
(あら?オボロ様、優雅に動いてますわね?)
オボロの動きが変わったのに気付いたアミュは駆け寄ってきて
「あー!お兄ちゃんそれ楽しそうっ!」
スイスイ移動するオボロを見て後ろを追いかけ回す。
そんな調子で町の死骸回収を二日で片付けたオボロ達。
効率良い働きぶりを棟梁オーノルは絶賛してくれた!
その日の夕刻━━
数人の町の青年達がギルドへ駆け込んで来る!息を荒げ慌てた様子……。
「橋が!……橋が流されてたっ!」
カウンターにいたミティーラとスコットは━━
「おいおい……その橋が無かったら……王都方面行けないじゃねーか!」
トスクールの部屋へ走るスコット!
……
報告しに来た青年とスコット。
━━!
(流されてた?……川も広がって……泥水が流れている……)
「報告助かりましたよ!明朝私をリーダーでチームを組んでまずは様子を見に行きましょう!もちろんスコットは決定ですよ!」
冷静に答えるトスクール。
「復旧がまだ終わってないのに……とんだ厄介だな……」
愚痴を溢すスコット……。
【能力】
・オボロ
肉球脚星(自己流の流足、流転)




