2回目の急成長
登場人物
【ティス】 Dランク冒険者、『最強のモブ』という二つ名を持つ、才能無しの戦士。引退を考えた岩トカゲの討伐時、不思議な夢でもらった卵を育てる事になる。
【ティラノ】 ティスがもらった卵から出て来た10cm位の小さな二足歩行のトカゲ!?生まれて四日後に突然、ムクムクと急成長して15cm位になる。
ティラノが生まれてから6日が経過した。
朝、俺は何時ものように目が覚めてティラノを探すと、
すでに目を覚ましていて、トコトコと歩き回っていた。
いつものように「ティラノおはよう」と朝の挨拶をした。
するとティラノはクルッと振り向いた。
たまたまなのか、何かに気づいたからなのかわからなかったので、今度は「ティラノ」とだけ呼びかけてみた。
すると、やはりティラノはクルッと振り向いた。
間違いない。
ティラノは俺の声に反応している。
反応するということがわかると、嬉しくなり、何度も何度も呼びかけた。
相変わらず、声に反応して振りむく姿もかわいい。
その日の夜、
尻尾を振り振りしながらトコトコと歩いているティラノをあることを期待しながら見ていた。
それは・・・。
「ティラノっ!」
キャオッ
トコトコトコッ
「もう少しだ。ここまでおいで」
手のひらをティラノの前に添えると、ティラノは手のひらに向かってキャオッキャオッと鳴き声を上げて向かって来るようになった。
そんなティラノの顔を見ていると笑顔に見えるのは気のせいだろうか・・・。
それにしても可愛い。
目玉もクリクリとして、じぃ~と見ているとパチパチとしている。
やはり小さいは正義だ。
それに一つ気づいたことがある。
モンスターなのに表面はごつごつしてない。
体全体に真っ白な毛が体に沿って寝ているように生えている。
優しくなでてあげると、さらさらツルツルといった感じだ。
それも可愛さの一つだろう。
そんなティラノは部屋中をトコトコと歩き回っては、
防具に引っかかりこける。
剣に引っかかりこける。
お水の入った深皿を踏みつけて水浸しになる。
中でも驚いたのはベットから落下してしまったことだ。
ベットの高さはティラノの4倍位あるので慌てて確認したが、
ティラノ自体は何ともないようで、尻尾と手をうまく使って立ち上がりそのままトコトコと歩き出していた。
小さいのにやんちゃだ。
そんなティラノにもうすぐ変化が起こる気がする。
いつかって?
それは・・・明日だ。
卵から産まれて、4日目に最初の急成長があった。
とすると、次に急成長するのは7日目である明日になる。
まあ、3日毎に成長するとは限らないが、次はどれくらい大きくなるのか気になる。
そんなことを考えていると、その日の夜は眠れなかった。
ティラノの急成長を見逃したくない気持ちが強く、どうしても目がさえて仕方がなかった。
前回はティラノが眠っている時に急成長だったが、今回はすでに目を覚ましてトコトコと歩き回っていた。
「ティラノ。お前は今日成長する日じゃないのか?」
ティラノに呼びかけると、振り向いてキャオッと鳴くと、首をカクッと傾けて再び歩き始めていた。
なんだっ、今日は急成長の日じゃなかったのか・・・。
そう思うと、急に眠気が来たので、横になって仮眠を取ろうとした。
するとティラノはフラフラしだしてコトッと倒れた。
もしかすると・・・・。
俺は慌ててティラノに近づいて注視した。
しばらくはそのままだったが、ムクムクと大きくなり始めた。
おおっ、やっぱり3日事に大きくなるみたいだ。
今度はどれくらいになるか見ていると、
もう片手では乗り切らない位、どんどん大きくなってきた。
昼位までムクムクと急成長しながら、最終的には倍位の大さになった。
「ティラノもう片手には乗せられないな。成長早すぎるぞ」
眠っているティラノの横でそうつぶやきながら徹夜で気を張って起きていたが、ふっと気がゆるんでくると、俺はティラノの横で一緒に眠っていた。
◆◇
コツ・・コツ、コツ・・
俺は何かに頭をつつかれていることで目が覚めた。
するとティラノが鼻の頭で俺の頭をつついていた。
「あっ、ごめん。ティラノおはよう。お前おっきくなったな」
キャオッ
なんだかうれしそうに返事をしてきたように思えたが、すぐに違うと気がついた。
そうか、お腹がすいたんだな。
そう思って台所から干し肉を持ってきた。
急な依頼で、少し長めの旅になる時用に干し肉は買いだめをしている。
しかし、ティラノの食べる干し肉の量が多すぎてだいぶ少なくなってきていた。
「ティラノめちゃくちゃ肉食べるからな。そろそろ足りなくなってきた。買い出しに行くか」
買い出しに行くためには一つ問題があった。
ティラノを置いていくかどうかだ。
歩くスピードもこれまで以上に早くなり、ベット位なら軽くジャンプして登れるようになっていた。
もしもおいて行って、窓から抜け出たらきっとはぐれモンスターとして狩られてしまうだろう。
やはり、早めの獣魔登録が必要になるかもしれない。
それだけじゃない。
これだけ大きくなったら、
ティラノの食べる肉の量も膨大になるはずだ。
干し肉を購入していたら、俺の経済力では賄いきれない。
どうしよう!?
狩りに行くか!?
でも狩りに行くのに、独りでおいていけない。
狩りに参加させる!?
ティラノは戦闘が出来るのか?
よく見ると、成長して小さい牙が見えるが・・・。
そして生肉は食べるのか?
モンスターであれば食べるはずだが・・・。
わからない。
問題がおおすぎる。
こんなスピードで成長するなんて思わなかった。
可愛いけど・・・。
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