表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪党の復讐  作者: 島津宏村
誕生と暗躍
19/22

冷戦時代3

「さあ、話を続けようか。お前が戦闘訓練を受けていることはわかったな。さて、問題はどうやって戦闘訓練を受けたか。どこで受けた?」

要するに、犯行は何かしらのグループによって行われたと佐々木は言いたいのだ。

真田はこの質問はまだ序の口なのだと思った。言い逃れの方法はまだたくさんある。

「いや、さっきは映画のアクションの真似をしたと言ったが、本当は武術を習っていた。」

「どこで?」

早くも無理筋な気がする。

「いや、個人的にお願いしただけだ。」

「その人物の名前は?」

「思い出せないな。」

そう。この方法がある。訓練を受けた相手が団体であるなら、確認もとれるというものだ。個人である以上訓練を本当にその相手に受けたのかを確認することはできない。

「仕方がないな。なら、次の質問だ。

いい加減住所を教えろ。」

今度は真田が質問してみる。

犯行当日の矢野の足取りは掴めているが、住所は今だ不明だ。アパートなどを借りているなら住所などはすぐ言えるはずだ。矢野が住所に関する質問を徹底して黙秘しているのには理由があると真田はにらんでいる。例えば、組織の本部に住んでいたのなら、言えるはずもないだろう。

「だから言ってるじゃないですか。ホテルに寝泊まりしてて、決まった住所は持っていませんよ。」

犯行当日そしてその一週間ほど前から矢野は国北国際ホテルに宿泊している。その確認はとれているが、それより前の確認はとれていない。予想としては、教えられないところにとまっていた。つまり、組織が持つ隠れ家に泊まっていたのだろうと真田はみている。

「職業はフリーのライターだって?

そんな職業でホテル通いができるのか?

国北国際ホテルなんて、一泊で一万はかかる。フリーのライターでそこまで稼げるのか?」

「親の遺産があるからな。稼がなくても生きていける。」

「で、親の職業は何だったかな?」

「だから言っただろう。知らないんだ。仕事の内容は一切教えてもらえなかったさ。まあ。

遺産はたんまり貰えたから文句は無しだな。」


この筋も無理筋のようだ。矢野が言うには両親は八年前に他界しているらしい。元々は海外にいたと言うから職業の判定は困難だ。戸籍を探すと、矢野の戸籍があった。そこで、出生から、彼の過去を探ってみたが十代で海外へ行っており、その後の足取りは掴めなかった。日本へ戻ってきた記録もないため、おそらく組織の裏ルートで違法に帰国したに違いない。悔しいが国が持っている情報では、詰めることができない。


「一度話を戻そうか。襲撃の際の話に戻ろう。」

佐々木が話し出すと、矢野の背筋がのびる。

「スナイパーの話をしよう。調べた結果だが君たちの仲間のスナイパーは2人居たようだな。」

真田は初耳だった。襲撃の際私服警官として現場で、銃声を聞いていたが、2人分の銃声が聞こえることはなかった。

「襲撃の動画を、みているとおかしな音が聞こえてきた。ライフルの破裂音だけではなかった。鑑識に出すとおかしな音の正体はサプレッサーをつけたライフルの銃声だった。ここで一つの疑問が出てくる。スナイパーは本当に一人だったのか。撃ち合った警官からはスナイパーは目視できるギリギリのところに一人しかいなかったという。」

それは真田も聞いた話だったがサプレッサー云々は初耳だった。

「そんなの途中でサプレッサーをつけただけかもしれないだろ。」

「おかしな銃声が聞こえたのは撃ち合いの途中だ。わざわざサプレッサーを取り付けて、その後外したとは考えにくい。」

「だが、不可能じゃないだろう。」

矢野は抵抗する。

この抵抗が、矢野の犯行が組織的であることを示しているではないかと真田は思う。

「ああ、不可能じゃあない。ただし、スナイパーが2人いたことは明白なんだよ。なぜだかわかるか?」

矢野が首をかしげる。わからん。真田も首をかしげてしまう。

「敵のスナイパーが1人、警察の突入前に脱出している。しかも突入時には爆破までしている。お陰で捜査員が3人重症になっちまった。お前達の組織を表に出すことになるから警察の被害はあまり報じてないがな。

さて、敵のスナイパーはどうやって爆破させたのか。時限爆弾か?」

「そうだろ。」

「しかしな、それならどうやって時間を設定したんだ?」

「そんなこと、なんとかなるだろ。大体で予想するとか。」

「そうだ。そこが問題だ。スナイパーは狙いが警察の撹乱であることをばらさないために、警察が突入してくるギリギリのタイミングで逃げる必要がある。そんなことができたと思うか?」

いや、無理だ。警察と撃ち合っていた間は周りを確認する余裕なんてないはずだ。

佐々木は矢野に答える時間を与えずに続ける。

「不可能だ。であればどうやって警察の突入を関知したのか。どうやって爆破したのか。答えは簡単だ。もう1人いればいい。スナイパーがいた橋中駐車場は、三階建てで、下を見渡すことができない。銃撃であれば尚更無理だ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ