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第5幕〜ギルドデビュー

 

『メル銀行』が設立され一夜明けオボロはメルと何やら交渉している……。

 ベッドに正座し、拝み倒しているオボロ……。

 両手を腰に当て両足を多めに開き、オボロよりも上に浮かぶメル!


 その光景を残念そうに見ているクロネ。


(あんな低姿勢なオボロ様は……珍しいですわ……)


 アミュはオボロの隣で何故か真似をしている……。


(アミュ?それは真似しなくても良いと思うわ……)


 そこも残念そうに見てしまうクロネ。


 どうやら話はまとまったようで、銀貨を十枚を勝ち取ったオボロは、ペコペコ頭を何度も下げD=D(ディメンション=ドア)へ戻るメルを見送る……。自分のお金とは言え……闇金からでもお金を借りたかのような気持ちのオボロ……。


 と、オボロは銀貨一枚ずつクロネとアミュへ渡す。それをギルドパスに入れておいてと指示したオボロ。言われた通りギルドパスを出し、左下へ投入した二人。


「クロネとアミュのお小遣い!少ないかも知れないけど……自由に使って欲しいのと、何かあった時に使って欲しい」


 と、説明したオボロ。

 何かあった時とは━━

 トラブルで一人になってしまった時にお金があれば何とかなるから。クロネは何となくお金の価値を理解しているようだが……全く理解出来ていないであろうアミュは、とりあえず言われた通りにしていた。


 落ち着いたところでオボロは、今日からギルド依頼をして行く事を伝え、二人から了承を得る。


 ギルド━━


 ギルド前の花壇に腰掛けていたスコットに挨拶をし中へ。


(今日から依頼してくれるのか?)


 小石をポーンポーンと片手でキャッチするスコット。


 依頼ボードに目を通すオボロ……。クロネは邪魔にならぬようアミュの手を引き隅に移動した。

 家の建て直しや補修の助手や老夫婦の買い物の補助……畑仕事の手伝い……麦食いの駆除……様々な依頼が張り出されている!グレードGが可能な依頼を探していると……隣に熊のような大柄な獣人が来た!


 ……黙って依頼ボードを見ている二人……


 大柄な獣人が正面を向いたまま話しかけて来た!


「俺は何となくこの町に住み着いてて……冒険者メインで生活してる……あんたの実技試験見ていたぜ?実戦経験あるねぇ……」


 オボロも真正面を向いたまま


「あーそれはどうも……」


 まだ真正面のまま大柄な獣人


「この町だけじゃないが……獣人を快く思わない人間も多い……住み着いている俺が言うのだから間違いねぇ……あんたの実力はスコットよりも上だと感じてる!」


 真正面向いたまま聞くオボロ


「ありがとうございます……」


 まだ依頼ボードを見たまま大柄な獣人は


「ギルドの人達は獣人も平等に扱ってくれている。まぁ、なんだ……同じ獣人同士……頑張ろうや!」


 やっとオボロの方を見る大柄な獣人。オボロも振り向き、顔を合わす。影が出来るくらい大きな顔で見降ろされたオボロ。


「オボロです。見ての通り猫獣人」


 大柄な獣人


「俺は大型犬の獣人のヌイケンだ!討伐や駆除の依頼が被った時は仲良く狩りだな!」


 と、言い残しギルドを出て行くヌイケン……それと入れ替わりでスコットが入って来た!迷わずオボロの隣へ……。


「ヌイケンの用事が済んだみたいだから……次は俺な!オボロさん!」


 何か企んでいそうな雰囲気なスコット……。とりあえず聞くオボロ。


 ボードから一枚依頼書を取り


「オボロさんの実力を見込んで……この依頼をして欲しい!」


 見せられたのは……麦食いの駆除の依頼!それも……良く見ると……麦食いの生活エリアに居る可能な限りの駆除!続けてスコットは


「本当は俺が受けるはずだったんだが……身体が完全じゃなくてよ……有志を募っても……中々集まらない……そこで!俺の代わりに依頼をこなしてもらいたい理由よ!」


 スコットに押され気味なオボロ


「……なるほどね」


(実際、駆除依頼の方がクロネもアミュもやる事が決まっているからわかりやすいよな)


 さらに続けてスコットは、この依頼はグレードE以上で複数人でこなす依頼。しかしオボロは冒険者なりたての……グレードGである……。


「ふふーん!そこは俺の顔でトスクールさんに話はしておいたし、許可も得ている!」


「え?そんな簡単に俺達を信用してしまうのか?」


 思わず聞いてしまったオボロ。


 スコットはオボロの肩を叩き


「なーに!ともに戦った仲でしょ?俺がオボロさんの実力を証明したようなものだし!」


 と、得意気で話すスコットだが……訓練とは言え……オボロに負けた事は事実である。


 しばらく考えるオボロ……。


 ……


「初めての依頼だし、ちょっと皆の協力を頼もうかな……スコットさんにも」


 ミティーラと目を合わせ、お互い親指を立てたスコット。


 クロネもアミュも呼びスコットとテーブルを囲む。

 生活エリアはスコットを助けた麦畑よりも少し先の雑木林の奥の方で、個体数はそれなりに居るようだ。数週間かけて駆除しながら調べたらしい。雑木林を丸ごと燃やすのは禁止らしく、理由はそこの雑木林で薬草や食用キノコなど豊富なためであった。駆除した証明として麦食いのラッパ状の口を持ち帰ることと、何日かかって構わない依頼と説明してくれた。


(ホノカのファイアブレスで一網打尽出来ないかぁ……まぁ見つけ出して駆除すれば良いんだから……何とかなるな)


 ホノカの炎で楽をする作戦は叶わず……自分とクロネ、アミュの力量を信じるオボロ。


 依頼書をバインダーに挟み渡されるオボロ。畑仕事してる奴にこのバインダー見せておけば問題無いと伝え、荷車を取りに行ってくれたスコット。


 ギルド前でスコットを待つ三人……。ガラガラとリアカーのようなのを引いてきたスコットは、この荷車に麦食いの口を入れて運べば楽だと。

 チラチラ荷車を見るオボロ……強く蹴飛ばしたら……壊れそうな荷車……が第一印象。文句は言えないのでそこは従い荷車を引き町を出発した。


 荷車を引くオボロ達を、ギルド隣の屋敷の窓から様子を見ていた町長のギラク……。


(ほぉ……今日から依頼ですね……トスの言った通りです。さて、オボロさん達の実力……測らせてもらいましょう)


 シャッとカーテンを閉めたギラク。


 目的地周辺━━


 門番に挨拶し、麦畑で作業してる人間に依頼書のバインダーを確認してもらい向うオボロ達。オボロが荷台を引き、隣をクロネが歩き、アミュは空の荷台で揺れる荷車を楽しんでいた。


 葉の少ない針葉樹林の雑木林が見えてきた!ザザ村近くにあった針葉樹と同じで白樺の様な細めな木で乱雑に生えた雑木林……。

 広めな所へ荷車を置き……麦食いが現れるのをひたすら待つオボロ達……。


 ……


 ……


 数匹現れては……クロネとアミュが仕留めて、オボロが口を切り取る……。そんなだるい事を繰り返す……。


(駆除ってこんなにだるかったっけ?やはり奥まで行かないとだめかなぁ……)


 と、アミュが


「ねぇお兄ちゃんっ?アミュ奥まで行って捕食してこようか?」


 と、提案された。


「んーアミュ?もし捕食中に襲われたらどうする?」


 と、盲点を突くオボロ。


 ━━!


 両手で口を押さえアミュ


「うぅ……それをされたら……嫌だなぁ……」


 と、クロネが


「私が飛んで奥まで様子を見て、おびき出しましょうか?雑木林の中では戦いにくいですし」


 それだ━━!


 オボロはちょっと待っててと、麦畑へ走って行った!


 ……しばらくして━━


 麦の束を抱えて戻って来たオボロ!

 アミュを呼び、背負っているリュックに束ねた麦を押し込み、穂の部分だけ出るようにした!

 アミュをくるりと自分の方へ向かせ、両手を肩に乗せオボロは━━


「これからアミュに任務を与える!」


 両手を太ももの横に当て、ビシッとするアミュ!


「雑木林の中へ潜入し、麦食いをこちらまで誘導させよ!アミュは誘導に専念し、危険を感じた時のみ撃退せよ!」


 少し顎を上げアミュ


「ラジャー!お兄ちゃんっ!」


 と、しっかり返事をし素早く雑木林の奥へ潜入して行った!見送るオボロとクロネ……。


「一人で大丈夫かしら?オボロ様?」


「俺は……アミュを信じる!」


 根拠の無い自信に満ち溢れるオボロ。


 ……


 遠くの上空で大きな影がこちらを観察するように旋回していた……。


 それを気付いているのは……鳥類であるクロネだけであった。




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