サンドスネーク討伐 西の荒野(カラリア、タイランド、レイリア)6
カラリアはレイリアをねぎらおうと思って声をかけたのに、返ってきた返事はあまりものそっけない感じだった。
次の言葉を失ってしまい、これ以上の会話を続けられなくなってしまった。
しかし、レイリアの代わりに、討伐証明だけでも取ってあげようと思い、周囲を見回してサンドスネークの死骸を探した。
「ねぇ、レイリア。サンドスネークの討伐証明だけ、代わりに取っておくね」
「そっか、今回から必要なんだった・・・」
とりあえず声をかけると、うつむいたままだったけれども、独り言のようにつぶやいていた。
しかし、カラリアは今の言葉を聞いて、はっとした。
それは、これまでのレイリアの言動や行動にほんの僅かな違和感を感じていたからだった。
最初にレイリアを見た時、まるでベテランの冒険者のように見えた。
しかし、サンドスネークの討伐はⅭランクになって初めてギルドの依頼として受けることが出来る。
そう言う意味で、レイリアも我々と同じく、初めてのサンドスネーク討伐のはずだった。
あんなに落ち着いて、しかも2体のサンドスネークを同時に戦えるなんてことは普通考えたとしてもあり得ないことだった。
まあ、ランクアップ試験の時のレイリアの偉そうな態度から、きっと、強がっているだけだろうとカラリアは自分を納得させるように言い聞かせていた。
それが、”今回から必要・・・”という言葉を聞いて、その違和感の正体を理解した。
レイリアはすでにサンドスネークの討伐を経験している。
しかも、1度や2度といったわずかな経験ではなく、常習的に行っていたのだろう。
そうするとさ。
私が偉そうに伝えようと考えていた事、つまり、レイリアが魔法師の師事をうけていないのなら、中級魔法の指南位なら出来そうかも。
なんてことは、もしかしたらいらないかもしれない。
うわぁ・・そうすると、なんだか急に恥ずかしくなってきちゃったよ。
何とかあの話なかったことに・・・・。
いいえ、そういえばレイリアからの返事もなかったし、もしかして、聞こえてなかったかもしれない・・。
「ああ、それから、別に私討伐証明いらないから、勝手に持っていってかまわないわよ」
少しだけ、顔を上げて私の方に目を向けて、めんどくさそうに声を上げるとまたうつむいていた。
やはり、3体のサンドスネークとの戦闘はかなりギリギリだったんだろう。
でも、せっかく1匹を引き受けて、タイランドがぼろぼろになりながら討伐したのに礼の一言位あっても良さそうなのに・・・・。
ちっ、見た目の派手さ通りに恩知らずな感じがするわ。
カラリアはサンドスネークの牙と特徴のある尻尾の先をナイフで削り取りながら、口には出さなかったが、不満であった。
「あっ、そういえばサンドスネーク1体引き受けてくれたでんしょう。ありがとう。助かったわ」
不愛想な感じかと思ったが、少しだけ笑顔でお礼を言ってきた。
げっ・・恩知らずな感じなんて見た目で判断していたわ。
ああ、口に出さなくてよかったぁぁぁ。
でも、話があるって言ったのは、きっと聞こえなかったみたいね。
うん、うん、返事もなかったし、これはなかったことにしよう。
「そうだ。さっき、話があるって言ってたけど、あれ、何だったの?もしかして、魔法に関する事。中級魔法教えてくれるの?」
なんでぇぇぇ・・・・・いきなり口数増えて、しかも、内容に関して察しがよすぎるんだけどぉぉ・・・。
どうなってるのよ。
ねぇ、疲れてるんじゃないの?
それに、なんだか目をキラキラさせてこっちを見ているんだけど・・・。
まあ、ちょっと、可愛いわね。
「ええ、中級風魔法なら取得の為の協力ができるなかなぁぁってね。思っていたんだけど・・・そんなに強かったらいら・・・・」
「そんなことないよ。教えてっ」
「ないかなって・・・・・えっ」
レイリアは顔だけじゃなくて、体まで向けて、カラリアの話の途中から、食いつくように返事をしてきた。
「・・・・まあ、いいわよ。属性が違うから効率よくは出来ないかもよ」
「全然かまわないわ。私ね・・・人づきあいが苦手で、誰かに教えてもらったことはないの。・・・・でも、よかったぁ。これで、魔法のランクアップが出来るんだ。なんだか最近いい事ばかり起きている気がするわ。ランクアップ試験を受けてからよ。ランクアップなんていらないと思っていたけど、受けてよかったって思うの。本当よ。だってティス様やティラノちゃんに出会って、それから・・・・・それから・・・・・そういえば、あなた名前はなんていうの?」
真剣な顔でレイリアはカラリアの顔を見つめながら名前をたずねていた。
「いまさら・・・・そんなに堂々と・・・・あぁ・・・・わかったわよ。私の名前はカラリアよ。忘れないでね」
「ふ~ん。カラリアっていうのね。私の名前と似ているわね。覚えておくわ」
疲労感が強いのだろう。いつもの仁王立ちではなかったが、なんだか偉そうな口ぶりは相変わらずだった。
「ところで、カラリア」
もう呼び捨てかよ。
ティスさんの事はティス様って言っているくせに。
なんなのよ。
「一緒にいた彼はどこにいるの?まあ、別に構わないんだけどね」
「あぁぁぁぁぁぁ・・・・・・忘れてた。彼ね、タイランドって言うんだけど・・・・ちょっと頑張りすぎたみたいで、いま、荒野の向こうの方で休んでるんだけど、すっかり忘れていたわ」
「どうするの?置いてくの?」
「いや、いや、いや・・。しないよそんなこと。彼とてもがんばった・・・・・みたいなのよ」
そう言えば、怪我をして、サンドスネーク1体を討伐したことは聞いたけど、戦っている姿を見たわけではなかったのよね。
「そうなの?荒野の向こうにいて大丈夫かな?」
「あっちはなぜだかわからないんだけど・・・たぶん大丈夫じゃない。近くにはサンドスネーク達が見当たらなかったのよね。どうしてなのかな?」
「あそこにはサンドスネーククイーンがいるから・・・たぶん、他の魔物たちが近寄らないと思う。だから私も危険なんで近寄らないけど・・・」
カラリアはその場で心が凍るのではないかと思えるほどの心配な気持ちが湧き上がってきた。
傷は治ったけど、起き上がれないほどだったわ。
あのまま、横になっていて・・・・。
もしも、サンドスネーククイーンがあらわれたら・・・・・。
「ねえ。カラリア、何か考えているの?たぶん、すぐにでも迎えに行った方がいいんじゃないかな」
「えっ、ああ、そうね。ちょっと行ってくるわ」
「気をつけてね。私も少ししたら後を追うわ」
「ごめんなさい。お願いね」
カラリアは慌てて走り去っていった。
私がこの西の荒野で戦闘を行うようになって、2年くらいなるけど、サンドスネーククイーンなんて一度も見たことがないもの。
それにうわさでしか聞いたことがないから別にそれほど心配する必要はないと思うんだけれど・・・。
それよりも、もうすぐ日が暮れるわね。
聞いた彼の状態を考えると本日は宿泊になるかな。
レイリアは西の空を眺めながらボーっと考え事をしていた。




