表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/166

第1幕〜別世界での日々・4

 

 黒い鳥の巣立ちを見届けてから3日目━━━


 オボロはある事に気付く。

(最近ここら辺に、木の実や野ウサギが置いてある)

 狩りをする手間も省けるから、遠慮なく利用しているオボロであった。


 とは言え、明らかに自然ではない行為と考えるオボロ。


 ━━翌日


 今日も置いてあった。

 しかも小ぶりな魚!!

(今日のご馳走、決まりだな!)

 小躍りしてしまうオボロ。

(あっ!俺、そこそこな年齢だったよな……)

 身体は子供の猫獣人ではあるが、中身は………35歳のおっさんで、ある。


 小魚を洞窟内の湧き水の池へ保存し、砂浜へ。


「んにゃ!今日も、砂浜清掃!」

 ここ数日は砂浜清掃に勤しんでいる。


 使えそうな物・不要な物・死骸………別けて、隅に追いやっている。


(漂流物……かなりあるよな……)


 と、砂浜に足を取られるオボロ!


 ━━━!!


「な、なんにゃー!!」


 ササーと静かに渦巻く砂浜!


 足が砂浜に埋まり始めるオボロ!


 砂の動きが速まって行く!!


(これって………蟻地獄みたいなやつか!?)


 渦の中央に目をやると……


 ━━━!!


 口をパクパク開けている蟻地獄のような生物!!


(てか、蟻地獄って海辺に生息するのか?)

 ……ゆっくりと渦に巻かれて行くオボロ。

(いやいや、ここは異世界!そう言うのあっても不思議じゃない!)


 砂の渦から脱出しようと両手をバタつかせるオボロ!


(はぁ……土砂やら、砂やら、俺って砂系と縁があるのか?)


 ━━━!?


 黒い物体がオボロ目掛けて飛んでくる!!


「ガーガァガ……グァガァー!!!」


 オボロには、なんとなく見覚えがあった!

 黒い翼・金色に輝く鶏冠とさか!


 オボロ目掛けて急降下してくる黒い鳥!


 足を目一杯出している!


(助けて、もらおう!)

 そう思い、両手を上へ突き出すオボロ!


 ━━━!


 一度目、失敗。


 旋回する黒い鳥!


 今度は速度を下げて向かってくる!


 オボロをザザザーと、砂の中央へ引き寄せる蟻地獄っぽい生物。


 おそらくチャンスは、次!


 オボロも、黒い鳥も同じように考える!


「ガガガ……グァガー!」


 オボロの突き出した手へ足を運ぶ黒い鳥!

 オボロの真上でホバリングのように浮く!


 上へもがきながら手を伸ばすオボロ!


 ━━━!

 掴めた!!


 それを確認するやいなや、すぐさま飛び立つ黒い鳥!


 蟻地獄っぽい生物は、獲物が無くなったからなのか砂浜へ潜っていく………。


 それを見届けながら、黒い鳥はオボロの寝床の洞窟まで飛んで行く。


 ゆっくりとオボロを下ろす黒い鳥。


「ありがとうにゃ!」

 振り返り、深々と頭を下げるオボロ。

(こっちで、頭を下げる挨拶が通じるかわからないが、一応礼儀として)


 黒い鳥も思わず、首をカクカク上げ下げする。


「わかってくれたのかな?」


「助けてくれて……本当ありがとう、にゃ!」

 オボロは黒い鳥の光沢あるくちばしを擦りながら、礼を言う。


 黒い鳥は、サッと後ずさり。


「あっ!ごめんよ……いきなり触ったりして」

 オボロは、両手を上げて言う。


 黒い鳥は、ブンブン首を横に振る。


(……なんとなく伝わってるんかな?)


 しばし間━━━


 黒い鳥は、オボロに背を向け飛び立とうとしていた。


 ━━━「待って!!!」

 大きな声で言うオボロ。


 振り向く黒い鳥。


「あのさ、いつもここに木の実とか置いてくれのは……君、かい?」

 洞窟入り口を指差しながら、疑心暗鬼で問うオボロ。


 オボロを見つめている黒い鳥。


 さらにオボロは黒い鳥に問いかける。


「もしかして……仲間、逢えなかったの、か?」

 これも疑心暗鬼で問うオボロ。


 黒い鳥は、オボロの目を見ている。


 またしばしの間……


 潮風が心地よい……


 黄金色の鶏冠が、潮風に揺れている……


 オボロの毛並みが、緩やかになびいている……


 と、黒い鳥は脚を曲げ休むような態勢になり

「ウゥゥ……グァグァガ……ガガ」

 なんとなく弱々しく鳴いてるように感じるオボロ。


 ……

 ……


 オボロは、黒い鳥に近づき少しかがみ同じ目線になり

「よし!おまえさえ良ければ、一緒に生活するか?」


 なんとなく目を合わせる二匹。


 黒い鳥は羽を大きく広げ鳴く。

「グガガァァー」


 伝わったようだ。


 早速洞窟へ行く。


 キョロキョロしてる黒い鳥。

 ぴょこぴょこ跳ねる黒い鳥。

 湧き水を飲む黒い鳥。

 またキョロキョロする黒い鳥。


 ……落ち着きない行動。


 それを見守るオボロ。


(こうなると名前つけないなとな)


 ━━━!

 と、なぜか生前の記憶が蘇る!


 幼稚園のころのナナ。

 リビングで足をパタパタさせながら、コロネと言う菓子パンを頬張る姿。

(確か食べなれてなくて、パンの中のチョコ落としたり口の周り汚してたっけな)


 にんまりするオボロ。


 ━━━!


「んにゃ!」

 決まったようだ!


 黒い鳥の方を向き、手招きするオボロ。


 オボロの前へ来る黒い鳥。


 オボロは

「えーと、そのおまえに名前をつけたいのだが……良いかな?」


 首をかしげる黒い鳥。


(ここは、強引にでも!)

 強い決意なオボロ。


 むくりと立ち上がり、黒い鳥へ向かって片手を前へ差し出し━━━



「クロネ!」



「今からおまえは、クロネ!」


 ………


 クロネはオボロを見つめている。


 再度オボロは


「クロネ!」

「今からおまえは、クロネ!!」


 優しくも、強く投げかける。


 クロネは、理解したかのように首を縦に数回振る。


「わかってくれたか?」

 喜ぶオボロ。


 クロネは

「ぐぅ…ごぉ……ぐぇ」


 なんとなく、なんとなくだけどクロネと、発音してるかのように聞こえたオボロ。


 こうして二匹の生活がスタートした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ