表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/19

3 味、におい

 外へ出てしばらく平原をうろついていると魔物と遭遇した。


「グブブ……」


 お目当ての魔物、グラスホーンだ。先手を打ち攻撃を仕掛ける。いろいろ試してみたいことがある。まずは剣士レベル1のスキル「手加減」を。このスキルを攻撃スキルに乗せるとどんな強力な攻撃でも死なずに生き残るという便利なスキルだ。使用にはスキルポイント(SP)を使う。念じて手加減を使用、次は攻撃魔法。魔法もSPを消費する。


「ヒートスフィア」


 燃える火の玉を生成。凄まじい勢いで玉が大きくなる。


「お、大きくなり過ぎ」


 最終的に一山ほどの大きさに。でかすぎ! とにかくこれを魔物に投げつけた。


「グブバー!!」


 巨大な火の玉がグラスホーンを襲う。着弾、爆発炎上。炎がおさまり着弾地点をみると巨大なクレーターが形成されていた。見た目通りとんでもない威力の火の玉だ。しかし魔物は生きていた。手加減は成功したようだ。


 それにしてもこの威力。これでは制御ができそうにない。使うたびに地形を変えてしまいそうだ。魔法はステータスの「魔力」が上がれば上がるほど強くなる。そのためある程度は強いと予測はしていたがまさかこれほどだったとは。


「魔術師は駄目だな。他のクラスに変えよう」


 そうだ、じっくり考えている場合ではなかった。これだけ派手に地形を変えてしまったんだ。誰かがここへ駆けつけてくるかも。その前に退散しなくては。


 先程の場所からかなりの離れたところへ移動。クラスのことは後で考えるとして、魔物狩りを再開しよう。グラスホーン発見、今度は銅の棒を手にし魔物に攻撃。攻撃があたった頭部が爆発粉砕。勢い余って地面も削る。胴体だけ力なく地面に落ちる。


 目標数に達し街に戻る。死体をそのまま持ち運んでいたので解体場へ。解体ができるようになると肉や皮等を魔物から手に入れることができるようになる。今回は達成の証であるグラスホーンの尻尾以外はそのまま売った。


 ギルドで尻尾を渡し、無事依頼達成。お金を受け取ると豪快に腹が鳴った。くすりと笑う受付の子。ちょっと恥ずかしい。


 そうか、ここへ来てから何も食べていなかったな。それはお腹が減るよね。ギルドから外に出ると夕日が。もう晩御飯だな。宿屋でご飯を食べることにした。


「新人君、たくさん食べな」


 そう言いながら女将さんが肉の山盛りを出してくれた。こいつはうまそうだ。さらに暴れる俺の腹。よーし、食いまくるぞ! 気合を入れ肉にかぶりつく。肉を噛み千切ったとき、違和感を感じた。何度か噛み締め味を確認、飲み込み肉を見つめる。


(うーん、これはちょっと……)


 食べ慣れていない味というか、癖が強いというか。まあそうだよな、中世っぽい世界なわけだから現代と味が違うのは当然か。


「どうかしたかい?」

「いえなんでも」


 女将さんの言葉に返答し肉に食いつく。飲み込んで今度はパンを食べる。こちらも味が。食感も。

 はー、現代って良いもの食べていたんだな。「世界の成長とともに食も進化した。食べ物が美味しくなったよ」。食べながら子供の頃に聞いたじいちゃんの言葉を思い出す。


 まあ、そこまでまずいというわけではないのでいずれ慣れるとは思うけど。あっ、そういえばオプションに「味覚」って項目があったな。オプションを開き窓を変えていく。あった、「味覚」が。ゲームにはない機能だな。味を認識できるゲームなんてやったことないしな。


 0~100のバー、オンオフがある。説明には味覚の感度を設定できると書いてある。現在50。これが普通ってことかな?

 となるとここから下げれば感覚が麻痺して味を感じづらくなるわけだ。30にして先程の肉を食べる。おお、味が気にならなくなった。


 今度は味覚オフで肉を食べてみた。味が全くしない。これはやめておいたほうが良さそうだな。もし変なものを食べても味がわからないと吐き出さずに食べてしまうからね。30にして食事を続ける。山盛りの肉を次々と平らげていく。


「おっ、なんだい、食べられるじゃないか」

「朝から何も食べてなくて胃がびっくりしたんですよ」


「そうかい」と答え笑顔で洗い物を始める女将さん。変に気を使わせちゃったな。

 今日は疲れたから少しはやいがそのまま寝ることにした。部屋に入ってベッドに潜り込む。


 うん、ちょっと臭うね。正直ここだけではなく、街の中も全体的に臭うなとは思っていた。それはそうだよね、毎日のようにお風呂に入ったり、ふんだんにきれいな水を使い、強力な洗剤でお洗濯とかは難しいよね、この世界では。


 オプションから「嗅覚」を選び、これを30に設定。こちらもいずれ慣れるだろう。味覚と一緒で嗅覚オフはやめておいたほうが良いだろうな。臭いで危険を知ることもあるからね。


 よし、ほぼニオイがなくなった。落ち着いた途端、疲れが押し寄せ一瞬にして眠りの世界へ落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ