私の仕事
「最近は寒くなってきたな~。」
刑事になって二年目。
佐々木友人は体の奥深くに入り込んでくる、寒さを感じた。
というのも、今、佐々木は殺人現場にいる。
事件は明らかに自殺だ。
現場には明らかに毒を飲んだとしか思えないような証拠しかなかったからだ。
しかし、先輩刑事の、羽島太郎の見解は違っていた。
「おい。見てみろ。ここに口をつけていない牛乳をいれたコップがある。君に聞きたい。これはどういう事件だ?」
こういうときにはこう答えるしかない。佐々木はは不服そうに言った。
「他殺ですかね?」
羽島は満足そうな顔をした。
「その通り。今から自殺しようとする者がわざわざ、牛乳をいれるはずがない。まあいい。今回の事件は捜査員を総動員して取りかかるぞ。
なんとしても犯人を捕まえるんだ!」
佐々木も同感だった。もし、他殺なら犯人をなんとしても捕まえなければならない。
だが、佐々木はもう一つの理由もあると思った。
被害者の職業はつい先日まで共に行動していた刑事なのだ。
警察は仲間意識が強いと言われるが、今回は仲間意識どころではない集中力を感じる。
全捜査員は犯人に憎しみをもって動いているとしか思えないような顔だ。
佐々木もいつしか、現場をくまなく見ていた。
「おい、佐々木、熱い気持ちを持つのはいいが、現場を荒らすなよ。」
羽島は起こっている素振りをみせず、半ば誇らしいように注意した。
「はい。わかっています。」
なんとしてでも捕まえてやる。