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第5幕〜依頼と狩り方

 

 毎日、麦食い駆除の依頼をこなすオボロ達。他の冒険者より効率良くこなすせいか、それなりに稼ぎも良いが、スコットをはじめベテラン勢からしてみたら……依頼を横取りしてると思われていても仕方ないとも感じていたオボロ。

 ギルドロビーに居たスコットにそれとなく、同じ依頼ばかり受けて申し訳無いと伝えた。


 ……


 スコットはしばらく間を置き


「オボロさん!冒険者は実力と経験さ!俺個人で言わせてもらうなら……感謝してるぜ?まだ麦食いが湧き出る時期だからよ!周りは気にせず活動しても良いと思うぜ」


 と、にこやかに話し続ける


「んー……まぁ、何かあったら……俺がなんとかすっからよ……」


 少し照れながら伝える。


 スコットの言葉に、目を丸くするするオボロ。本心はどうだか不明だが、スコットには悪くは思われて無さそうと判断し


「ベテランのスコットさんが……そう言うなら……気にしないようにしますよ」


 スコットは数回頷き


「……なんか……さん付けは……気持ち悪いんで……スコット、でかまわないぜ?」


 ここも照れ臭そうに話すスコット。


「おっと!俺は……敬意も込めて……さん付けで呼びますからね、オボロさん!」


 と、照れ笑いなスコット。


 依頼ボードへ向うオボロ……。

 ひと通り眺めていると……。


 三つ目兎の捕獲の依頼を見つけた!


(これなら!グレードもGだし可能だ)


 クロネとアミュに、たまには違うのにしようと提案。


「そうですね……あのラッパ状の口には……見飽きましたわ」


「アミュ走ってばっかりだよぉ……」


(良く我慢して付いてきてくれてるな……)


「そう……だよね……ありがとう!クロネもアミュも!嫌だったり疲れたら宿屋で休んでてもかまわないよ」


 と、感謝と気遣いをするオボロ。


 二人とも首を横に振り、意欲を見せてくれた。


 スーデルの町・近辺の草原━━


 穏やかな風が通り抜け、足首ほどの高さの草が揺れる。見通しも良く岩が乱立していた。

 今回の依頼は生け捕りもしくは気絶状態が達成条件なため、今までのように切り裂いたり細切れはNG。そこを二人には伝え、クロネは上空から見つけ次第対処してもらうことに。


「理解はしましたわ!これで仕留めます」


 と、指の間に自分の黒い羽を挟み飛び立った。


 撚糸輪(ねんしりん)を持つアミュにオボロは


「今日はねアミュ?それで仕留めてはいけないんだ。そうだな……魔法使おうか!ロックゲイザーを兎に当てて倒してみよう」


 説明し納得させるのも一苦労なオボロ……。アミュは不満そうに口を尖らせていた……。


 と、近くに三つ目兎が立ち止まっていた!


 アミュの隣に行き子声で


「ほらアミュ……兎に魔法当ててみようか!小さな魔法陣で!」


 とりあえず言われた通りしてみるアミュ……。


 小さめな魔法陣を出し、兎を狙いロックゲイザーを放つ!


 ━━ドスッ!


 三つ目兎の額に見事当たり、小さなうめき声を上げ、パタリと横へ倒れた!


「良し!出来たな!アミュ!凄いぞ!」


 にかぁと、笑みを溢し嬉しそうなアミュ。


「あの兎さんを、魔法当てて倒して行けば良いの?お兄ちゃんっ?」


「さすがアミュ!頭良いなぁ!そう!見つけて……魔法だ!」


 やる気が出た様子のアミュは周りをキョロキョロし三つ目兎を探しに行った!


 どっと気疲れしたオボロ……。


(捕食しか知らないアミュを慣れさせるのは……まだまだかな……)


 クロネは空をゆったりと旋回し、三つ目兎を見つけては死角から羽釘弾(うていだん)で仕留めていた。アミュは慣れたのか……サバイバルゲームのように岩に隠れ、草むらに這いつくばり、さらには五つの並列魔法陣のロックゲイザーで仕留め喜んでいた。

 そこかしこに転がる三つ目兎の回収はオボロの役目……。


 町から昼の鐘が聞こえたので、ギルドへ戻る事に。


 戻る途中にアミュに楽しかったかと問いかけて見たところ……捕食出来なかったのは残念だけど……楽しかったと答えてくれた。その回答にやはり捕食が基本なんだなと思い知らされたオボロとクロネ。


 依頼主は以前三つ目兎の串焼きを大量購入した露店の店主である。荷車の布を半分開け状態を確認してもらう。あまりの量に驚いた店主ではあるが、全部を買い取り売るには多すぎるため、数日ぶんだけ購入すると約束してくれた。残りはギルドに買い取ってもらうのが良いとも教えてくれた。依頼書にサインをもらいギルド裏へ荷車を運び入れ、ミティーラに確認してもらった。


 ……


「ほんとさぁー頑張り過ぎよねぇオボロさん達ぃ」


 だるそうに言ってはいるが、それなりの成果に満足気なミティーラ。


(いや、普通にしているが……)


 と、思うオボロだが、人間の冒険者が数名でも短時間で大量は厳しい事は、スコットやトスクールの話を聞く限り理解はしていた。


「……三人で協力してるからねぇー」


 と、愛想笑いで返すオボロ。


 依頼ボードで目ぼしいのを探すオボロ……。クロネが隅にある一枚を指差した。


「フォリッドウルフ駆除」


 の依頼書だった。内容を確認し迷わず依頼書を取り、爪掃除しているミティーラへ渡す。


 ……


 チラチラ三人を見るミティーラは、依頼書に判子を付きバインダーに挟み手渡す━━手が中々離してくれない!


 ミティーラとオボロのバインダーの取り合い!


 オボロの目をじっと見つめミティーラ


「この依頼……」


 唾を飲み込むオボロ……


「終わったら……」


 両者遺恨は無いが睨み合っている……。


「明日は休んで下さい!」


 と、パッとバインダーを手放すミティーラ!その反動で後ろへよろめくオボロ!


(もっと違う事言われるかと思った……)


「そ、そうですよね!たまには休まないとねぇー」


(いや、確かにそうだ!職人だって基本週休二日だ!)


 ミティーラに言われ気付かされたオボロ!


 新たな荷車を借り、現場へ向うオボロ達。


 依頼現場━━


 お昼はD=D(ディメンション=ドア)に十体三つ目兎の死骸を保管したのを一体ホノカに丸焼きにしてもらい、物陰で食べた。残りは……クロネとアミュが魔獣化し生のままペロリとたいらげた。


 小高く高低差もある丘……大小の岩が連なる部分もあり、獣が身を潜めるのにちょうど良さそう……。依頼内容はここ一帯に生息してるフォリッドウルフの個体数の減少である。クロネとアミュにはある程度残しておくよう伝え各々駆除する事にした。


 クロネは飛べる事を利用し、上空で睨みを効かせオボロ達に居場所を教えつつ自らも駆除。アミュはちょこちょこ動き周り、八つの単眼も使い見つけては駆除。オボロはアミュを監視しつつ駆除やサポート。


 基本獲物を見つけては直線的に突進してくるだけのフォリッドウルフ……。避けるのも倒すのも……容易い。


 角錐(つのきり)で駆除しつつ二人を観察するオボロ……。


 クロネは羽扇子を使い鮮やかに羽扇刀(うせんとう)で斬り、エアカッターでも斬る。アミュは接近し撚糸輪でスパスパ斬り、魔操撚糸を絡ませ動きを封じ、ロックゲイザーで仕留めたり……。


(ん?いつもより派手さがないなぁ……二人とも)


 色々な狩り方を身に着けてくれたのかと思うほどに。


 見渡すと……それなりに倒れているフォリッドウルフ。一旦集め証拠部分を回収する事に……。突出した額もしくは片耳……。おそらく硬い額の方が喜ばれると考え額部分を回収する事に……。


 クロネが死骸を集め、オボロの爪、アミュの撚糸輪で突出した硬い額を切ろうとするが……硬い!硬すぎる!

 苦戦してるところに、メルがD=Dから出てきて、その子の額は頭蓋骨と一体化してて硬い骨ごとじゃないと無理よとアドバイスしてくれた。


(え?そんなんじゃ……人間には無理じゃね?ギルドはフォリッドウルフの身体構造理解してないのでは?)


 などと感じてしまうオボロ。


 仕方なく首から切り落とし、かさばるが頭部を持ち帰ることにした。


 クロネが周囲を見て戻って来た。


「来た時よりはだいぶ減ったと思いますわ!オボロ様」


「それなら、十分だな!早いけどのんびり戻ろうか!」


 残ったフォリッドウルフの死骸は数体D=Dへ回収し、残りはホノカのファイアブレスで灰にさせたことは言うまでもない……。


 戻り道━━


 荷車を引くオボロの顔を覗き込むようにアミュが来た。


「ねぇねぇ……お兄ちゃんっ?アミュ、今日も……ちゃんと出来た?」


 どことなく不安そうな表情。


(アミュなりに……頑張って理解しようとしてたのかな?)


「おぉ!しっかり出来てたぞ!俺やクロネの説明も真面目に聞いてたもんな!」


 褒める時は確実に褒めるオボロ。


 口が裂け……ニョキッと牙を出しカチカチ鳴らし喜ぶアミュは、つま先でくるりくるりと回りながら先へ進んで行く。


「なぁクロネ?さすがにあの牙を出して喜ぶのは……制止出来ないよな?」


 以前から思っていた事を口にするオボロ。


 クスっと笑いクロネ


「ええ、アミュが自覚しない限り……無理でしょうね!私はあの笑い方は可愛らしいと思いますわよ」


(んー俺も可愛らしいとは思うが……人間からしてみたら……怖がられるよな……)


 ギルド━━


 荷車を裏手へ回し、ミティーラの所へ。この依頼はギルドからの依頼であった。証拠部分の額は硬く切り取れなかったので、頭部に勝手に変更した事も伝えた。


 ……


 吐きそうな顔をして現れたミティーラがカウンターへ戻って来た……。


「こうも毎回、毎日、証拠部分見てると……胸焼けとかさぁ吐き気が来るのよねぇ……」


 愚痴を溢されてしまった。


(それが仕事では?)


 と、言いそうになったが……グッと堪えたオボロ。


 ギルドパスを提出するオボロ達。クロネとアミュのを済ませ、最後にオボロのを完了登録したミティーラ。


 またもチラチラ三人を見る。


 オボロにギルドパスを手渡しするミティーラは指を離さない!


(今度は何だ?)


 ギルドパスを中々返してくれないミティーラ!

 少し前と似たような光景……。


 オボロ「んにゃにゃにゃ!」


 返してもらいたいオボロ!


 両者、本日二度目の睨み合い!


「スコットからの伝言よ」


(な、なんだろ?)


「明日、昼の鐘がなる頃に……ギルド前に集合」


 と、言い終え、パッとギルドパスを放すミティーラ!

 またもバランスを崩し、よろめくオボロ!


「ちゃーんと伝えたからねぇ?忘れないでねぇ?」


 ━━!


 何となく察したオボロ。


(おそらくスコットがミティーラさんに、何か根回しでもしたんだろ?それなら合点がいくな)




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