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第6幕〜栄誉町民バッジ

オボロ→青葉爽太の転生後の猫獣人


クロネ→魔獣黒鳥で人型の時はスタイルの良い女性の有翼人


アミュ→魔獣蜘蛛ブラックウィドウで人型の時は幼児体型でゴスロリ風な女の子


メル→オボロをマスターと呼ぶ小さなホムンクルス


セリーヌ→半魔でクロネと同じくらいスタイルの良い女性、スーデルの町から北東にある山頂の自分の工房にひっそりと住んでいる


 

 セリーヌの工房━━


 自らの過去と今を犠牲にしてスーデルの人間達に、恐怖を与えたブルーレディこと、セリーヌは工房へ戻って来た。


(あっ……お酒買うの忘れたさね……)


 工房へ入り心配そうにホムンクルス達が集まってくる。


「そんなに心配しなくても大丈夫さね……ありがとうさね」


 ソファーに座り運ばれるお酒を早速飲むセリーヌ。


「私がしてやれるのは……ここまでさね……後はオボロちゃん次第さね」


 なんだかんだ面倒見良いセリーヌ。


 スーデルの町━━


 セリーヌが町民に大声で話したことが、明らかに自分達へ感謝しろと言う内容と受け止めたオボロ……そしてクロネ……。アミュには今ひとつ響いてなさそう。


 ベッドに座っているアミュは


「ねぇお兄ちゃん?セリーヌは……アミュ達のことで……怒ってたのかなぁ?」


 それなりに的を得ている発言に驚くもオボロは


「そうだな……セリーヌさんは怒ってたのかも知れないね……でも……町の人達に……理解して欲しいって気持ちもあったんじゃないのかな?」


 口から牙を出しモゴモゴさせているアミュ……


「ふぅぅん……そうなんだね……アミュは町の人好きだよ!遊んでくれるし……美味し物沢山あるし!」


 クスリと笑うクロネは


「アミュらしいわね……」


 部屋の隅っこに移動していたメル……。


「マスター……師匠止められなくてごめんね……自分が悪者になるって相談はもらってたの……」


 ━━!


 オボロ「あの時か?」


 あの時とは……頭の中を整理させて欲しいと言ってしばらく目を開けなかった時間の事であった。


 コクンと、頷くメルは


「それが一番良いって師匠が……言い出したら折れない師匠だから……止められなかった……」


(セリーヌはオボロ様よりもお人好しなのかも知れませんわ……)


 そんな事を考えてしまうクロネ。


(自分を犠牲にしてまで……セリーヌさん!ありがとうございます)


 心の中で感謝するオボロ。


 ━━コンコン!


「私、町長のギラクです」


 メル達を慌ててD=D(ディメンション=ドア)へ戻すオボロ!クロネが内鍵を解除し、部屋へ招き入れる……。

 入って来たのは……町長ギラク、ギルド長トスクール、スコットとミティーラ……ソファーへ座ってもらう。


 ……


 沈黙が部屋を包む……。


 ……


 オボロが今日の用件はと丁寧に尋ねた。

 ギラクがソファーから立ち上がり


「今回エービーの襲撃の件……多大なご助力、誠にありがとうございました!町を代表し、私ギラクが挨拶に参りました!」


 と、深く頭を下げた。

 一緒に居るトスクール達も立ち上がり頭を下げた。

 ベッドから立ち上がりオボロは


「出来ることをしたまでです……しかし、別の事で町に迷惑かけてしまったなぁとも……感じています」


 別の事とは、クロネとアミュが魔獣化してしまい町民達をさらに怖がらせてしまったこと。


 皆ソファーへ座り……ギラクは話す。

 ここに居る人と、ヌイケン、カインツの話を聞き、色々議論した結果……


「私達はオボロさん達を非難したりはしません!……しかし非難する人、怖がる人が半数は存在している事は事実」


「まぁ……そうですよね……」


「そこでこちらをオボロさん達にお渡ししようかと……」


 ギラク以外の人間は……


(何を渡すつもりだ?)


 ポケットから小箱を取出し開けテーブルに置く。


 中には丸く鈍く光るメダルのような物。


 オボロ「これは?」


 ギラクが答えた。

 この町では大きな貢献や功績をした人に栄誉町民として称えていると。それがこの栄誉町民バッジだと。


(ギラクさん……町長権限とはこう言う事でしたか)


 感心するトスクールは、上着に付けている自分の栄誉町民バッジを見せてくれた。


「これを渡す目的は二つあります」


 と解説するギラク。


「まず一つ目……このバッジを付けている者に対し、暴力を行うと罰せられます。もう一つは……露店や店舗で何らかのサービスが受けられます。ここに関しては……店主任せですので……必ずという訳ではありませんがね」


 顎に手をあてるオボロ


「なるほど!俺達に危害が来ることは減る、と?」


「そうです!ゼロにはなりませんが……抑止力にはなります。それと……暴言や陰口までは……効果は無いので……力不足で申し訳ありません」


 と、ギラクは色々と配慮して伝えてくれた。


 オボロはクロネとアミュを見る……。


「仮に暴力されても返り討ちにして差し上げますわ!」


 きっぱり言い放つクロネ!


「これ付けるとアミュ人気者なの?」


 アミュは相変わらず話を理解していない様子……。


 と、ミティーラが


「そうよ!アミュちゃん!そのバッジ付ければ人気者よぉ」


 と、おだてる。


「わかりました!謹んで栄誉町民バッジお受け致します!」


 二人の了承?を確認し伝えるオボロ!


 ギラクは先にクロネとアミュにバッジを渡し、ミティーラが二人の胸元に付けてあげた。バッジを摘み喜んでいるアミュはミティーラにじゃれて二人とも嬉しそう。オボロは……胸元に付ける箇所が無いので燻し銀の首輪に輪っかを絡ませバッジをぶら下げた。


 ギラク達皆からささやかな拍手が送られた。


(非難を浴びたら……関わらないようにするのが一番かな)


 そう考えるオボロは


「えーと……復旧作業……俺達も手伝えませんかね?」


 ━━!


「非難を浴びる事を承知で、ですか?」


 トスクールは言う。


「はい!わかった上で、です!」


 小さくガッツポーズするオボロ。


 ギラクと目を合わせトスクールは


「では、明日ギルドで復旧作業の状況をお話しましょう。待機も今日で解除しますので……外へ出ても構いませんよ!何かあれば私達が止めますので!」


「それは心強いです!よろしくお願いします!」


 ビシッと返事をしたオボロ。


 部屋へ来てからほとんど喋っていなかったスコットが


「オボロさん!俺も……オボロさんみてぇに火が吹ける冒険者になって見せるぜ!」


 キラリと歯を光らせ宣誓した!


 オボロは手を前に出し


「あっ……えっと……それは……」


 中々言い出せないオボロの手をサッと羽扇子で止めクロネが━━


「良い心掛けですわスコット!オボロ様の隣で火を吹く姿をお待ちしてますわ!」


 と、スコットを煽る!


 調子に乗るスコットは


「おっ?火吹き兄弟ってか?」


 と、笑いながら部屋を出て行く。


(あっ……クロネェェ……そんな煽らなくても……)


 嘆くオボロに対し、言ってやりました感満載のクロネ!


 ミティーラはアミュの前に目線を合わせるようしゃがみ……両手を取り自分の手で包み込み


「アミュちゃん……私とクルミの事……助けてくれて本当にありがとう!見た時はびっくりしたけど……話す声がアミュちゃんだったから……少しホッとしたんだよ」


 赤いエナメルの靴の先を擦り合わせているアミュ……。


「ね!アミュちゃん!もう一度……見たいな!本当のアミュちゃんを」


 大胆な事を言うミティーラは目が真剣だった。


 オボロを見るアミュに


「うん!見せてあげたら?」


「わかった、お兄ちゃん!」


 と、魔獣化しブラックウィドウの姿へ!


 まだ部屋に居るギラクとトスクールは隅へ移動してしまう!


 赤い八つの単眼……表情の読めない顔……牙をくるりくるりと動かすアミュ。


「ミティーラちゃん!アミュだよっ!」


 と、元気良く挨拶する!


 身体の震えを我慢しているのか……恐る恐る手を近づけるミティーラ……


「ここなら……触っても平気?」


 と、頭部を触れるように触る。


「うん!全然平気っ!」


 触れられて嬉しいのか、牙をカチカチ鳴らすアミュ!


(うん……アミュちゃんは……アミュちゃんだな)


 ミティーラの中で気持ちの整理がついたようだ。


 魔獣と人間が……ちょっとだけ分かり合えた瞬間!


 アミュは鋭い前脚を差し出しミティーラは軽く握り、握手をしているかのようだ。


 ミティーラを先頭に部屋を出て行くギラク、トスクール。


 ………


「お兄ちゃんっ!あれ食べたーいっ!」


 人型へ戻りアミュが叫ぶ!


「そうだな!俺も食べたい!」


「私も甘い物が恋しいですわね」


 オボロ達はオッテハウスのフルーツタルトを食べに行くことに!


 堂々と町を歩く三人……復旧作業する人間達は、距離を置くものは居る……それでも話かけようとする者は見受けられるが、周りの目を気にしてか……声をかけるのを諦めてしまう。


(人間の心理としては……間違ってはいないよな……)


 元人間であるオボロは、そう考えていた……。


(自然と溶け込むのが……理想かなぁ)


 そんな願望もあったオボロ。


 噴水広場━━


 人々がエービーの死骸や瓦礫撤去をしている。


「おーい!こっちから運んでくれ!」


「手の空いてる者は、荷車を押すのを手伝ってくれ!」


 と、高い台に乗り指示を出す男性がいた。


 その付近を静かに通り過ぎるオボロ達━━!


「よぉ!俺達生き延びられたのは……オボロさん!あんたらのおかげだ!ありがとうよ!」


 清々しいくらい躊躇わず話しかけてくれた男性!


 歩みを止め男性を見るオボロ。

 人間としては大柄な方、腕も太くがっしりした体型、ねじり鉢巻をしている。


「あ、ありがとうございます……出来ることをしたまでですよ」


 とりあえず返答するオボロ。


「俺はこの町で棟梁してるオーノル!町を救った英雄なんだから……もっとシャキッとしてくんない!」


 オボロ達を励ますかのような口ぶりなオーノル。


(栄誉町民バッジ効果か?それとも……個人的なのかな?)


 とは言え、迷わず声をかけてくれたオーノルに、ちょっぴり好感が持てたオボロ。


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