第5幕〜麦食い駆除と大物
アミュのお気に入りリュックに好物の麦を仕込ませ、雑木林へ潜入させ麦食いをおびき出す作戦……。
しばらくアミュを待つ……
……
━━!
オボロの耳がアミュを捉えた!構えるオボロとクロネ!
お尻からの糸、指先からの魔操撚糸を使い枝から枝……地面から枝……と、追ってくる麦食いを上手に避けながら、向かってくる!
「連ーれーてー来たよっ!」
十数体連れ来たアミュ!
麦食いが雑木林から出て来た所を……
オボロ「角錐!」
クロネ「羽扇刀」
アミュ「撚糸輪っ!」
あっさり倒して行く……。
散らばった死骸から、ラッパ状の口を取るオボロ。それを荷車へ放り込んで行くクロネとアミュ。
アミュ囮作戦を繰り返すこと数回……。荷車には山積みされた麦食いのラッパ状の口……。
一度ギルドへ運ぶ事に。
アミュが言うには……まだ奥に潜んでいると教えてくれた。
山積みの荷車を見て驚く門番達……。ギルドまで運ぶのにすれ違う人間も驚いていた。
ギルド前━━
中に居たスコットを呼び出すオボロ。
━━!
山積みの荷車を見るスコット
「こりゃ驚いた!半日でこんなにも!素晴らしいよ!オボロさん!降ろすのは俺達でやるから、代わりの荷車持ってくるぜ」
(どういうやり方したら、この短時間であれだけを!)
悔しくも……依頼が達成出来そうでちょっぴり嬉しいスコット……。
ギルド前には山積みの荷車を見物しに人が集まる……。称賛する人、山積みの残骸が気持ち悪いと言う人、誰が駆除したのか話し合う人々……様々な声が飛び交う……。
ギルド前で荷車から少し距離を取り、こじんまりと三人でまとまっていたオボロ達……。
と、スコットが威勢良く人だかりを退かすように荷車を引っ張って来た!
それを引き継ぎ……空の荷車を引きギルドを後にするオボロ達。
オボロ達が見えなくなってから……ちょっとした町の話題の中心になっていた事はオボロ達は知らなかった……。
スコットは身体の痛みを気にしつつ、山積みの荷車をギルド裏へ運び、麦食いの残骸を確認した。
再び雑木林━━
ガラガラと荷車を引き到着。
途中不要な麦を譲ってもらい、アミュのリュックに足すオボロ。
「ではアミュよ!再び任務を言い渡す!」
ビシッとなるアミュ!
「さらに奥地へ趣き、獲物をおびき寄せよ!」
「はいっ!行ってきます!お兄ちゃんっ!」
小走りに雑木林へ消えて行くアミュ……。
と、クロネが……
「あの……オボロ様?よろしいので?アミュは面白がっているようですが……仕事、ですよね?」
顎に手を当てオボロ
「んーアミュにしてみたら遊びの延長からって思ってさ……ちょっと思い付きで試してみた!」
「はぁ……なるほど……」
(オボロ様なりの考えなのですね)
しぶしぶ納得するクロネ。
……
と、アミュが先程と同様に麦食いを避けながらこちらへ向かって来る!数は……二十体ほど!
アミュとすれ違いざまに角錐で麦食いを薙ぎ払う!
飛びかかる麦食いを剛翼打でふっ飛ばすクロネ!
アミュは振り返りながら魔操撚糸・糸鋸で斬り裂く!
残りもそれぞれ薙ぎ払い、斬り裂く!
……ラッパ状の口を切り取るのは……オボロの役目に自然となっていた……。荷車へ放り込むクロネとアミュ。
少し休憩し、再度アミュを雑木林へ送る。
クロネがオボロの横に来て……
「少し失礼しますわ……オボロ様」
と、オボロの胸元に収まるくらいのクロネの設置魔法陣が展開された!
━━おっ?
「少し試したいので……ご協力を……何か不都合ありましたら教えていただけますか?」
(あれ?これだと……俺が魔法放つみたいじゃん?)
少し嬉しくなるオボロは、無条件で受け入れた!
……
オボロの耳がピクリと反応した!
アミュが避けながら少し遠くの雑木林から抜け出てきた!
そこへ走るオボロ、低空飛行のクロネ!
相変わらず単調な攻撃の麦食い達……。ラッパ状の口から麦の殻を放つが……所詮は殻……痛くも痒くも無い……。
振り向きざまにアミュが五つの並列魔法陣でロックゲイザーをお見舞する!クロネは低空飛行のまま羽扇刀で斬りつけ横切る!そして走るオボロの魔法陣から━━!
「アクアボール」
クロネが唱え放たれた!
オボロの胸から放たれたアクアボールは見事麦食いに辺り気絶!
(おお!間接的だが魔法が!)
ニヤつくオボロに、木の上にいた二体の麦食いが襲ってくる!
━━!
角錐を下から垂直にすくい上げ━━
グジャッ!グジャグジャッ!
角錐で二体串刺しにしたオボロ!
それを見たアミュはニョキッと牙を剥き出しにし……
「あはっ!お兄ちゃん上手!串刺しっ!串刺しっ!」
捕食センサーが反応した……。
そして口を切り取る作業へ……。淡々とこなすオボロ。流れ作業的に荷車へ運ばれる切り取られた麦食いの口……。
何ヶ所かに別けられた口の無い麦食いの死骸の山……。
(とりあえずこの死骸は……ホノカに丸焼きにでもしてもらうかな)
━━!
と、まだ明るいはずの空が突然暗くなった!
ヒューン!バサッバサッバサッ!
オボロ達の真上を何かが通り過ぎた!
クロネの顔が険しくなり
「しつこいですわね……」
と、漏らす。
影が小さくなり、クロネの方を向くオボロ━━!
と、アミュが居ない!
……
「お兄ちゃーん!クロネちゃーん!アミュここだよー!」
上から微かにアミュの声が!
大きな鳥のかぎ爪にガッチリ捕まえられたアミュ!
「説明は後でしますわ!オボロ様!」
と、言いながら脚のバネも利用し上空へ一気に飛ぶクロネ!
(全くやたらと視線と威圧を感じると思ったら……)
空中戦ではまるで役に立たないオボロは……見守るのみ……。何かあの鳥……見た事あるなと感じたオボロ。
(セリーヌさんの工房へ行く途中の山登った時の首長コンドルに似てるな……)
大きな羽を広げ速度を上げ、アミュを連れ去ろうとしている首長コンドル!
━━追うクロネ!
長い首をひねり口を開け威嚇とともに魔法陣からファイアボールが放たれた!
ヒラリと避けながら追うクロネ!
(セリーヌの魔法に比べたら……お子様ですわね)
クロネは大きめな魔法陣からアクアボールを放つ!
━━が、急上昇しクロネの後方へ移動した!
目がくらくらしているアミュ!
大きな羽を羽ばたかせ、突風を放つ首長コンドル!
クロネは同じくらいの闇巻きで相殺させた!
またも大口を開け
「キッキェェェッ!」
甲高い奇声を発する首長コンドル!
その声で、くらくらしていたアミュが正気を戻す。それを見ていたクロネは
『アミュ?両手使えるなら……あの糸で羽を刈り取って欲しいの!』
ブレインマウスで伝えるクロネ!
肩をくるんくるん回すアミュ!
『うん!任せて!クロネちゃん!』
同じくブレインマウスで伝えた。
首長コンドルとクロネが睨み合う……。
「魔操撚糸・糸鋸っ!」
両手をくるんくるん回し、首長コンドルの両翼を四分割に切り裂いた!
「グキャッ!キキキ……ギャッ!」
翼を失った首長コンドルはそのまま落下し、力が抜けたかぎ爪からアミュが放り出された!
━━ヒュン!
優しく抱きかかえアミュを救出したクロネは━━
「すいませんオボロ様!息の根を!」
いきなり振られたオボロは戸惑いつつも
(あの長い首切断すれば大丈夫かなぁ)
落下地点へ急ぐオボロ!
タイミングを合わせ━━
飛び上がり━━
「裂空爪・襷!」
バツの字に重なったオーラが長い首を切断した!
ほぼ同時に地面にオボロと首長コンドルの死骸!
舌を口からべろりと出し、まだ少し痙攣したかのように震えていた!
首長コンドルとの戦闘を畑仕事の休憩中に、遠目ではあるがたまたま見ていいた人間達がいた。
クロネがアミュを抱えて舞い降りた。心配そうに駆け寄るオボロは二人を同時に抱きしめた!
「良かった……無事で……」
突然のハグに動揺するクロネ!
アミュは何がなんだが、途中までわからなかったらしい。
さて残った死骸達……。
D=Dを荷車で隠すように出しメル、ホノカを呼ぶ。
メルが死骸を観察し……麦食い数体と、首長コンドルの死骸を要求した。死骸をせっせとD=Dへ放り込むオボロ達……。
クロネとアミュが食べるぶんだけ残し……あとはホノカのファイアブレスで灰にしてもらうことに!
「よーし出番だ!ホノカ!」
死骸をビシッと指差すオボロ!
「おーし!任せろマスター!」
大きく息を吸い込み……
思いっきり炎のブレスを吐くホノカ!気分爽快な顔をする!相変わらず派手なファイアブレスと感じるオボロ。
ぱちぱち、バチバチと音を鳴らし煙を立ち昇らせ燃える死骸……。
その間クロネとアミュは隠れて魔獣化し、食事をさせた。
燃え盛る死骸の火を見つめるオボロ……。
隣に口から煙を漏らすホノカ。
「いやぁ……悪いなホノカ……なんか後始末みたなことばかりでさ」
「ぜーんぜん!炎吐いてスッキリだぜ?マスター!」
話す口からは未だ煙が漏れるホノカ。
人型で戻って来たクロネ、アミュ。
オボロの前に座るクロネ
「あの首長コンドルは……セリーヌの所で私が倒した首長コンドルの親鳥です……」
説明し始めたクロネ。
「セリーヌの工房にいる時から、視線や威圧を感じてましたの……」
(し、知らなかった)
「工房はセリーヌの結界があったから、時折私が威圧すれば去ってたのですが……町に来てからは……やたらと威圧してきてて」
……
「もしかして……俺に心配かけまいと……話さなかった?」
今までのクロネとの生活から導き出されたオボロの問いかけにクロネは、驚かされ━━
「えぇ、オボロ様の仰る通りですわ……。一人で何とかしようとした結果が……これです……」
落胆するクロネは両手で顔を覆い下を向いてしまう。
アミュがクロネの羽を優しく撫でていた……。
クロネの素直さが少し出てきたと感じたオボロ━━
「結果オーライだ!町や人間に被害が無かったんだ!落ち込む事は無い!」
小さくガッツポーズを取り、空をじっと見上げるオボロ。
その励ましに勇気付けられたクロネは両手を膝の上に置き、オボロを見上げる。
(オボロ様の……優しい気遣い……改めて惚れてしまいますわ)
「ありがとうございます……オボロ様……」
頬を赤く染め……目から涙が一筋流れ落ちたクロネの表情は……目元が落ち、口元が柔らかく……普段見ることの無い、とても優しそうで別人のようであった!
凄く良い事を言ったと満足なオボロは……ずっと空を見上げたままで、クロネの素直な表情は見ていなかった。
間の悪い男・オボロ……。
【戦歴】
オボロ・クロネ・アミュ
VS 首長コンドルの親鳥
クロネの素早い追跡
アミュの魔操撚糸・糸鋸による両翼切断
オボロの裂空爪・襷の連携により勝利




