はぐれフォレストウルフ
討伐依頼のあったはぐれフォレストウルフのいる森にやってきた。
ティラノの鑑定でステータスがスライムと同様という衝撃の事実があった為、
宿屋に置いてくる選択肢を考えなくもなかった。
今回、従魔登録をしたとは言え、もしもティラノが独りで出歩いてしまった場合、
取り返しのつかない事態になってしまうと思うと無理してでも連れてくることにした。
「ティラノ、ここははぐれフォレストウルフがいる森だ。はぐれているということは手負いだから通常よりも狂暴性が上がっていると考えられるんだ。分かるか?」
キャオッ!
元気に返事をして、俺の事をクリクリの目で見つめてきたが、きっとわかっていないはずだ。
おいおい、お前はスライムと同じステータスなんだぞ。
フォレストウルフの攻撃を受けたら、ほぼ1撃で即死なんだぞ。
頭の中では色々とマイナスなイメージが湧き上がってきたが、
合えてそれを伝える事はしなかった。
いや、出来なかった。
ティラノの可愛さにほだされてしまうのだ。
そんなティラノを見ながら、
う~ん、絶対にわかってなさそうだけど、それでもティラノは可愛いからいいや。
そう思っている自分がいた。
しょうがない、ここは俺が頑張るしかない。
「よしっ!!やるぞ!!」
大きな声で気合を入れると、
カバンの中で森の周辺をキョロキョロしていたティラノがビクンッと驚いていた。
「ごめんね。ティラノ驚かせちゃったね」
今回の討伐依頼は若い冒険者パーティがフォレストウルフの群れと遭遇したことに始まる。
ギリギリの戦いで、群れから逃げ切ることは出来たが、それでも数匹の討伐漏れが発生した。
パーティは何とか逃げ切ることが出来たが、通常では出ないであろう森の浅い場所での遭遇だったと、冒険者ギルドに報告を入れていた。
討伐漏れは1~2匹程度ということなので、ギリギリDランク冒険者である俺でも討伐依頼を受注することが出来た。
もしも、3匹以上のフォレストウルフがいた場合は、発見報告をすれば失敗とはならないので、その時は逃げ帰ればいい。
森に入って2時間位歩いて、若い冒険者パーティがフォレストウルフと遭遇したであろう場所の近くにきた。
「冒険者ギルドで説明のあった場所はこの辺のはずだ。フォレストウルフの死体があれば処理しておかないといけないので、この辺を探してみるか。ティラノもわかったら教えてくれ」
俺は軽くティラノに声をかけた。
するとティラノはいつもと違って、何度もキャオッ・・キャオッ・・と鳴き声を発していた。
しかも、その方角がある一定の方を向いていたのだ。
「ティラノ。もしかしてお前はフォレストウルフの死体がある場所が分かるのか?」
俺の声がどこまで通じでいるかは分からなかったが、
興味半分でたずねてみた。
すると、ティラノは一度俺の方を見て、その後、再び先ほどの方角を向いて鳴き声を上げた。
「わかった。行ってみるよ。ありがとうティラノ!」
俺はティラノがあまりにも鳴き続けるので、半信半疑のままであったが、ティラノの示す方角に向かって走りだした。
すると、10分位走ったら戦闘の跡が見えてきた。
「本当だ。ティラノよくやった。すごいなお前っ!!」
説明があったフォレストウルフの死体は4体だったが、この後、全てティラノが教えてくれた。
本来であれば、1日から2日位かけて処理するであろう内容を初日のしかも半日で処理できた。
死体は全て、半分ほど腐敗が始まっていたので、集めて焼却処分をした。
そして土をかけて埋めるのだ。
そうしないと、フォレストウルフの死体がアンデット化してしまい、さらなる被害を出してしまう。
これで、依頼の半分は処理できた。
残りは2体のはぐれフォレストウルフ達の討伐で完了になる。
「ティラノ。さすがに生きているフォレストウルフはわからないよな?」
俺はティラノがフォレストウルフの死体を発見できたのは、
きっと匂いを嗅ぎつけたからだろうと考えた。
そして、はぐれフォレストウルフはおそらく手負いのはず、
それならば、ティラノがその血の匂いを嗅ぎつけて見つけてくれるんじゃないかと考えて聞いてみた。
ティラノは周囲を慎重に見回していた。
「ティラノ。もしかして、本当に探してくれているのか?」
キャオッ・・
声を掛けると今度は少し悲しそうに鳴き声を上げた。
おそらく、見つからなかったんだろう。
まあ、仕方ない。
生きているフォレストウルフは死体のように匂いを出していないからな。
「ティラノ。とにかく周辺を探索してみよう。何かわかるかもしれないからな」
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