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美少女テイマーのサリナ

登場人物


【ティス】  Dランク冒険者、『最強のモブ』という二つ名を持つ、才能無しの戦士。引退を考えた岩トカゲの討伐時、不思議な夢でもらった卵を育てる事になる。


【ティラノ】 ティスがもらった卵から出て来た10cm位の小さな二足歩行のトカゲ!?生まれて四日後に突然、ムクムクと急成長して15cm位になる。


【サリナ 】 まだ若い冒険者だが、美少女テイマーであり冒険者ギルドでのアイドル的存在。ティラノの事を気に入って、ティスに話しかけて来た。

 鑑定結果があんまりだったので、ティラノを手に抱えたまま冒険者ギルドの外にでるためにトボトボと歩いていた。


 すると冒険者ギルドの入り口から若い冒険者の集団がワイワイと騒ぎながら入ってきたので、俺は道を開ける為に顔を上げて正面の集団を確認した。


 最近冒険者になった美少女テイマーのサリナが取り巻きの男性を数人引き連れて入ってきたところだった。

 この冒険者ギルドでのアイドル的存在だった。


 テイマーとしての才能があり、岩トカゲにスモールバットともう1匹は忘れたが、3匹のモンスターをテイムしていて、それだけでなく、中級の風魔法を使用できる多才の冒険者だった。


 俺には高嶺の花というか、見向きもされない路傍の石ってところだろう。


 冒険者ギルド内で何度か横を通り過ぎる事もあり、廊下の端に避けて通り過ぎるだけだった。


 今日も同じように横に避けて目も合わさずに通り過ぎようとしたところ、

「きゃぁぁぁ、可愛いぃぃ・・・。ねえ、あなた。こちらはあなたのモンスターなの?」


「はっ!?」


 いつもは目も合わさないはずの美少女テイマーのサリナが、俺のティラノに向かってきて声をかけてきたのだ。


 俺の目は驚きで点になってしまった。


「ねぇ、ねぇ、この白くて目がクリクリとしているモンスターはどこでテイムしたの!?もしも、差し支えなければ触ってもいい?」


「えっ・・あっ・・はい、大丈夫だと思うけど・・。なっティラノ」


 俺が手に抱えているティラノに声を掛けると、ティラノはいつもと変わらずにキャオッと鳴き声を上げた。


「ちょっとぉ・・鳴き声もなんて可愛いのよぉ~。なでていいのよね?」


「ええ、おとなしいから大丈夫ですよ」


 そう返事をすると、周囲の視線に気がついた。


 周囲の取り巻きの男どもから今にも殺されそうな視線が集中した。


 でも、俺から話しかけたわけじゃないからいいだろう。

 ちょっとっ、勘弁してくれよ。


 そう思いながらも、俺の顔の側にはサリナの笑顔があった。

 そして、サリナはそ~うと手を伸ばしてきた。


 さすがはテイマーむやみにモンスターに手を伸ばしてしまい、機嫌を損ねられたら自分に被害がでることをよく理解している対応だった。


 そして、サリナの手がティラノの背中に触れると、


 ピカァァァァァーーーーーー!!


 鑑定室と同じようにティラノの体が光った。


 今回も同じように一瞬で収まったが、サリナは涙目をしていた。


「ごっ、ごめんなさい。わっ・・私はさわっていいって言われたから触っただけなのに・・・・ごめんなさい」


「あわぁわぁわっ・・・違うよ。サリナさん。これは違うんだ。さっきも鑑定室で同じように光ったから、サリナさんとは関係ないよ」


 俺は慌てて、取り繕うようにサリナは関係ないということを必死で伝えた。


「そ・・そうなの。よかったぁ。私が何かしてその子を怒らせたのかとおもったぁ。怒ってないんだよね。よかったぁ」


「あのさぁ。よかったら抱っこしてみる。ティラノはまだ生まれて1週間しかたってなくて、赤ちゃんみたいなものなんだ」


 俺は驚かせたお礼と思ってティラノを抱っこするように提案しただけだったが、周囲の取り巻き達の視線は殺意が3倍位に上がった気がした。


 気にしてもしょうがないので、無視して、

「ティラノ、このお姉ちゃんに抱っこされても大丈夫かい?」


 キャオッ


 いつもと変わらずに鳴き声を上げていた。特に嫌そうでもなかったので大丈夫だろうと思った。


「大丈夫みたいですね」


 サリナは先ほどの光がまた起きたらどうしようと心配しているみたいで、軽く背中をタッチして何も起きないのを確認すると、すぐ近くに寄ってきて、すくい上げるようにティラノを抱え込んだ。


 長いさらさらの髪の毛が自分の顔をかすめて、柔らかくてすべすべの腕が自分の腕に絡むように入り込んできた。


 女の子が、しかも、これほどの美少女が近くに来ることなんて久しくなかったので、心蔵はバクバク言っていた。


 後ろの取り巻き立ちの視線は今にもデスの呪文でも唱えそうなほどになっていたのは無視をした。


 ティラノはサリナに抱っこされるとキャオッ・・キャオッ・・と嬉しそうに鳴き声を上げていた。その様子を見て、サリナは満面の笑みで喜んでいた。


 しばらく抱っこした後、同じように優しくティラノを返してくれると、

「この子、ティラノはとてもいい子ね。うらやましいわ。また、会ったら抱っこさせてくれるかしら?」


「ええ、いいですよ。喜んで!」


「本当っ!やったぁ。そうだ、あなたの名前はなんていうの?」


「ああ、ティスです。これからもよろしく。サリナさん」


 そうして、取り巻きの視線を交わしながら冒険者ギルドを出た。


 サリナさんの件でティラノのステータスの低さの事はすっかり忘れて少し心が躍りながら討伐依頼に向かった。

読んでいただきありがとうございます。


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