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第4話 アリス監禁事件 真相

「それでなぜ!私までついて来るはめになるんだ!」


日の入りの時刻、王立学園は休みだったが公爵家の力を使い、現在はランタンを持って私、リント、クリス、そしてリントの兄で宰相の息子のエレンは古倉庫に向かっていた。


クリスは何か思う所があるのか、彼にしては珍しく静かだ。

それに対して歩きながらもずっとエレンは喚いている。


「この!忙しい時にお前なんかのために僕が動くなんて‼」

「あら?家格は同じ公爵家のはずよ?それにリントがお父上に許可を取ったわ」


エレンとクリスを連れてきたのは証人が必要だったからだ。

例えば何か決定的な証拠を見つけても、私か私とリントだけでは捏造と一蹴されかねない。


まさか絶対的正義の攻略対象者が証拠品捏造の疑惑をかけられることは無いでしょう!



「笑っちゃうぐらいの仕上がりだね。父上が心配するのも分かるよ」

クスクスと楽し気にリントは耳打ちしてきた。


そう、リントの兄、エレンは本来はもっと静かな性格だ。


「エレンのこと心配じゃないの?」

「あそこまでいっちゃうと逆に面白いかな、そんなにキャメル嬢って可愛いんだ?」


「……えぇ、可愛らしい顔立ちをしているわ」


ズキリと胸が少し痛んだ。

リントは笑い話の一環として話しているが、ちょっとこう、リントにアリスが可愛いという話をするのは……なんか嫌だ。


「エメルダ?」

「何?」


じっとリントが見てくる。その新緑の瞳に何か見透かされそうでそっと視線を外すと髪を触られた。


「俺、エメルダのこと綺麗だって言ったよね?」

「え?えぇ、そうね」


「エメルダはいつも綺麗だけど偶に可愛いね」


「「「‼」」」


言い終わるとリントは私の金髪にキスをした。

リント以外、3人とも赤面だ。


「あ、ありがとう?」


「リント……お前エメルダのこと…………」


先ほどまでうるさかったエレンがポツポツと話し出す。

「あぁ!言ってた古倉庫ってあれのこと?」


エレンの言葉などどこ吹く風でリントは古倉庫を指さす。

王立学園の端に位置する古倉庫は、校舎からは見える距離ではあるが少し離れて木に囲まれている。


うん、ちょっとどう考えていいか分からないし、とりあえず現場確認が先よね。




切り替えて、借りてきた鍵で倉庫の中に入る。


夕方で窓が無い倉庫ということもあり、ランタンが無ければ中は真っ暗だ。


「俺が鍵を壊して、扉を開けるとここにアリスが座り込んでいた」


ランタンを持ちながらクリスは倉庫の中央に立った。


中央と言っても、倉庫内はせまく大人が寝そべるスペースも空いていない。

その他は見渡す限り木箱が積まれている。


試しに木箱の1つを動かそうとしたが、ビクともしない。



「ほら見ろ!おかしな所なんて無いじゃないか‼お前がアリスを監禁したんだろ‼」


リントの行動から復帰したらしいエレンが声高に叫ぶ。

「私はやっていないわ。鍵の管理表にも名前が無かったでしょう?」


この古倉庫の鍵は教師が管理しており、貸し出しの際は教師に連絡、管理表への記入が必須。


「公爵家の力を使ったに決まっているだろう!」



うん、筋は通っている。

王家に次ぐ国内の権力者である公爵家の力を使えば、教職員を黙らせることなど簡単だ。

でも、私じゃないことは私が一番知っている。


今までの事から考えてアリスの自作自演ということが一番妥当だと思ったけど、その場合アリスはどうやって入ったんだろう?


貴族とはいえ男爵家ぐらいでは教職員を黙らせるのは厳しいし、かといって扉の鍵は南京錠だ。

彼女に鍵開けの技術があっても中から閉めるのは無理だ。



「エメルダ、兄上‼ちょっと外に来て!クリス兄はそのまま!」


リントが居ないと思ったら外だったのか。

外に出てみると、リントが倉庫を指さしている。


「あっ!」

既に日は落ちており、外は暗い。

視線を向けると外壁から光が漏れ出ている所があった。しかも丁度、隣の木の枝が足場になりそう。


「エメルダ、無実を証明したらご褒美くれる?」

リントが悪戯っぽく笑いかけてくる。


「ご、ご褒美?」


何を言われるんだろう。とちょっと警戒していると、無言でエレンが木に足をかけた。


「兄上⁉」

「エレン⁉」


「……アリスは女性だ、だったら運動が出来ない私が行くのが一番証明になる」



おぉ⁉

エレンまで!正気に戻った⁉


喚き散らすのではなく、淡々と告げるエレンの姿を見て懐かしさがこみあげてくる。


エレンは存外に危なげなく木に登り、光が出ている外壁を触る。外壁を押すとガコンと音がして外壁の一部が中に入り、丁度大人一人分ぐらいの隙間が出来た。



リントと共に倉庫の中に入り様子を見ていると木箱の上の方から声がした。


ひょっこりと頭上の木箱から頭を出したエレンはかつての無表情だった。

その頭は埃にまみれている。


「私が中に入る前から埃の上に足跡や誰かがいた形跡がある」


エレンは木箱の段数が低い所へ徐々に降りていき、最後は飛び降りた。


「……やっぱアリスが嘘ついていたのか?」


クリスは肩を落とし、うなだれながらエレンに聞く。


「それを確かめる。クリス、リント、手伝ってくれ。エメルダ嬢はランタンを持って少し下がっていてくれるか?」

言いながら、エレンはクリスからランタンを受け取り私に渡してきた。


「何か見つけたのね?」

「…………見間違いであって欲しい」


エレンが苦々しく言っているのに、隣でリントはクスクスと笑っている。


「ちょっとリント⁉」

「ヘヘッ兄上らしくなってきたと思ってさ!」


あ、やっぱり全開の笑顔可愛い。

若干シリアスな雰囲気なのに不謹慎にもその可愛さに見惚れてしまった。



私を下がらせると、エレン、クリス、リントは重い木箱を上から順にどかし始めた。時折、あの隠し通路(?)に登ったりして徐々に木箱をどけていく。


木箱を掘り進めていくと、エレンはおもむろに掘り進めた空間に入り、手を伸ばした。

何かを掴んだようで、それを取り出し、じっと見つめると私の前で深々と頭を下げた。


「エメルダ嬢、今までの所業本当に申し訳無かった。心から償いをさせてもらう。もちろん今までの君の落ちた評判の回復にも全力で努めさせてもらう」


エレンの手に握られている物を見て、慌ててクリスも頭を下げてくる。


「本当に悪かった。謝ってすむ問題じゃないけど謝らせてくれ」



エレンの手には、アリスがエメルダに貸して焼却炉に捨てられたと言っていたブレスレットが握られていた。


次は12時30分頃に投稿します。


ブックマークと評価ありがとうございます!

とてもやる気につながります‼‼‼

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