第5幕〜ブルーレディ再臨
オボロ→茶トラ柄の猫獣人、青葉爽太の転生後の人物
クロネ→魔獣黒鳥♀でオボロとは血の盟約を交わした間柄。密かにオボロを想っている。人型ではスタイルの良い金髪の長身の大人な女性
アミュ→魔獣ブラックウィドウ♀でオボロとは血の盟約を交わした間柄。オボロのことを白馬に乗った王子様と慕い、お兄ちゃんと呼ぶ。人型の時は、ゴスロリ風な幼児体型の子供。
メル、ホノカ、ミナモ→オボロをマスターと呼ぶホムンクルス達。
セリーヌ→スタイルがクロネと同じくらいの半魔の♀、町から離れた山頂の工房でひっそり暮らしている。
町の外では、エービー襲撃の後始末や片付け、復旧が町民総出で行われている……。
メルはミナモが水を出せる事が解ると……
「ミナモ、ちょっと手伝いして欲しいな」
と、手を引きD=Dへ引っ張り、ついでにホノカも呼ぶ。
「じゃーマスター!師匠、またねぇ」
D=D内へ消えていくメル達。
チビちゃんがせっせと飲み物を継ぎ足したり、つまみ的な物を足したりしてD=Dへ戻っていく。
セリーヌが飲み物を啜り
「ミナモの件はとりあえず一段落したさね……で?何があったさね?オボロちゃん」
と、最初の質問に戻す。
眉間の菱形の傷跡を掻きながらオボロは静かに順を追って話す。
……
片足を組み聞くセリーヌ
「アミュが仲良くなった人間を助けるために……魔獣化しちゃった……さね……」
しょんぼりしているアミュ。
……
「で、クロネも責任取って……魔獣化した……さね」
「……はい」
クロネは俯き返事する。
……
「建物や石畳みは……二人が暴れたのでなくて……戦闘や移動の結果……さね」
……
「家に避難してる人間達に……悲鳴を出され……怖がられてしまった……さね」
顔を上げクロネ
「当然の結果だと感じて反省はしています」
……
オボロは町の外での事も話す……。
……
「で、オボロちゃんはその白髪混じりの初老の瞬撃の長次郎ってのが、大物を仕留めてしまって……何も出来なかった……さね」
弱々しくオボロ
「はい……世界には自分よりも強い人間も居るんだなって……思い知らされました……」
……
「大きな巣を……ホノカのファイアブレスで焼き払う場面を……人間に見られ……オボロちゃんが火吹き猫って……噂もされてる……で、今はギルドから宿屋で待機してろ、と」
後頭部を撫でながらオボロ
「この際火吹き猫はどうでも良いんで……」
クスッ!
火吹き猫に反応し思わず笑ってしまうセリーヌ
「笑ってごめんさね!想像したら……なんか可愛らしくてさね!」
複雑な心境のオボロ……。
「俺としては……非難されても今は町の復旧に手を貸したいし……受け入れてくれるならまだ、この町に留まりたい!」
オボロの気持ちに賛同するようにクロネは首を立てに動かす。
……
ソファーにもたれ背筋を伸ばすセリーヌ……
(私が初めて魔力暴走して……集落を破壊しまくったのと……少し似てるさね……。あの時と違うのは……仲間が居る事くらいさね……)
「少し頭の中、整理させてくれさね」
と、伝え目を閉じたセリーヌ……。
D=D内━━
ミナモが薬丸の作り方の長老のメモを見ている……。
「これでは……無理」
長老=海神から溢れ落ちた魔石から産まれたミナモには、それなりの知識があった。
「この分量が違う……それと……混ぜる順番」
「ミナモなら解ると思ったのよ!」
くるくる回るメルは、薬丸作成チームにお願いする。
━━!
と、セリーヌからブレインマウスが飛んでくる!
『あれ?どしたの師匠?』
セリーヌ
『ちょっと話がしたくてね』
メル
『もしかして内緒の話しぃ?』
セリーヌ
『そうかも、さね』
……
セリーヌはブレインマウスで、自分の考えた一番良い解決方法を相談していた……。
……
涙が溢れるメル……。
『そこまで師匠がしなくてもぉ!』
セリーヌ
『オボロちゃん達には楽しませてもらったし……私みたいにならないで欲しいさね』
メルは鼻をすすりながら
『ぐすっぐすっ!師匠が……そう決めたなら……私は反対しないよ!……師匠がどんな人かなんて……私が一番良く知ってるからね』
セリーヌ
『あんたに相談して……良かったよ……もう迷わないさね!』
━━オボロ達の部屋
ソファーにもたれたセリーヌの目が開く!
同時にメルがD=Dからゆっくり現れる!
待っていたオボロ達は、セリーヌに注目した。
ソファーから立ち上がるセリーヌは
「さて、頭の中は整理ついたさね!」
セリーヌを見上げオボロは
「何か思いついたのですか?セリーヌさん?」
静かに首を横に振るセリーヌ……
「私の用事は済んださね!お酒でも買って工房戻るさね」
心配そうなメルを見て
「メル!オボロちゃんの事頼んださね!」
コクリと頷くメル……。
「きっとオボロちゃん達がして来た事が……実を結ぶ時が来るさね!」
励ますセリーヌの表情は……どことなく曇っていたように感じたオボロ。
「わかりました……お気をつけて……」
静かに部屋を出るセリーヌ……。
(さて、上手くいくと良いさね……)
宿屋一階━━
軋む階段を降り、グーメラとカヌスの居るカウンターの前に立つセリーヌ。
焦げ茶のマントを脱ぎ、畳んでカウンターへ置く……。
長いロングスカートをビリビリ破き膝上くらいまでに合わせる……。
長袖のシャツも肩から破き、お腹も出るように破く……。
何をしているのか見届けているグーメラとカヌス……。
最後に大きめなキャスケット帽を脱ぎカウンターへ置き……纏め上げた髪を降ろすと━━
━━!
群青色の地肌!
長くストレートな真っ青な髪!
右頭部には、くの字の黒い角!
垂らした右側の前髪も整え、青目が現れた!
グーメラとカヌスの顔色が変化した!
「お、おい……あんたまさか?ブルーレ━━!」
咄嗟にグーメラの唇に人差し指を当て……
「あんたらには手は出さないさね……悪いけど……この服、処分しておいてさね」
と頼み事をし宿屋を出て行く……。
宿屋を出て噴水広場へ静かに歩くセリーヌ……。
復旧する人間はセリーヌを見て気持ち悪がるのもいれば、作業を辞め逃げる人間……。
半魔の姿のセリーヌを知る人間は、そう多くは無い……が、ブルーレディの忌まわしい事件の事はこの町の人間達には広く知られている!
噴水広場を二周ほど歩くと……町の作業音は消え……噴水広場には数人程度しか人間は残らなかった。ギルド館から慌てて出て来るトスクール、スコット。
(あれは!この辺りに伝わる事件の主犯ブルーレディでは?)
見ただけでも判断出来たトスクール!
(生存していたとは……)
━━バッバッ!
魔力の黒い翼が現れ、真上へ飛ぶセリーヌ!
外が静かになったのが気になり窓から様子を伺うオボロ━━!
「セリーヌ……さん?」
半魔姿のセリーヌが居ることに驚く!
クロネもアミュも他の窓から見る!
(セリーヌ!貴女……何をするつもりなの?)
噴水広場上空に浮くセリーヌいや、ブルーレディは大声で話す!
「あぁ本当、人間ってのは惨めで……醜いさね!」
……
「今、安全に復旧作業出来ているのは……誰のおかげさね?」
……
「その事を良ぉぉく考えて、今後は生活することさね!」
……
「……非難されたって……相手にしなきゃ良いだけさね!」
と、宿屋の方を向き話すセリーヌ。
(これは?……俺達に向けた言葉!)
オボロは自然と涙が溢れて来る……。クロネも同様に目が熱くなっていた……。
向きを変えセリーヌ
「もう一度言うさね!」
……
「今、生きていられるのは……誰のおかげさねっ?」
町民達のざわめく声が微かに聞こえる……。
自分よりも大きな魔法陣を展開するセリーヌ
「そいつらの事……非難する奴が居る町なんざ……この炎で燃やし尽くすさねっ!」
ありったけの魔力でファイアボールを空へ放つセリーヌ!
大きなファイアボールは天空へ消えて行く……。
「覚えておきな!」
「私が……ブルーレディ、さねっ!」
と、言い放ち颯爽と町を離れるセリーヌ……。
(オボロちゃん……悪者は……一人で……良いんさね……)
工房へ戻るセリーヌは、自分の涙と共に飛んで行く。
(セリーヌ……貴女は強く素晴らしい女性ですわ!感謝いたします)
羽で顔を隠し……泣くクロネ……。
(アミュ……セリーヌに助けられてばっかりだよ……)
なんとなく理解しているようなアミュ。
テーブルに座るメル……
(はぁ……やっぱり止めるべきだったかなぁ……師匠、決めたら中々折れないからなぁ……)
パタン……。
窓を閉めその場に立ち尽くすオボロ……。
(セリーヌさん……こんな俺達のために……一人犠牲になるとか!次に合う時……どんな顔をすれば良いんだよ!)
「それでも……ありがとうセリーヌさん」
……
「いや……ブルーレディ」
スーデルの町・東部━━
セリーヌが町を去った日の夕刻……町から離れた東部の山脈の上空にはどす黒い雲が大量発生し、雷と大雨で大荒れの天候となっていた……。
山脈の大きな窪みや湖には雨水が、どんどん溜まって行き……今にも溢れて崩壊寸前であった!
第5幕〜終幕




