第6幕〜王国と伯爵領
第6幕、開幕です。
登場人物や地名、多くなります。
飽きずに読んでもらえたら嬉しいです。
スーデルの町がエービーの襲撃にあっている頃……。
ディオーレ王国━━
スーデルの町から北へ遠く離れた王国。
国王 サラン=ディオーレ
王妃 レイラ=ディオーレ
第一王子 クラン=ディーオーレ
第二王子 オラン=ディオーレ……と、代々ディオーレ家が統治する王国。
王都近隣にはディナン、ディホクと言う大きな町があり物資のやり取りや人々の交流も盛ん。
王城内・食堂━━
広い室内に大きな窓から光が射し込む。大きく豪華に装飾されたテーブルや椅子、景観を損なわない程度の美術品や油絵……テーブルに並ぶ豪華な食事。家族で食事をしている。
第一王子クラン
「お父様、お母様、本日エレナータ様と過ごす時間を頂きありがとうございました!自分が思っていたよりも……お優しくも芯が強いお方でした」
国王サラン
「そそっかしいクランには少し年上の女性の方が良い!それにおまえが気に入ったのなら、なおさら」
王妃レイラ
「ええ!貴方の事をきちんと見ていて下さる方が、母としても安心します」
クラン
「舞踏会で大臣のグヌール殿に紹介されていなければ見落としていましたよ!王都に住む貴族のご令嬢からは……反感を頂くでしょうが……それでも私はエレナータ様に一目惚れしてしまいました」
レイラ
「これで……可愛い孫が産まれてくれたら……嬉しいですわ」
クラン
「お母様!気が早すぎです!」
サラン
「婚約の発表の日取りや準備で忙しくなるな。クランよ、しっかり務めるが良い!」
王城内・大臣の部屋━━
豪華な椅子にワインを手に持ち考え事をしている大臣グヌール。肥満体型でお腹もだいぶ出ている。
(クラン王子がエレナータ嬢を気に入ってくれて安心だ……アルス伯爵家にとっても悪く無い話だしな……)
果実を丸かじりし、ワインを飲み干す大臣グヌール。
アルス伯爵領━━
ディオーレ王国から離れた東に位置するアルス伯爵領。
王国の食を担うほどの広大な畑を有する。麦畑、野菜、芋類そして家畜や香辛料、紅茶の茶葉など、気候や水源の相性も良く毎年どれも豊作。
しかし、ここ数年は平年を下回る収穫で領主のバルナ=アルスは悩んでいた。
そこへ毎年参加している舞踏会での出会い。娘のエレナータ=アルスと第一王子クランとの出会い!
あの時大臣から声をかけられていなかったら……この出会いはなかっただろう……。
バルナ伯爵
「クラン王子との婚約が成立すれば……多少の不作でもなんとかしてくれる!エレナータには申し訳ないとは思っているが……領地を守るため!」
領地が見渡せる小高い丘に家を構えるバルナ伯爵は、そこから見える領民の住む家々や麦畑を眺めていた。
その日の夕刻━━
「エレナータが王都よりただいま戻りました!お父様、お母様!」
華やかなドレスを纏い、桜色の長い髪、大きな瞳、左目尻付近に小さなほくろのエレナータが帰宅して来た。その後ろには剣を携え護衛と思われる狼の獣人。
広い玄関で出迎える数名の使用人と、母親のラナ=アルス。エレナータと同じ桜色の髪を纏め上げ綺麗な首元を覗かせる。
ラナ
「王都はどうでしたか?クラン王子とはどんなお話を?お土産は何かしら?」
間髪入れず話す。
エレナータ
「ちょっとお母様!そんなに沢山質問されても……どれからお話すれば良いか……」
と、少し頬を染めて答える。
ラナ
「はっ!そうですわよね……まずはお父様に報告ね」
バルナの書斎━━
本棚にはびっしりと書物、美術品や絵画といった物は見られない、ごく普通な書斎……。
「お父様!エレナータが戻りました!」
ドレスを持ち上げ挨拶するエレナータの後ろには狼の獣人。
バルナ
「長旅ご苦労様であった。おかえりエレナータ。クラン王子とは、上手くやれそうか?」
少し頬を染めてエレナータ
「はい……とても気さくな方で話も面白く、ちょっとそそっかしい面も見られましたが……そこは愛嬌と受け止めてます」
ゆっくり頷くバルナ
「お互いの気持ちも大切にしないとな。それにこんな畑ばかりの領地から王家と親族になれると思うと……私も鼻が高い!」
「貴族のご令嬢達に比べたら……私なんて……」
俯くエレナータ。
机を軽く叩くバルナ
「エレナータよ、そんなに自分を下に見ないでおくれ……おまえは十分綺麗だ!それに……領地内では人気もある!」
「お父様とお母様に恥をかかせぬよう作法や王家の歴史をしっかり勉強します!」
決意を伝えるエレナータ。
「では、失礼致しますお父様」
狼の獣人を残し部屋を出るエレナータ。
……
机に腰掛けバルナ
「護衛ご苦労様であったなジルファス!」
ジルファスと呼ばれた灰毛で先の方だけ青い狼の獣人
「はい、無事に戻りました領主様」
バルナ
「ふっ!そう固くなるなジルファスよ」
ジルファス
「そうですね!バルナ」
バルナ
「で、何かわかったか?」
ジルファス
「それが……中々自由に動けなくて、ほとんどお嬢についてまして……ここを活用しても兵士達が話していた噂話くらいで……」
と、大きな耳をピクピク動かし指差す。
その噂話を話すジルファス。
大臣がやたら騎士達に酒をご馳走したり、高価な宝石を奥さんにプレゼントしたり……自宅のお風呂を改装したりと。
バルナ
「羽振りが良い……とな?」
ジルファス
「はい!大臣になった時から羽振りは良かったらしいですが……噂になるまでとなると……」
バルナ
「そうか、ありがとうジルファス!今日はお前も早く休めよ」
エレナータの部屋━━
寝間着に着替えたエレナータ。部屋のソファーにジルファスが座っている。
「ねぇジルファス?私……クラン王子と結婚したら……王族なのよ?……やっていけるかしら心配……」
弱音を吐くエレナータ。
「お嬢なら……大丈夫ですよ!貴族のご令嬢と比べちゃいけません!外野は気にする事はありませんよ」
励ますジルファス。
「貴方はいつも……そうやって励ましてくれる……ありがとうジルファス」
……
「クラン王子は……良い人……でも……男性として……何か足りない…………」
ポツリつぶやくエレナータ。
「完璧な人間なんていませんよお嬢……足りない所をお嬢が支えてあげれば良いんですよ!……俺なんか欠陥ばかりじゃないですか?」
「ふふ……ジルファスはそのくらいがちょうど良いのよ!」
窓から見える月を眺めエレナータ
「そうだわ!婚約発表の前に……あのフルーツタルトが食べたいわ」
━━数日後
庭にアースランナーの引く馬車に乗るエレナータ。手綱を握るジルファス。他二名の護衛。
「お父様、お母様、では行って参ります!」
バルナ、ラナ
「食べ過ぎないようにな!」
「楽しんでらっしゃい」
ゆっくり動く馬車……。
エレナータ達は、フルーツタルトで有名なスーデルの町に向け出発した。
スーデルの町・南西部━━
そこにある山脈には大小の窪みや湖、洞窟が点在していた……。
数日前の大雨が止み、今は快晴。
ビシビシビシッ!
ドゴォォォンッ!
ガラガラガラ……ドドドッ!
そこの全てと思われる湖から溢れ出た大量の雨水が流れ、木々を飲み込み……岩を押し流し……一気に山の傾斜をうねりを上げて流れて行った!
洞窟にも水流は流れ込み、逃げ場の無い雨水は岩壁を破壊し山の溝を流れて行った!
その山脈の麓を流れる大きな川に土石流で合流する!
その川にはスーデルの町へ行き来するための唯一の橋。広さは馬車がゆったりすれ違えるほどで川幅も広く、距離もある橋。
そこへ押し寄せる力強い土石流!
ドドドドドドッ!
堅固に作られていた大きな橋が土石流に飲み込まれ……静かに……崩壊し……その流れに逆らえずバラバラになりながら下流へと流れて行く……。
土石流が去り……水位の上がった川……濁った水……枝のついたままの大木や大きな岩でせき止められ、川の流れや形も変化していた!
この橋が無いと、海辺手間の支流まで迂回しスーデルの町へ行くことになり、普段の倍以上の日数がかかってしまう。
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