従魔登録
今日は冒険者ギルドにきている。
最近は、部屋でずっとティラノを眺めたり、触ったりしながら引きこもっていた。
お金や干し肉の貯えも減ってきたので、そろそろ討伐依頼を引き受ける必要が出て来た。
ティラノのサイズが30cm位になったので、部屋の中だけでの生活は不便である。
それに散歩にもつれて行ってやりたいので、町の中で生活できるように冒険者ギルドで従魔登録をするためだ。
ティラノを連れて歩くのは少し心配だったから、大き目のカバンの中に入れて肩から下げている。
最初は暴れるかと思ったが、意外におとなしくカバンの中に入っていた。
部屋の外を見るのは初めてなので、キョロキョロと色んな所を見ていた。
今生活している町では従魔登録を冒険者ギルドで兼任してくれている。
その事はわかりやすくて助かる。
登録は簡単だ。
用紙に記入して専用の首輪を購入するだけ。
だが、この専用の首輪が魔法具の為高額になるのが困りものだ。
その為、辺境の町では、従魔登録をする冒険者は少ない。
ただし、一括購入できない冒険者用に貸出と分割購入が出来る。
最初は弱いテイムモンスターも先々強くなれるので先行投資の意味がある。
従魔登録は金がかかるから大変なんだよな。
でもかわいいティラノの為だから仕方がない。
ただ、この状態で冒険者ギルドに行くのは少し嫌なんだよね。
普通に討伐依頼などはかまわないんだけど、僕の二つ名『最強のモブ』以外に、陰で存在する二つ名『使い魔冒険者』があるから、従魔登録をしに行くときっと裏でこそこそと噂されるんだ・・・。
「最強のモブが使い魔連れてるぞ」
「えっ、じゃあ。使い魔冒険者が使い魔連れて、ははっ、どっちが使われるんだろう」
こんな風にな。
影でこそこそ言われるのは慣れているからいいんだけど・・・。
まあ、さっさと従魔登録を終わらせて、討伐依頼を受ける事にしよう。
俺は受付のカウンターに並んだ。
ついでに、はぐれフォレストウルフの討伐依頼があったので、それを受けることにした。
岩トカゲの討伐依頼もあったが、なんだか、ティラノをくれたのが岩トカゲだったから、やめることにした。
「従魔登録をお願いします」
「えっと、その子でいいのですか?」
「はい、ティラノって言います」
「へぇ~。かわいいですね。でも、首輪は高額ですよ。一括購入されますか?」
「いいえ、分割でお願いします」
「では、月額銀貨1枚ですね。あと、初回のみ鑑定無料となっていますが、どうしますか?」
Dランク冒険者である俺が一か月銀貨10枚で細々と生活で来ているので、銀貨1枚はかなりの高額だった。
しかし、仕方がない。
ティラノの為だ。
「お願いします。討伐に連れて行くのにこいつの能力を知っておきたいですからね」
「あまり強そうにはみえないですが・・・大丈夫ですか?」
「そうなんです。だから、少し心配なんですけどね」
「初めて見るモンスターですね。種族名は何と言うんですか?」
「Tレックスです」
「見たところドラゴンではなさそうですが・・・あっ、鑑定の準備が出来たみたいですので、あちらに向かわれて下さい」
俺は受付に言われるまま、奥の部屋に向かった。
その部屋には鑑定士が座っていて、鑑定用の水晶がおいてあった。
「あの~、こいつの鑑定をお願いしたいんですが・・・」
「どうぞ、そこに座って・・・あっ、立ったままでも構いませんよ。モンスターの体の一部を水晶に当てて下さい」
「わかりました」
俺はそう言って、ティラノをカバンの中から抱えて降ろすと、尻尾をもって水晶に押し付けた。
ピカァァァァァーーーーーー!!
ティラノの体全体が光り出した。
しかし、それも一瞬ですぐに消えてしまった。
「えっと・・・モンスターのかんて・・」
モンスターを鑑定をすると体が光るのかと、初めてでわからないから聞こうと思った。
すると正面に座っていた鑑定士は口を開けて硬直していた。
「ごっほん。え・・・すみません。ちょっと初めての事で驚いてしまいました」
「えっ、モンスターの鑑定をすると皆光るんではないんですか?」
「はい、違います」
鑑定士さんが違うと言ったので、俺は慌ててティラノの全身を調べてみた。
しかし、ティラノは特に変わりなく、最後に顔を見つめた時には、キャオッといつものように、鳴き声をあげたので安心した。
「私も長年鑑定をしておりますが、人でもモンスターでも体が光ることは1度もありませんでしたので、思わず驚いてしまいました。すみません」
「あっ、それで鑑定結果は・・・」
「そうでしたね。えぇと・・・攻撃力F:防御力F:魔法F:力F:知力F:スピードF 身体能力はオールFですね。それから、特殊能力として『急成長』『可愛い』『変身』があります」
「へぇ、身体能力はオールFって強いんですか?」
「えぇと・・・申し上げにくいんですが、スライムと同等かと・・・」
「ちょっと待ってください。爪も牙も尻尾もあるんですよ。小っちゃいですけど・・・」
「そうですが・・・鑑定の結果ですから」
「間違いは?」
「ないですね。これ迄1度もありません。ですから、討伐には気をつけていかれて下さい。首輪高いですから」
鑑定結果を聞いて、がっかりしていた。
「ティラノ、お前を討伐に連れて行くのが心配になってきた・・・」
ティラノを見つめてそう言うと、きゃおっ・・・と変わらず鳴き声を上げた。
「お前は何時でも変わらないんだな」
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