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第5幕〜火吹き猫

 

 エービーの巣周辺━━


 キャプテンエービーを鮮やかに仕留め、オボロに助言とも言える言葉を残し静かに去って行った、元グレードS冒険者、瞬撃(しゅんげき)の長次郎……。


 まだ呆然と立ち尽くすオボロの元に━━


「オボロ様!オボロ様?どうかされたので?」


 町の方の駆除が一段落したクロネが駆け付けた!

 ……見渡せば大きなエービーの死骸が多数!


(まぁ!これをオボロ様が!)


 うっとりした表情でクロネ


「素晴らしいですわ!さすがオボロ様!……活躍が見られず残念でしたけど……」


 ……


 いまだ呆然としているオボロ……。


「オボロ……様?」


 スッキリしない腑抜けた顔のオボロは額の菱形の傷跡を触り……。


「んー?……あっ……クロネかぁ……町は……大丈夫、そう?」


 普段と違う声質に気付き……何があったか聞きにくいクロネは


「えぇ!私とアミュで駆除完了、ですわ!」


 と、自信を持って答えた!


 ……


 キャプテンエービーの残骸を眺めているオボロ……。


「うん……ありがとう……二人とも……怪我は……無い?」


 呆然としてても二人の心配はするオボロ。


「えぇ……ご安心を」


 クロネは静かに答えた……。


 ━━トットットットッ!


「おっ兄ちゃーんっ!」


 嬉しそうにオボロの事を呼びながら、走って来るアミュ!オボロの前にピタリと止まり━━


「ねぇねぇ!お兄ちゃんっ!エービーと鬼ごっこ楽しかったよっ!アミュ頑張ったんだから!ねっ?クロネちゃんっ?」


 意気揚々と話すアミュ!


(アミュ!今オボロ様は……普段と少し違うわ!気付きなさいよ!)


 オボロを下から覗き込むアミュ……。


「……お兄ちゃん?……お腹でも……痛いの?」


 覗き込むアミュに気付きオボロ……


「ありがとう……アミュ……鬼ごっこ……また出来ると良いな」


 キャプテンエービーの残骸に再度目を向けたオボロ……。


 ━━!


「クロネさぁぁん……クロネさぁぁん……」


 と、離れた所でスコットが小声で呼び手招きしていた!

 アミュの手を引き向うクロネは……小声で何があったかスコット達に聞き出す……。

 切り株に座るスコットとヌイケンは小声で説明した。


 ……


(私はてっきりオボロ様が駆除したものかと!……では……先程感じた……あの爆発的なオーラは……長次郎と言うお方の……)


 そうとは知らず失言してしまったクロネは……反省する。ちなみに……オボロを絶大に慕うクロネは……強いオーラを感知出来るようになっていた!


 手を握り親指をくるくる回すスコットは


「瞬撃の長次郎が来てからは……オボロさんは……ずっとあの位置さ……正直、俺も驚いた……あっさりキャプテンエービーをさ……オボロさんと何か話ながらよぉ!」


(オボロ様……悔しいのでしょうか?それとも……)


 心配するクロネ。


 ヌイケンはふさふさな尻尾にまとわりつくアミュに……仕方なく遊んでやっていた。


 ……


 目をチョロチョロ動かすオボロ……。


(俺の足跡に対して……長次郎の草履の跡……見れば明らかだ……)


 確認出来る限り自分と長次郎の足跡を数えていた!


(大技ばかり出すのが……強いのか?……派手に動いて目立つのが強いのか?……威勢良く吠えれば強いのか?)


 色々な強さを思い浮かべるオボロはまたも額の菱形の傷跡を触る……。


 ━━!


 ゆっくり立ち上がるスコット!


「おっと!まだ終わりじゃ無い」


 木々の中にある要塞のような巣に目線を動かす。


 ━━!


「かなり大きいですわね……」


 羽扇子を広げ口元へ当てるクロネ。アミュは上から下、下から上と忙しく観察する。


 スコットはヌイケンに火魔法使える奴らと松明の準備をさせに町へ向かわせた。ヌイケンも重い腰をようやく持ち上げ……町へ歩いて行く。


 ━━!


(火!……炎!)


 何か思いついたクロネはオボロの隣に!


 ……ふぁさぁ……


 オボロの背中をクロネは片羽で包む。


「ねぇオボロ様?」


 ……


「まだ、駆除は完了しておりませんの」


 ……


 クロネの方を見るオボロ。


「あちらの……巣……ホノカで灰にしましょうよ」


 耳元で囁くクロネ。


(これで見せ場が出来ましたわ……後はオボロ様次第)


 根回しと言うか、何とか誘導するクロネ。


 ━━!


「クロネ……お前って奴は……」


(意気消沈の俺を励ましてくれたのか?)


「ほら!さぁ……きっとホノカも、うずうずしてるのでは?」


 目を細め、気持ちを煽るクロネ!


 要塞のような巣を見つめオボロは


『ホノカ!ホノカ!』


 ブレインマウスを飛ばす。


『どうしたい?俺をご指名かいマスター?』


 D=D(ディメンション=ドア)内のホノカが返答する。


『あぁ!お前しか出来ない事だ!』


 と、ブレインマウスで説明するオボロ。


 ……


『んじゃ、マスターに隠れてファイアブレスぶっ放せば良いんだな?』


 嬉しそうに答えるホノカ!


 巣へ近付くオボロ達に気付きスコット


「あれ?どちらへ?」


 振り向きオボロは


「やっぱり元から駆除しないとにゃ!」


 首を傾げスコット


「粉々にでもするのか?」


 ━━巣の前


 歩く事数分……。オボロの両隣にはクロネ、アミュ。


 後方を確認するオボロ達……。

 スコットが不思議そうにこちらを見ていた。


 アミュの頭に触れオボロ


「いいかいアミュ?ホノカがファイアブレスを出して、俺が合図をしたら……大きな巣が持ち上がるくらい大きなロックピラーを出してくれ!」


 しっかり話を聞くアミュは


「魔獣化しても良いよね?」


 と、確認する。


「あぁ構わない!」


 魔獣化しブラックウィドウになるアミュ!


「では私も……」


 魔獣化し黒鳥になるクロネは……オボロを隠すように大きく羽を広げた!

 クロネの前に立つオボロ!

 アミュはいつでも近くに行けるように待機。


 遠くで眺めるスコット


「んー?何をするつもだい?オボロさん達」


 行動が読めなかった……。


 と、松明を抱えたヌイケンとミティーラ、そしてギルド長トスクールと魔法が使える者数名が集まって来た。


 巣の前に陣取り羽を広げたクロネを見て


「スコット?クロネさんは何をしてるのです?」


 トスクールは聞く。

 両手を上げ首を横に振り、わからないと言う素振り。


 ……


 オボロは自分の身体に隠れるくらいのD=Dを出現させホノカを呼ぶ!


 巨大な巣を見上げるホノカ。


「ひゃー!こりゃ燃やしがいがあるぜ?マスター!」


 ぷにぷにの肉球にホノカを乗せオボロ


「やっと活躍出来るな!ホノカ!」


 と、激励する。


 思い切り息を吸い込むホノカ……


『行くぜ!マスター!』


 ブレインマウスで伝えるホノカ!


「ファイアブレスゥゥー!」


 辺り一面が炎の海になる!


 ━━バタッ!


「申し訳……ありません……オボロ様……少々疲れが……」


 ホノカがファイアブレスを出す直前、羽を広げ目隠しになっていたクロネが疲労で倒れてしまった!


 後ろを振り向くオボロ━━!


 スコットの周りにはヌイケンやトスクール他数名が集まっていた!


(にゃ!見られたー?)


 咄嗟にホノカをD=Dへ戻し……燃え盛る巣を確認しアミュに合図を出す!


 サッと移動しアミュ━━


「んっ!ロックピラ━━ッ!」


 轟音を立て、巣の周りの木々ごと持ち上げた!


 高くそびえ立ち、太陽のように燃え盛るエービーの要塞のような巣!


 パチッパチッと枝が跳ねる音……。


 ジュジュジュと、巣の中の幼虫が燃える音……。


「良し!この高さなら……被害は少ないはず!……後は見届けるだけにゃ!」


 オボロも満足だったが……一番満足していたのはホノカであった!早速メルに自慢でもしていることだろう。


 と、見ていたスコット達は━━!


「火を吹いたぁ━━!」


「オボロさん!火を吹いたぁぁ━━っ!」


 ヌイケン、トスクール、ミティーラは抱えていた松明を、一斉に落とし驚いた!


 そんな事を叫ばれているとは知らないオボロは、クロネにチャクラで応急処置をして、燃え盛る巣の鎮火を待っていた。


 ━━セリーヌの工房


 窓から人魚型のホムンクルスの様子を見ていたセリーヌ。


(あそこに留まって二日……意固地な奴さね……)


 庭の窪みに自ら水を張り、のんびりと水浴びしている人魚型のホムンクルス……。


 逃げないよう見張りをしていた一体のホムンクルスがセリーヌの元へ


「セリーヌ……あの子……仲良くしてくれない……」


 ため息ひとつのセリーヌ。


「そうかい……ありがとう……交代しなさね」


(お酒買い出しがてら……オボロちゃん所……行こうかね)


 半魔であることを隠すため着替えをするセリーヌ。

 地面を擦るくらいのロングスカート、長袖のシャツ、長く真っ青の髪を纏め上げ大きめなキャスケット帽を深く被り、焦げ茶のフード付きのマントを羽織り、前髪を垂らし右目を隠す!


「ちょっと留守番頼むさね」


 近くのホムンクルスに伝え……庭へ出るセリーヌ。


 人魚型のホムンクルスの元へ行くセリーヌ。


 パチャーン!パチャーン!


 尾鰭を上手に使い水面を何度も飛び込み顔を出していた。


 目が合うセリーヌと人魚型のホムンクルス……。


「ここ……マスターの魔力……感じるの」


 ポツリとつぶやく。


 ━━!


(魔力感知?……オボロちゃんのあの微量な魔力の痕跡が解るって言うのさね?)


 目を丸くするセリーヌ!


「ねぇ貴方?……ここに……マスター……居たよね?」


 パチャン!


 尾鰭で水面を叩く人魚型のホムンクルス!


(嘘をついても……きっとバレるさね……)


 ……


 しばし間


 人魚型のホムンクルスと目線が合うようしゃがむセリーヌ。


「私の推測するマスターと……あんたが言うマスター……同じかどうか……確かめに行くさね!」


 ズズズ━━!


 溜めた水を吸収しふわりと浮かぶ人魚型のホムンクルスは


「貴女がそう……言うなら」


「決まり、さね!」


 人魚型のホムンクルスにハンカチを渡しセリーヌは


「人間には見られたくないからね……悪いけど……それ被ってフードに隠れてて欲しいさね」


 しぶしぶ言う通りに実行する人魚型のホムンクルスは……冷めた口調でぼそりと


「……注文……多い……」


 セリーヌと人魚型ホムンクルスは答え合わせに、オボロ達の居るスーデルの町へ向かった。



      【戦歴】


 オボロ達 VS エービーの巣要塞


 ホノカのファイアブレスで燃やし尽くされ……消滅


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