第1幕〜別世界での日々・4
黒い鳥の巣立ちを見届けてから3日目━━━
オボロはある事に気付く。
(最近ここら辺に、木の実や野ウサギが置いてある)
狩りをする手間も省けるから、遠慮なく利用しているオボロであった。
とは言え、明らかに自然ではない行為と考えるオボロ。
━━翌日
今日も置いてあった。
しかも小ぶりな魚!!
(今日のご馳走、決まりだな!)
小躍りしてしまうオボロ。
(あっ!俺、そこそこな年齢だったよな……)
身体は子供の猫獣人ではあるが、中身は………35歳のおっさんで、ある。
小魚を洞窟内の湧き水の池へ保存し、砂浜へ。
「んにゃ!今日も、砂浜清掃!」
ここ数日は砂浜清掃に勤しんでいる。
使えそうな物・不要な物・死骸………別けて、隅に追いやっている。
(漂流物……かなりあるよな……)
と、砂浜に足を取られるオボロ!
━━━!!
「な、なんにゃー!!」
ササーと静かに渦巻く砂浜!
足が砂浜に埋まり始めるオボロ!
砂の動きが速まって行く!!
(これって………蟻地獄みたいなやつか!?)
渦の中央に目をやると……
━━━!!
口をパクパク開けている蟻地獄のような生物!!
(てか、蟻地獄って海辺に生息するのか?)
……ゆっくりと渦に巻かれて行くオボロ。
(いやいや、ここは異世界!そう言うのあっても不思議じゃない!)
砂の渦から脱出しようと両手をバタつかせるオボロ!
(はぁ……土砂やら、砂やら、俺って砂系と縁があるのか?)
━━━!?
黒い物体がオボロ目掛けて飛んでくる!!
「ガーガァガ……グァガァー!!!」
オボロには、なんとなく見覚えがあった!
黒い翼・金色に輝く鶏冠!
オボロ目掛けて急降下してくる黒い鳥!
足を目一杯出している!
(助けて、もらおう!)
そう思い、両手を上へ突き出すオボロ!
━━━!
一度目、失敗。
旋回する黒い鳥!
今度は速度を下げて向かってくる!
オボロをザザザーと、砂の中央へ引き寄せる蟻地獄っぽい生物。
おそらくチャンスは、次!
オボロも、黒い鳥も同じように考える!
「ガガガ……グァガー!」
オボロの突き出した手へ足を運ぶ黒い鳥!
オボロの真上でホバリングのように浮く!
上へもがきながら手を伸ばすオボロ!
━━━!
掴めた!!
それを確認するやいなや、すぐさま飛び立つ黒い鳥!
蟻地獄っぽい生物は、獲物が無くなったからなのか砂浜へ潜っていく………。
それを見届けながら、黒い鳥はオボロの寝床の洞窟まで飛んで行く。
ゆっくりとオボロを下ろす黒い鳥。
「ありがとうにゃ!」
振り返り、深々と頭を下げるオボロ。
(こっちで、頭を下げる挨拶が通じるかわからないが、一応礼儀として)
黒い鳥も思わず、首をカクカク上げ下げする。
「わかってくれたのかな?」
「助けてくれて……本当ありがとう、にゃ!」
オボロは黒い鳥の光沢ある嘴を擦りながら、礼を言う。
黒い鳥は、サッと後ずさり。
「あっ!ごめんよ……いきなり触ったりして」
オボロは、両手を上げて言う。
黒い鳥は、ブンブン首を横に振る。
(……なんとなく伝わってるんかな?)
しばし間━━━
黒い鳥は、オボロに背を向け飛び立とうとしていた。
━━━「待って!!!」
大きな声で言うオボロ。
振り向く黒い鳥。
「あのさ、いつもここに木の実とか置いてくれのは……君、かい?」
洞窟入り口を指差しながら、疑心暗鬼で問うオボロ。
オボロを見つめている黒い鳥。
さらにオボロは黒い鳥に問いかける。
「もしかして……仲間、逢えなかったの、か?」
これも疑心暗鬼で問うオボロ。
黒い鳥は、オボロの目を見ている。
またしばしの間……
潮風が心地よい……
黄金色の鶏冠が、潮風に揺れている……
オボロの毛並みが、緩やかになびいている……
と、黒い鳥は脚を曲げ休むような態勢になり
「ウゥゥ……グァグァガ……ガガ」
なんとなく弱々しく鳴いてるように感じるオボロ。
……
……
オボロは、黒い鳥に近づき少しかがみ同じ目線になり
「よし!おまえさえ良ければ、一緒に生活するか?」
なんとなく目を合わせる二匹。
黒い鳥は羽を大きく広げ鳴く。
「グガガァァー」
伝わったようだ。
早速洞窟へ行く。
キョロキョロしてる黒い鳥。
ぴょこぴょこ跳ねる黒い鳥。
湧き水を飲む黒い鳥。
またキョロキョロする黒い鳥。
……落ち着きない行動。
それを見守るオボロ。
(こうなると名前つけないなとな)
━━━!
と、なぜか生前の記憶が蘇る!
幼稚園のころのナナ。
リビングで足をパタパタさせながら、コロネと言う菓子パンを頬張る姿。
(確か食べなれてなくて、パンの中のチョコ落としたり口の周り汚してたっけな)
にんまりするオボロ。
━━━!
「んにゃ!」
決まったようだ!
黒い鳥の方を向き、手招きするオボロ。
オボロの前へ来る黒い鳥。
オボロは
「えーと、そのおまえに名前をつけたいのだが……良いかな?」
首をかしげる黒い鳥。
(ここは、強引にでも!)
強い決意なオボロ。
むくりと立ち上がり、黒い鳥へ向かって片手を前へ差し出し━━━
「クロネ!」
「今からおまえは、クロネ!」
………
クロネはオボロを見つめている。
再度オボロは
「クロネ!」
「今からおまえは、クロネ!!」
優しくも、強く投げかける。
クロネは、理解したかのように首を縦に数回振る。
「わかってくれたか?」
喜ぶオボロ。
クロネは
「ぐぅ…ごぉ……ぐぇ」
なんとなく、なんとなくだけどクロネと、発音してるかのように聞こえたオボロ。
こうして二匹の生活がスタートした。




