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第5幕〜武器納品と予兆

 

 町長ギラクの武器大量購入の許可証をもらい、疑惑も晴れ、心のモヤモヤが晴れたオボロとクロネはスッキリした顔で屋敷を出て行く……二人の後を駆け足で追い掛けるアミュ。


 応接室の窓からオボロ達の姿が見えなくなるのを確認したギラクとトスクールは……安堵感と開放感から、深く長いため息を吐き出す!


「お身体は大丈夫です?」


 声を掛けるトスクール。


「なんとか、な」


 とは答えるが、膝は震えていたギラク。


「ギルドとしては……以前申し上げていたように討伐依頼を中心に案内しようかと考えてます」


 トスクールは伝え、ギラクは同意する。


「問題は町民達だな……」


 ポツリと言うギラク……。


 ソファーに座りテーブルに両肘を置きトスクール


「ここ数日ではありますが……警戒せず話かけている者も……少ないですが居ます」


 テーブルに置かれたクロネの黒い羽を触りながらギラク


「それは良い傾向ですな……」


「まずはギルド関係で皆の警戒を解いて行きましょう!私の権限も使ってでも!」


 意気込みを伝えるトスクール。


「町民の方は……私が出来るだけ……擁護しましょう」


 ━━武器屋


 カチャリ━━


 余裕なのか背筋を伸ばし堂々と店内へ進むオボロは、店主に許可証を見せた。確認する店主はカウンターから小走りに店内へ行き、にこやかに対応し始めた。


 店内の武器、防具を手に取り眺め品定めをするオボロ……。


 ロングソード、短剣、槍、革製の胸当て、木製の丸い盾、木製の剣をそれぞれ十個購入する事にし、さらにザザ村の定期行商の時に送って欲しいことも伝えた。店主は送る事は可能だが運賃は別に貰う事を伝えた。

 オボロは店主に……畑作業や木を削ったり切ったりする道具はどこで売ってるか尋ねた。それなら、町で一番大きい雑貨屋なら揃うでしょうと教えてくれた。詳しく聞けば以前本を購入した雑貨屋だった。

 武器屋の店主に挨拶をし雑貨屋へ。

 店前の品物から順にじっくり見て行くオボロ……。後ろを付いて歩くクロネは


(オボロ様……いつになく真剣な眼差しですわ!それに……楽しそうなお顔)


 アミュはオボロの隣で


「これなぁに?あっ!これなんか面白い形してるっ!」


 返事を待たず独り言のようにオボロに話しかけている。


(とりあえず畑作業や建築するのに必要そうな道具の新調が良いよな!)


 近くの店員に許可証を一応見せ、購入の案内と手伝いをしてもらう。


 鍬、鎌、鋸、木槌、金槌、釘、鉄ヤスリ、色んな太さのロープなど買い占めるくらい購入し、それとは別にメル達ようにも購入した。店員に定期行商の時に送ってもらう事を伝え……代金を支払う。


 雑貨屋を出て、気持ち良く背伸びをするオボロ!


「んんー!なんとかなったかな!付き合わせちゃってごめんね」


 首を横に振るクロネ、アミュ。


 ギルド━━


 中へ入ると……グレードD冒険者スコット、受付のミティーラ、他数名冒険者がいた。

 ミティーラはアミュを発見し笑顔で小さく手を振る。アミュも跳ねて両手を振り返す。なんとも微笑ましい光景。

 スコットがやたら長老の手紙の内容を聞いてくるので、敵意は全く無いと言う内容だと説明し、スコットは不満そうな表情ではあったが、なんとか納得させたオボロ。


(トスクールと町長に聞いても似たような返答なんだが━━他に何か書いてあったんじゃないのか?二人の行動と表情がなんか怪しいんだよな……)


 腕を組み、何か思うところがあったスコット……。


 カツッカツッカツッ!


 かぎ爪を鳴らしクロネがスコットの前へ━━


 少し引くスコット!


「ちょっとよろしいかしら?スコットさん?」


「は、はいっ!」


 驚きながらも返事するスコット。

 羽扇子を広げ下半分の顔を隠しクロネ


「その……先日は御無礼を働きまして……申し訳ありませんでしたわ……」


 カウンターにもたれてスコット


「いやいやクロネさん!俺の方こそ、何も考えず発言しちゃってすまないと思ってる!」


 ……


「そうね……しばらくこの町にお世話になりますので、誤解が無いよう務めますわ」


 広げた羽扇子を畳み、細目のクロネは目を大きくし、精一杯の優しさで話す。

 それに対しスコットも笑顔で答えてくれた。


(とりあえずこの方に謝れたから……問題無いですわね)


 と、トスクールが部屋のドアを開けオボロ達を手招きする。それに気付き部屋へ赴く。


 テーブルに紅茶やアミュの好きそうなお菓子を用意しながらトスクールは


「武器購入の方は順調ですか?何かお手伝いあれば言って下さい」


 海神効果だろうか……接待されてるように感じてしまうオボロ。


「許可証の効果のおかげで、購入の方は済みました!ありがとうございます!」


 微笑みながら頷くトスクール


「それで、次のザザ村の定期行商に乗せて運んでもらうよう手配したのですが……問題無いですか?」


 確認で聞いてみたオボロ。

 ソファーに座りトスクール。


「送料さえ払っていただければ問題ありませんよ。……どうでしょう?ついでにその行商の護衛の依頼、してみませんか?周囲の獣も駆除して、慣れ親しんだザザ村へ顔を出すのも良いかと思います」


 やたら饒舌なトスクール。

 確かにクロネとアミュは一泊滞在してたようだし……少し変わり始めた村の様子も気になるし、長老にも直接お礼を言いたい!


「ギルドの方が良ければ是非お願いしたいです!」


 結論を伝えるオボロ。

 トスクールは行商の準備や手続きが出来たら依頼書を渡すのでそれまでは他の依頼でもと、やたら駆除依頼を勧めるトスクールだった。


 数日後━━


 ようやく、定期行商の護衛の依頼の日が来た!久しぶりの再開にちょっぴり嬉しいオボロ。


 ギルド前に大きなトカゲが荷車を引いて現れた!見送りのためその場に居たスコットが、あれは『アースランナー』脚力もスタミナもある大トカゲ!温厚で草食なため人間にとっては、共存しあえる獣だと。アースランナーがオボロ達に近づかない!獣の本能なのか……怯えている……。オボロはゆっくり近づき頭を撫で……


「ごめんね……怖がらなくて良いんだよ!」


 伝わったか微妙だが……怯えなくなった。


 今回の当番は雑貨屋の店主だった。町の商売人とギルドの協力のもと持ち回りで行っている。

 見送りのスコットに手を振り町の外へ。


 スーデルの町・郊外━━


 門番に挨拶し少し移動し、店主に道の確認をするオボロは、クロネとアミュに説明し先の安全確保をお願いした。護衛がオボロだけになり少し不安そうな店主……。


「大丈夫にゃ!先の危険そうな獣を追い払ってもらってる」


 アースランナーも多少は警戒心があるようで、危険と感じれば動きが止まる。しかし、そんな事はなくアースランナーが荷車を引く速度は変わらない。


(店主には……あー言ったが……本当は二人の狩りと捕食なんて言えないよ)


 しばらく進みクロネ、アミュと合流し、頃合いを見て先の安全確保……。オボロだけの時は五感オーラを発揮し、二人が取り逃がしたであろう獣を角錐で追い払う……。その繰り返しで進む。適度にアースランナーも休ませながら。

 道中店主と他愛ない話や、スーデルの町のこと、どういう生活を人間が送っているのかとかを聞いたり、教えてもらったオボロ。店主からも色々質問されたが……どれもこれも本当の事を言ったら危険なので、濁しながら答えてしまう。


 陽が落ち始めた……。

 店主が初日でここまで進んだことは今まで無いと、驚いて話してくれた。

 持参した簡単な食事をし、夜を明かす。夜中はオボロとクロネが交代で警戒にあたる。より安全を考えるなら、アミュの巣がベストなのだが……さすがに知らない人間には、それは出来なかった。


 明朝━━


 道順や方向を確認し、クロネとアミュで先の安全確保と言うなの狩り。オボロは荷車に乗ってる店主の隣で警戒しながら進む。


 ザザ村に近くになるにつれ、やはり気になるのは……悪路!

 舗装も整備もされていない、ゴツゴツした地面を、壊れそうな荷車で進む……。乗ってる店主もお尻と腰が痛そうな感じ……。


(ダリルとグリナ達に、頑張ってもらわないとな……)


 オボロは可能な限り地面の整備をグリナ達にお願いしていた。地面が整備されれば定期行商も多少は楽になると考えたから。


 ザザ村━━


 町を出発し三日目の昼頃に到着した定期行商人とオボロ達!


 オボロは村の入口を見て感動していた!

 村周辺の雑木林の伐採と整備!

 立派な太い丸太で出来た柵!

 高く遠くも見渡せる見張り台!

 大きく丈夫そうな両開きの門!


(いやぁ!本当に……グリナ達に色々教えた甲斐があったぁ!これなら安心だな)


 マーマン達に歓迎されてるオボロやクロネ、アミュを見て店主は、信じられない光景でも見ているかのように驚いていた!


(この村の出身と聞いてはいたが……こんなに歓迎されるものか?)


 そんな疑問を抱きつつ、中央の大木の前に荷車を置き行商を始める店主。


 早速オボロは自分で購入した武器や道具を集会所へ運び、皆に見せた。グリナとルーベは新しい道具に喜び、ダリルは武器、防具に喜ぶ。


「アニキィ!これなら狩り部隊も助かるぜ!ぐすっぐすっ」


 と、感動したのか涙ぐむダリル。


「新しいのは……やはり使いやすそうですな!」


「このナイフは便利そうですよ!」


 大工のグリナ、雑貨屋のルーベも感想を言い合っている。


(うんうん!喜んでくれて何よりだ)


 腕を組み見届けるオボロ。

 クロネは、漁船を待つと言い海岸へ飛んで行く。アミュは相変わらず、小猿やマーマンの子供らに呼ばれ遊ぶ。


 いつもの長椅子に座り村内を眺めている長老の隣に座るオボロ。


「長老……その……色々としていただき感謝しております!」


 真っ直ぐ前を向き長老


「なぁに、ちょっと脅かしてみただけぞえ……」


「手紙にあんな仕掛けがあったとは……さすがです」


「老人の……戯れ、ぞえ?」


 オボロの方へ向き、ニコリと笑った。

 その笑みの奥に海神としての怒りがあったと思うと……オボロの尻尾の毛が……根元から先端へ瞬く間に膨らんでしまった。


 セリーヌの工房━━


 培養液の中の水色の魔石を凝視しているセリーヌ。


(さて、これに賭けるしか無いさね……)


 持っているのは……オボロから採取した血の小瓶と数本の口髭。


 小瓶の栓を抜き……数滴垂らしてみる……。

 透明な培養液にオボロの赤い血が広がりながら底へ沈む……。

 向こうの壁が見えるくらい薄ピンクの培養液……。

 魔力を注ぎ様子を見るセリーヌ……。


(とりあえず魔力注げばなんとかなるか?)


 ……


 水色の魔石が微かに振動し━━


 培養液に広がる血を吸い始めた!


 ━━!


「これはっ?」


 思わず声を出すセリーヌ!


(この魔石……オボロちゃんの血にも反応したさね!)


 研究者として興奮するセリーヌ!


 血を数滴垂らし、魔力を注ぐ……その繰り返しを数時間おきに行う。


 頬を撫でるセリーヌ……


(少し……やつれたさね……)


 ホムンクルスが用意してくれていた冷めた食事をお酒で流し込むセリーヌ……。


 オボロの血の小瓶の中身があと僅か……。


 口髭を一本取り


(これも試してみるさね!)


 生成基の蓋を開け……口髭を水面に置く……。


 毛根が下がり……真っ直ぐ底へ沈み……水色の魔石の上に……。


 コトコトコトコトコトッ!


 揺れ動く水色の魔石!


 両手を生成基に当て……魔力を注ぐ━━


 振動する水色の魔石!


 ━━!


 口髭が水色の魔石に吸われるように溶けて行った!


「吸った?吸い込まれたさね?」


 コロッコロッ……コロコロ……


 培養液の底で、動く水色の魔石。



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