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第5幕〜エービー襲撃・② 直刀の使い手

 

 噴水広場にエービーのおびただしい死骸が散らばる……。クロネとアミュの強い魔力に怯え逃げ惑うエービー達……。こちらを攻撃する気配は無い。


 ロックピラーの頂点に立つ魔獣化したクロネ、魔獣化し八本の脚を丸め転がるアミュ……。


 町長の屋敷の門の前で叫ぶオボロ!


「んにゃ━━━っ!」


 ブレインマウスで


『どういうことにゃ?クロネ?』


 ロックピラーに立つクロネを地上から睨むオボロの目が鋭く光る!


 ━━!


 萎縮するクロネ!


(オボロ様が……怒っている!)


 ブレインマウスで経緯を、オボロの気分を逆撫でしないよう丁寧に説明するクロネ!


 ……


 グーメラ、トスクールの前を静かに通過し……アミュの元へ歩くオボロ……。


(雰囲気が少し違ってますね……)


 無意識にオーラを放出してるオボロに気付くトスクール……。


 コロコロ転がるアミュを手で押さえ……。

 横たわるミティーラ、まだ怯えているクルミを見て……オボロは


「もう我慢しなくて良い!」


 八本の脚が広がり立ち上がるアミュ。


「うぅ……ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!お兄ちゃんっ!」


 頭部を撫でオボロ


「ミティーラさんとクルミさん……助けたかったんだな!」


 牙をモゴモゴ不規則に動かしているアミュ……。


「きっと俺もそうする!偉いぞ!アミュ!」


 オボロを見上げ……牙の先端をカチカチと鳴らすアミュ!


「でも……アミュ……町の中で魔獣化しないって……約束……破った……」


 ……


「アミュ?約束ってのは……破るためにあるんだな……」


 アミュ「?」


 オボロ「だから……出来ない約束は……しない!」


 アミュ「?」


 オボロ「うーん……アミュにはまだ……難しいかな……」


 アミュ「うぅーん……」


 オボロ「今回は……俺が……お兄ちゃんが悪かった!クロネにも、アミュにも、無理をさせてさ!」


(もう本来の姿が知られてしまっては……覆せない!出入り禁止になったとしても……仕方ない)


 そんな覚悟をするオボロは、振り向きトスクールに状況を聞く。


 ……


「クロネさん、アミュちゃんのおかげで、被害は今のところ少ないですが……町の南門から離れた所に大きな巣がありまして……そこにスコットやヌイケンと数名の冒険者が奮闘してるかと……」


 説明してくれたトスクール。


 周りを見るオボロ……。


 上空にも、町の中にも……ちらほらまだエービーが残っているのがわかる……。


「アミュ!クロネ!残ったエービーを町の南門の方へ誘導して逃がすにゃ!……町の外で……駆除の続きにゃ!」


 オボロは背中の角錐を抜き号令を出す!


「承知しましたわ!」

「任せてっ!お兄ちゃんっ!」


 羽を、前脚を敬礼のように所作し行動に移すクロネ、アミュ!


 と、アミュが寄ってきて……


「お兄ちゃんはここっ!」


 前脚でオボロを掴み、自分の背中に立たせ、そのまま八本の脚を器用に動かし、エービーを追い出しにかかった!


(これは……アミュなりのお詫び……なのか?)


 背中に立つオボロはそんなことを考えいた。


 意識が朦朧する中ミティーラはクルミの膝枕で


「……アミュ……ちゃん……あり……がと……」


 か細く漏らす。


 トスクールに詰め寄るグーメラは


「おいっ!ありゃなんだよ?トス!お前知ってたのか?そんな平然としてさぁ!」


 ……


 黙るトスクール……。


 身体揺らし、答えを求めるグーメラ!


「……知ったのは……つい先日ですよ……私とギラクだけ……目の前に魔獣が二体ですよ?広い応接室が狭く思え……恐ろしくて身体が動きませんでしたよ……」


 身体を揺らすのをやめたグーメラ。


「あの二人には……何かあるなとは思ってたけど……まさかの魔獣、とはねぇ……」


 意外とあっさりしていたグーメラ。


 屋敷の二階の寝室からずっと見ていた町長ギラク


(まさかこのタイミングで魔獣化してしまうとは……町民達もおそらく見ているでしょう……騒ぎを治めるのに苦労しそうです……)


 南門付近━━


 エービーの巣がある所から離れた見通しの良い草原。町の壁の後ろからは、エービーの苦手な紫の煙がまだ立ち込めている。スコット、ヌイケン以下数名の冒険者は、町への侵入の阻止で苦戦していた!


 幅広の大剣を振り回しスコット


「飛んでるのは……もう無視だ!這いまわる奴から徹底的にだ!」


 声を荒げ指揮を取る!


 上を見ると……獲物を抱えたエービーが巣穴へ戻るのが確認出来た。野良猫、野犬、三つ目兎……身体の小さな麦食いまでも!


 ヌイケンが声を出す!


「おい!ありゃーこないだの依頼のじぃさんの家の犬じゃねーか?」


 エービーを薙ぎ払いながらスコット


「人の話聞かねえじぃさんだな!」


 ぐったりと首がうなだれ、エービーに運ばれる飼い犬……。


 スコットと背中合わせになるヌイケン


「お前の雑音歯(ざつおんは)でなんとかならねーのか?」


「あー無理だわ!試しちゃいるが……エービーには効果無し」


 歯をカチカチ鳴らし獣の苦手な音を発するスコットの雑音歯……虫系には今ひとつのようだ……。


(オボロさん達が……定期行商の護衛に行ってなければ……被害が抑えられたかも……)


 そんな想いが(よぎ)るスコット。


 と、後ろで奮闘してる冒険者数名が悲鳴をあげて向かってくる!


 振り返るスコット!


 這いずるエービー達がこちらへ行進して来る!


(挟み撃ちになるっ!)


 ━━!


 スコット達を素通りし……巣へ戻って行く雰囲気のエービー達!

 上を見ると……獲物を持たず巣へ帰還するエービー!


「ど、どういう事だ?」


 顔を合わせるスコットとヌイケン。


 先程の冒険者達が、さらに大きく悲鳴を上げ、町の方へ走り去ってしまった!


 残されたスコットとヌイケン……。


 カチャカチャ……カチャカチャ……


 バサバサッ……バサッ……


 ━━!


 二人は力が抜けたように尻もちをついた!


「ヌイケンさんよぉ……今日は厄日かい?」


「あぁ……間違い無い……厄日だスコットさんよぉ」


 大きな黒い鳥……

 異様な黒い蜘蛛……

 そしてその背には━━


「駆除の時間だにゃ!クロネ!アミュ!」


 角錐(つのきり)を振りかざすオボロが!


「ん?スコットとヌイケン!」


 尻もちをつきながらスコット


「いやぁオボロさんかぁ……」


「えーと……確認なんだけどぉ……そちらの大きな方々は?」


 前脚を上げて


「アミュだよっ!」


 羽先を嘴へ当て


「クロネですわ」


 ━━!


(おいおい!まじかよ?二人とも……魔獣?)


 立ち上がりたいが、震えて立てないスコットとヌイケン!


「いやぁ……ちょうど……オボロさん達が居てくれたらなぁって……考えてたとこだったのよ……」


 尻もちつきながら強がるスコット!


 アミュの背に乗るオボロは


「んにゃ!駆除は任せるにゃ!」


 と、言い残しそれぞれ散って、逃げるエービーや向かってくるエービーを駆除しにかかる!


 アミュのお腹が膨らみ……お尻から大きな巣が噴射された!


「捕縛網っ!」


 広範囲で巣に押さえつけられるエービー!


 上空でクロネは大きな魔法陣に小さな魔法陣を重ねていた!伸縮魔法陣と多重魔法陣の複合魔法陣!


(黒鳥の姿なら出来そうですわ!)


「スタビングレイン!」


 小さな魔法陣からエアカッター!大きな魔法陣からはアクアボール!エアカッターでアクアボールを撃ち抜き、弾丸の様な雨となり地面へ放たれた!

 巣に押さえられたエービーは穴だらけで息絶える!


(上手くできましたわ!……けれど魔力消費が過ぎますわ……)


 攻撃方法を仕方なく変えるクロネ。


 頭上に魔法陣を何層も重ねるアミュ!


「んんー!ロックゲイザー!たくさんっ!」


 多重魔法陣で岩のミサイルが何発も発射され、うろついているエービーを貫き、弾き飛ばす!


「クロネちゃんには負けないよっ!」


 角錐で突き刺し、薙ぎ払いながらオボロは


(なんだ?今までのストレス発散か?)


 魔獣化したクロネとアミュの戦う姿を目の当たりにするスコットとヌイケンは


「俺達……休んでてよくねーか?」


「巻き込まれて……本当の厄日になるな……」


 安全な場所へ二人肩を支え合い移動する……。


 オボロの前には……目の前の空間を埋め尽くすほどのエービーの群れ!


(たまには大技でも!)


 ザクッ!


 角錐を地面に突き刺し……

 両手にオーラを溜める!


「肉肉球球砲!」


 肉球の形をしたオーラが両手から放たれ、目の前のエービーを飲み込み……空へ消えて行った!


(うん!爽快爽快!)


 小さくガッツポーズするオボロ!


(オボロ様の久しぶりの大技!見事ですわ)


 うっとりしているクロネ。


 と、町の方へ飛んで行くエービーの塊を発見!結構な数……まだこちらには這いずるエービーや浮遊しているエービーも!


「アミュ!町の方へ行くわよ!」


 クロネが状況判断し、人型へ戻りエービーの塊を追う!


「わかったっ!クロネちゃん!」


 少し賢くなったかアミュも、クロネの真似をし人型に戻り……


「こっちの方が……良いよね?お兄ちゃん?」


 わざわざ目の前にまで来てアピールするアミュにオボロは


「あぁ!その方がずっと良い!」


 笑顔で見送ってあげた。

 なんだか嬉しそうに町へ向うアミュ。


 残ったエービーを、角錐で薙ぎ倒し、裂空爪で切り裂いて行く。


 ブブブブゥゥ……


 ブブゥゥ……ブブブゥゥ……


 先の方で低音の羽音が!


 ━━!


 さっきまで戦っていたエービーの倍以上の大きさのエービーが数体向かって来る!


(リーダーか?いや……親?)


 スコットが大声を出した!


「オボロさーん!そのデカイのがキャプテンエービーだ!」


「わかったにゃ!スコット!」


 気を引き締めて構え直すオボロ!


 丸まった尻尾を伸ばし……扇のように広がる尾鰭を前へ振り出し、数本の針を飛ばす!


 避けるオボロ!


(ただ図体がでかいだけって訳ではなさそうにゃ!)


 ……


 ……♪♪


 ━━♪♪♪


 後方から鼻唄が聞こえた!


 ━━!


 何者かが目に追えないくらい速く通過し━━


 キャプテンエービーを鮮やかに真横に斬った!


 ━━スン!……ドサッ……ドサッ……


 ずれ落ちるように二つに分断されるキャプテンエービー!切り口は真っ平らで、ブレが無い!


 ━━カチン!


「直刀式武術……抜刀刃」


 と、小さな声でつぶやき、背を向けたまま


「そこの若い獣人さん……勝手ながら助太刀しますぞ」


 白髪混じりの長い髪を後ろで一つに結った初老の男性が立っていた!


       【能力】

 ・オボロ

 肉肉球球砲


 ・クロネ

 スタビングレイン(魔法)



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