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悪党の復讐  作者: 島津宏村
誕生と暗躍
6/22

計画と準備2

捜査会議が始まる。


佐々木はとても憂鬱な気分で会議に参加していた。


それは早田署の必死の初動捜査で得られたものが雀の涙程しかなかったのが少なからず影響しているだろう。


所轄の刑事が事件の詳細を語る。


「被害者は武田健(たけだたけし)

年齢は25歳、 職業は警察官です。自宅のマンションで毒を飲んで死んでいる状態でしたが、現場検証、鑑識の結果より他殺であることが判明しました。死亡時刻は19日月曜日の夜10時~11時ごろです。

司法解剖の結果、胃の内容物にケーキがあり、そのなかに毒があったようです。」


「ってことは現場にあった毒はカモフラージュのためということか。」


羽島が呟く。


「犯行現場はもみ合ったた模様はなく自らケーキを食べたことは間違いないようです。

現在彼の交友関係をあたっていますが、いまだ手がかりはありません。

以上です。」


まだ佐々木のように若さが残る細田管理官は苛立っているようだ。


「いいですか。よく聞いてください。

初動捜査でこれほどしか情報が集められないということは申し訳ないがあなた方の捜査方針が間違っているという他にないのです。

羽島刑事この点どうお考えですか。」


羽島の顔が妙な形に歪む。


おおよそ捜査の方法を指摘されて怒っているが、初動捜査の結果の不出来を出されて痛いというような感情だ。


「おっしゃる通りですな。

初動捜査の段階で情報が集まらないのは捜査方針の間違いである可能性は大いにあるでしょう。

細田管理官、我々は今後どのように捜査をすればよいでしょうか。」


細田の顔が満足そうになる。


佐々木でさえもこの男はつくづくわかりやすい男だと思う。


羽島はそれを知った上で捜査方針を聞いている。


細田のように若い男はとにかく自分のコンパスにしたがって動くことが多い。


管理官にもなると反対するものが少なくなるのも道理だ。


以前、羽島は


「細田はまだまだ経験の足りない若造だ。

佐々木、今のあいつを見ておけ。

経験が足りず、死体と一対一で向き合ったことのないやつの指示なんてのはゴミ同然だ。

だがな、上司の命令はなるべく従ってやらんといかん。今は我慢しろ。いずれ、上手い立ち回りがお前にも身に付く。」


と言っていた。


佐々木は細田の見下したような言葉がいつも癇に障っていたが、羽島に釘を刺されてしまっているためこらえていた。


警察にはキャリアとノンキャリアがある。


そして細田はキャリアに分類される。


佐々木や羽島は「巡査部長」すなわちわ地方公務員である一方、細田は国家公務員。


そのため、キャリアの出世ペースはノンキャリアに比べて非常に早く、そのなかでも細田のように28歳で管理官すなわち、「警視」になっている。


そのため、それなりの知恵はあるが、理屈ばかりで所轄を振り回しており、羽島含め捜査員全員から嫌われている。


「私が示したいのは、捜査範囲の拡大と、容疑者の候補作りです。

アリバイがなければ容疑者、少しでも怪しければ容疑者というようにとにかく、容疑者の候補を作ってください。

そして、被害者はこの早田署の捜査員です。

ですから彼の交友関係は県警本部の捜査員が行うこととなります。

みなさんなんとしてでも犯人を捕まえてください以上です。」


会議が終わり羽島が不機嫌な様子で佐々木のもとへ来た。


「何が捜査方針の間違いだ。ふたを開けてみりゃ本部の人間を巻き込む都合を作っただけだ。捜査範囲の拡大なんてとっくに始めてる。佐々木、もう一度現場にいくぞ。」

一時間後に次話「計画と準備3」を投稿します。

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