見ているぞ
急に冷えこんだある日のこと。私は会社に行くために道を歩いていた。すると、前に一匹の黒猫が交差点の向こうをじっと見ていた。
「あれ?猫だ。何見てるんだろ・・・」
その時私は、会社に行く時間があったのであまり気にとめなかった。その日の会社のお昼の時間。女子社員たちが何かスマホを見てなにやら話していた。
「うわぁ、なにこれ」
「気をつけなきゃだね」
私が、何気なくスマホのニュースを見ると、この近くで自転車の事故があったらしい。幸い軽傷ですんだみたいだった。
「うわー、気を付けないといけないな。しかも、私の通る道の近くじゃない」
それからは、何事もなく過ぎていった。外も少し暗くなってきた帰宅途中、またあの黒猫を見かけた。今度は私の目の前の横断歩道を見ていた。またじっとだ。
「なんだろ・・・またじっと見てる。何かあるのかな」
私がそんなのんきなことを考えていると、ドーンという音とともに目の前で車同士の事故がおきた。
「ひっ・・・!」
私にも衝撃があって尻もちをついた。もうあの猫はいなくなっていた。
「本当なんなのよ、もう・・・」
それから目撃証言などで、だいぶ帰るのが遅くなってしまった。今日は本当に疲れた。しかも、あの黒猫が見ている方向でいつも事故がおきているような気がする。私の勘違いかもしれないけど、一応気を付けた方がいいのかもしれない。今日はもう寝よう。私はそのままベッドに突っ伏して寝た。
次の日は、祝日だったので、会社は休みだった。だから今日は前から楽しみにしていたビックパフェを食べにいこうと思う。私はルンルン気分で街の通りを歩いていた。もうすぐ念願のパフェが食べれる喫茶店が見えるころ、またあの黒猫が現れた。しかも今度は私の方をじっと見ていた。私は自分の後ろかと思って振り返ってみたが、誰もいない。また前を見るとまだ黒猫はじっとこちらを見ていた。そして、だんだんと近づいてきた。私は怖くなってぎゅっと目を閉じた。そぉーと目を開けると、そこに黒猫はもういなかった。私はほっとして、前に歩き出そうとすると、、ガシャンという音が上から聞こえた。ふと」上を見上げると大きな看板が落ちてきた。
「あぁ、このことだったのか・・・」
私は看板が落ちてくる途中、そんなことを頭の隅で思っていると、私の体に看板が落下した。そこで私の目の前は真っ暗になった。
次に私が目を開くと、真っ暗な空間にいた。そして目の前にはあの黒猫がふよふよ浮いていた。
「ここはどこ?私死んだの?」
「そう。ここは死後の世界だ」
なんと黒猫がしゃべりだした。しかもその顔は怒りに満ちていた。
「お前は私に何をしたかわかってないのか。だからお前は死んだのだ」
「え、うーんと・・・あっ!」
思い出した。よく見ると、小さいころいじめた黒猫にそっくりだった。なんで気づかなかったんだろう。それならこの黒猫は私に復讐をしたかったのだろう。
「あなたの復讐は私が死ぬことでしょ?なんでまだここにいるの?」
「私がそんなことで満足するわけがないだろう。お前が地獄で苦しむさまをこの目で見ていてやろう」
黒猫がそう言い終わると、私の足元がバっと開いた。
「きゃぁぁぁぁ!」
私が落ちていくのを、黒猫はじっと見ていた。その顔はうっすらと笑っているように見えた。