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6 おいかけっこ

 それでも少しづつ彼女を追い込んでいった。あっ、足がもつれて転倒した。これで捕まえられそうだ。速度を落とし、彼女の肩に手を置こうとしたとき。


「う、うわーん。かけっこで負けるなんてぇ」


 彼女が泣き出してしまった。これは困った。そしてどうしたどうしたと住人たちが押し寄せてきた。まずい状況だ。これでは俺が女の子を泣かせたようにしか見えない。泣かせたのはそうなんだけどさ。


 街の人達には何もしてないと説明、ギルドに移動して彼女が落ち着くのを待つことに。テーブルの反対側には彼女が。俺の周りには屈強な冒険者達が。針のむしろ状態。鼻息荒く俺に話しかけてきた。


「何度も聞くがお嬢ちゃんに悪さしたわけじゃないんだな?」

「それは、はい」


 日頃から真面目な人達。この対応は当然といえば当然なのだが。泣き止んだ彼女が重い口を開く。


「ごめんなさい、この人は悪くないんです」


 そういうことならと引き下がっていく冒険者たち。やれやれ、誤解はとけたようだな。


「走りで負けたことがなくてね。それがあまりにも悔しくて」


 泣いた理由を説明する女の子。確かに速い。普通なら目で追うのも難しい速さだろう。俺は速いけど少々事情があるからね、速くて当然というか、不正行為なんだよね。そりゃ速いよ。


 俺の力は秘密にしてくれと彼女にお願いした。いいよと返事をし、私が速いことも秘密にしてとウインクしながら返した。


 女の子はPTを組まないかと提案してきた。聞くと「レンジャー」のクラスをしているとのこと。非常に有用なクラスだ、組みたいところだな。レンジャーは主に「斥候」の役割を果たすクラス。悪いことをしない盗賊とも。


 そうだな、会ったばかりだけどお互い強力な力を持っていることを認識したわけだ。彼女も速いことは隠している。似た者同士組むのも悪くないか。「いいだろう」と返事を返す。


「私の名前はダナ、よろしくね」

「タカオだ。よろしく」


 ダナが手を前に差し出す。その手を握り返す俺。彼女の尻尾が左右に揺れる。結局何の半獣人なんだろう。犬か、狼か。まあ気になるからといってあれこれ聞くのもね。詮索屋は嫌われる。それにいつかわかるときがくるのでは。


 PTは基本契約して運用する。こうすることで範囲系の魔法、スキル等を効率よく扱うことができるからだ。契約は簡単、道具屋に売っている「PT石」を購入、それを持っているだけでいい。契約というほどでもないな。買ってダナに渡した。


 まだ時間がはやいこともあり二人で狩りへ。ダナが走りまわって魔物をみつけてきた。

 ナイフ二刀流に、軽装の防具。見たところ戦い慣れている。ダナはすでにそこそこのレベルのようだ。魔物を一撃で葬り去った。解体の手際もいい。


「タカオとPTを組んだらいつもより頭が冴える気がするんだけど」


 ネイキッドのスキルで、経験値超アップの効果を「範囲化」するスキルを発動している。現在PTメンバー全員が経験値超アップの効果を得られる状態。彼女にも大量の経験値が流れ込んでいる。とある事情によりこのスキルを持っていることを伝える。


「訳ありだね、了解。にしてもそんなスキルがあったんだ」


 理解してくれて助かる。今後、徐々に俺の情報を出すようにしていくか。今あのステータスとか見せたら危ない人に見られる可能性があるからな。


 すぐに依頼達成。ギルドに戻りもう少し難易度の高い依頼を受ける。これもあっという間に達成。もっと難易度を上げてしまってもよさそうだ。


 お腹が鳴り始めた。そろそろお昼か、先に昼食にしよう。2人で飲食店へ。


「そうだ、召喚術士なら召喚獣が欲しいよね。迷惑をかけた謝罪の意味も含めて情報収集してくるよ」


 確かに欲しいな。召喚獣は多ければ多いほどいい。召喚獣ごとに個性があるから様々な局面に対応できるようになる。そうだな、お願いしよう。


 食後、俺は狩り、ダナは情報収集へ。夕方くらいで街に戻る。街の中でダナと会った。

 夕食を食べながら話を聞く。ここ、ロニカの街から東にあるイキッドの湖に「ハードシェル」が生息しているとのこと。


 一夜明け、イキッドの湖へ。湖底に住んでおり、こちらから会いに行く場合は水中に潜らないといけないようだ。誘い出す方法があり、それをダナが説明してくれた。付近にいる魔物を倒し、その肉を湖付近に置く。しばらく待っていると湖の中からカニに似た召喚獣が現れた。


『そのお肉をおくれ』

「契約してくれるなら」

『いいよ』


 契約成立。「ハードシェル」を召喚獣に。頑丈な甲羅を持つ、とにかく硬い召喚獣。通常は盾役をすることが多い。低レベル時は敵の攻撃が物理攻撃が多いから非常に有用。


「やったね!」


 自分のことのように喜ぶダナ。俺も嬉しくなる。こういうのもいいな、旅は道連れとはよく言ったものだ。

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