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第5幕〜予期せぬ来訪者

 

 アミュのロックピラーで地面を持ち上げ燃え盛るエービーの要塞の巣の鎮火を見守るオボロ、クロネ、アミュ……。


 アミュは炎の明かりが綺麗と見えるのか、嬉しいそうに見ている。少し前から眉間の菱形の傷跡が気になるのか、ポリポリ掻くオボロ……。クロネが心配し気遣ってくれた。


「なんかヒリヒリしてると言うか……触れられてると言うか……」


 曖昧な返答のオボロ……。


 巣から離れ集まっていたトスクール達……。火を使える魔法使い達は火を吹くオボロに恐れを成し町へ走って行く。まだ背中の傷が治っていないミティーラはヌイケンに支えられ町へ戻る。残ったのはトスクールとスコット……。


「オボロさん……火を吹きましたよね?スコット?」


「あぁ見間違いじゃーねーぜ!トスクールさんよぉ!」


 二人確認し合う。


(エービーの大群を退治してくれたオボロさん達には……感謝しかありません……しかし……町民は……どう感じているか……いや……風当たりは強くなるはず!)


 トスクールは不安視している。


 黒い煙を巻き上げている巣。


「スコット、オボロさん達にはしばらくグーメラの宿で待機してもらうよう伝えてくれませんか?私はギラクとグーメラに話をして来ますので!」


「わかったぜ!俺もその方が良いって思う」


 返事するスコットも同じような不安を持ったのか……。


 ……


 オボロ、そして魔獣化しているクロネとアミュの後ろから少し距離を取りスコットが話しかける。


「あーオボロさん?」


 体育座りして鎮火を見守るオボロは首だけ動かす。クロネも首を動かしスコットを見る。黄色の目が光る!アミュは身体全体を脚を細かく動かし向ける。八つの単眼が光る!


(うっ!この威圧感……負けそうだぜ……オボロさんが居るから襲われる事は無いと理解してても……)


「えーとトスクールからの伝言で、さ……町に戻ったらグーメラさんの宿でしばらく待機してて欲しいんだわ……」


 ゆっくり伝えるスコット。


 まだ燃えている巣を見てオボロ


「とりあえず鎮火するまでここに居るつもりだから……安全確認したら……そうさせてもらうよ」


 と返答。


「それと……町を……俺達を……救ってくれて……ありがとう……」


 絞り出すように感謝したスコット。


 オボロはクロネとアミュにブレインマウスで、怖がるだろうから人型へ戻ったほうが良いと伝え、人型へ戻るクロネとアミュ。


「こっちの方が話しやすいよね」


 申し訳無さそうに伝えたオボロ。


 実際人型でも、異様さは伝わっているが……魔獣よりはまだ良いと感じるスコット。


「すまねぇ……気を使わせちゃって……」


 ……


「俺達……町へ戻っても大丈夫なの?」


 なんとなく察しているオボロとクロネ。


「そこは━━なんとも言えない!けど俺は感謝してるし、助けにもなりたいって思ってる!あの大群……俺達だけだったら今頃は……」


 感謝の気持ちと悔しい気持ちとが混ざり合う涙を腕で押さえるスコット。


「冷えて来るからスコットも町へ戻るにゃ!ちゃんと宿屋戻るから心配しなくて良いにゃ!」


 励ますよう伝えるオボロ。

 肩を少し落とし町へ戻るスコット。


(非難を浴びる事は……間違いないだろう、な)


 そう感じているオボロ。


 巣の炎もまばらになり鎮火まであと少し……。


 あたりは薄暗くなる……。


 ……


 真上には月明かり……炎の明かりも見えなくなった……。


 スーデルの町━━


 街灯が所々に灯り家や石畳みを照らす……。割れた窓……滑り落ちた屋根瓦……荒らされた花壇……陥没した石畳み……片付け途中と思われるエービーの死骸……。それらを掻き分け宿屋グーグーへ戻ったオボロ達。


 カチャ……


 カウンターに店主グーメラと奥さんのカヌスが食事を用意して待っていてくれた!


「おぅ!もちろん今夜も宿泊してくれるんだろ?」


 本気なのか冗談なのか……何事も無かったように接しするグーメラ。


「冷めないうちに食べておくれ」


 と、湯気の立つスープをテーブルへ置くカヌス。


(言いたいこと……聞きたいことあるだろうに……)


 と思いつつもテーブルを囲むオボロ達。アミュは相当空腹だったのか勢い良く食べる。


「うん!お腹空いてたから……美味しいっ!」


 微笑むカヌス。

 と、グーメラが話しかけた。


「スコットから話は聞いてると思うが……報酬の事とか時間かかるみたいだから……しばらく待機してて欲しい」


 食事しながらオボロは


「はい、聞いてます。その通りに待機するつもりですよ」


「何か必要なのあれば言ってくれ!俺が代わりに買ってくるからさ!」


 胸を叩くグーメラ。


 食事を終え部屋へ戻る。


 オボロは真っ直ぐベッドへ倒れ込む!


(身体の疲れより……精神的に疲れたな)


 アミュもベッドに転がり、真っ先に寝てしまう。


 ソファーに座るクロネ……。


(オボロ様の様子が変ですわ……やはり私達が魔獣化してしまったからでしょうか?……町から追い出されてしまう不安もありますよね……)


 色々悩みが尽きないクロネ……。


 一夜明け・待機初日━━


 外では復旧作業をする人々の掛け声、瓦礫を片付ける人々、死骸を片付ける人々……スコット、ヌイケンが指示を出し働く姿も。


 部屋の内鍵をしてD=Dからメル達を出す。


「ねぇマスター?町に居られなくなる?」


 ストレートに聞くメル。


 窓から復旧作業をする人々を眺めオボロ


「んーエービーを駆除したから感謝されてもいいとは思うけど……みんながみんなそうとは限らないからな……」


 パタパタ飛びながらメル


「そうだよねぇ……色々素材買えなくなるのは……困るぅ」


(この復旧作業……手伝いたいけど……無理だろうな)


 そう感じているオボロ……。


 待機二日目━━


 狩りが出来ないアミュは魔獣化し部屋の隅に巣を張り、落ち着いていた……。

 クロネも時折魔獣化し、羽の手入れをする……。

 そこそこ広い部屋が途端に窮屈に感じてしまう……。


「羽を伸ばせなくてすまないな……クロネ。捕食出来なくて辛いよな……アミュ……」


 気を使い謝るオボロ。


 人型へ戻りクロネ


「仕方ないですわ……」


 ポツリと答える。


 巣の中心からアミュ


「アミュ、我慢出来るっ!」


 二人の返答に申し訳無くも有り難いとも感じたオボロ。


 待機三日目━━


 朝から宿屋の下が騒がしい……。町民達の声とグーメラの声……。


「やいっ!グーメラ!匿ってんはわかってるんだ!危険な獣人なんかさっさと追い出してくれ!」


「そうだ!そうだ!恐ろしくて外に出られなくなる!」


「あの獣人、火を吹くんだって?火事になる前に追い出した方が良いんじゃないのか?」


「わしらの家畜……あの獣の餌にならんよなぁ?」


 窓から覗くと……大勢の町民の苦情に対応しているグーメラの姿……。宿屋に入られないようにドアの前で必死に押さえている……。


(そっか……ここにも迷惑かけてるんだよな……俺が出て行っても……火に油を注ぐだけ……)


 復旧作業にも参加したいし、この非難の騒ぎを落ち着かせたい複雑な心境のオボロ……。


 ━━!


「え?俺が火を吹くって言ってなかったか?」


 もう一度耳を済ませるオボロ……。


「おい……あの獣人火を吹くらしいぜ?近くで見てた奴がいたらしくてよ……」


「火を吹くって……本当は……ドラゴンとかじゃ……無いよな?」


 と、町民が話す内容がオボロの耳に入る!


「にゃ━━━っ!」


 頭を掻きむしるオボロ!


 その行動に驚く室内に居るクロネ達!


 町民の話す火を吹く獣人の噂を説明したオボロ。

 ……


「あら?そんな噂が……」


(強そうで良いと思いますわ)


 と、クロネは強さ重視で考えてしまう。


「マスター!俺のおかげじゃね?」


 事の事態を全く飲み込めてないホノカが威勢良く話す!


 部屋を小さく歩き回るオボロ……。


(巣を燃やす所を見ていた人が広めたか……まぁ、ホノカが見られてないから良いとして━━)


「俺、大道芸人じゃ無いにゃー!」


 と、思わず叫ぶオボロ!


 昼前に町民達が居なくなり……昼過ぎ━━


 クロネの羽の内側で隠れたり出たり遊んでいるメルとホノカ……。


 ━━!


 メルの動きが止まった!


 ……


「マスター!マスター!師匠がね?会いたがってるよ!」


 と、オボロに伝えたメル。


「ん?セリーヌさんが?近くに居るの?」


 オボロの周りを飛びながらメル 


「そう!何か用事あるみたいで町に向かってるみたい!」


 オボロは宿屋の部屋に来て欲しい事をメルのブレインマウス経由で伝えてもらった。


 セリーヌに会えるのが嬉しいのかゆらゆら飛び回るメル。


(用事って何だろう……て言うか……今の町を見たらセリーヌさんなんて思うだろうか……)


 スーデルの町・噴水広場━━


 深く被るキャスケット帽、焦げ茶のフード付きのマント、地面を擦るくらいのロングスカートのセリーヌは町へ到着した。

 フードの中に隠れている人魚型のホムンクルスも同伴で……。


 ━━!


(なんだいこれは?……あれはエービーの死骸?町の中で戦闘でもしたのかさね?……それともオボロちゃん達が暴走でもしたかさね?)


 死骸を荷車で運ぶ人……屋根や壁を修理する人……露店が並び人々が生活する景色は全く無い……。


 近くにいた町民に宿屋グーグーの場所を聞くセリーヌ……。


 ━━宿屋・グーグー


 ……コンコン!


「私さね……セリーヌさね」


 メルが飛んで内鍵を外す……。


「失礼するさね……」


 半魔対策しているセリーヌが現れた。


「しぃしょぉぉう!」


 セリーヌの周りを鬱陶しいくらい飛び回るメル!


 オボロは空いているソファーにセリーヌを座らせた。


 どこかしょんぼりしているオボロを見てセリーヌは


「町の有り様は見てきたさね……何があったさね?」


 説明を求めるセリーヌ。


 ━━!


 クロネとアミュが少し警戒する!


「何か強い魔力を感じます!」


「うん!アミュもわかったよ!」


 オボロ「?」


 と、セリーヌのフードから━━


 一体のホムンクルスが浮かんで来た!

 透き通るような水色の肌、流れるような水色の髪、乳房は大きな貝で隠され、下半身は鱗で覆われ大きな尾鰭のホムンクルス!


 オボロを発見し……ふわりと前へ行く……。


 見つめ合うオボロと人魚型のホムンクルス……。


「やっと逢えた……マスター!」


 その行動、言動に確信したセリーヌは


(うん!答え合わせは……終了、さね)



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