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すれちがい

あけましておめでとうございます。

少しだけ続きをかきました。

今回も途中までですが、気軽に読んでみて下さい。

たぬき

 う~ん。

 ミレイとは感動の再会だったはずなのに~。

 猫獣人のアイリスのおかげでなんだか変な雰囲気になっちゃったよ。

 今更感動の続きをするのも変だし・・・・・。


 まあ・・・いいや。


 それよりも、みんなに言葉をかけなきゃいけない。


「それにしても、二人のおかげで命拾いしましたぁ。本当に・・・本当に感謝します」


 感謝の言葉を伝えて、ティスは大きく頭を下げた。

 数秒後に頭をあげて周りにいた冒険者たちの様子に目を配ってみた。


 猫獣人のアイリスは相変わらずティラノをなでなでしていた。

 サリナはアイリスの変な質問のせいでまだキョロキョロしていた。


 そして、神官ミレイとはサンドスネークから追われる中で久しぶりの再会だったけど、あまりにも予想外のキャラクターに変わっていて実際どう話しかけるか迷っていた。


 そんな中、ティスは優しく声をかけてくれた当時のミレイを思い出していた。


 冒険者として成長できなくて皆の足を引っ張るようになっても、ミレイだけは違って最後まで声をかけてくれていた。


 最後まで・・・・。


 あれっ。

 あのメンバーから最後に声をかけられたのは・・・・・。


 よく思い出せなかった。

 シャナトからの最後の言葉があまりにも強すぎて、今考えても他の言葉は思いつかなかった。


 ていうか、よく考えるとミレイの事をそれほどわかっているわけではなかった気がする。

 当時、シャナトとは普段から色々話をしていたけど、ミレイとはパーティメンバーとしてどう戦うか話し合っていただけだだし・・・。


 あとは・・・辛い時に声をかけてくれたことは忘れられない記憶だったな。


 今更ながらにそんな昔を思い返しながら、チラッと神官ミレイに目を向けた。


 猫獣人のアイリスから変な言葉をかけられたことで感動の再会を中断してしまったが、ティスはミレイも同じように感動の再会をしているはずだと思っていた。


 あれっ・・・。


 神官ミレイを見ると、なんだかわからないが不機嫌そうな表情をしているように見えた。


 あれっ、なんだろう。

 俺の勘違いだったのかな。

 まあ、そうだよね。

 Bランクエリート冒険者の神官ミレイからすると、俺は万年Dランクの下っ端の冒険者だったわけだしな。


 当然と言えば当然の結果だよな。


 ティスはこうして皆に目を配ってみたが、自分の言葉に耳を傾けている様子は別段なかった。


 まあ、いっか!


 それに皆、冒険者だからあまりそんなかしこまったことは気にしないのだろう・・・。


 それなら俺も冒険者だから、気にしないでおくことにするか。


 ティスは気を取り直して西の空の太陽が沈んでいく様子を眺めていた。


 夕日のまぶしさに紛れて、実はそんなティスの事を嬉しそうにこそっと眺めている少女がいたが、全く気づいていなかったのは別のお話。


 ティスは自分の予想が当たった事に少し不安混じりにふっと声がもれた。


「やっぱり・・・・・もう少しで日が暮れるよな・・・」


「そうですね。今から戻っても途中で日が暮れてしまいますね」


 ティスの声にすかさず答えたのはサリナだった。

 そんな大きな声で言ったかなと、少し驚きながらも言葉を続けた。


「こんな場所ですが、野営の準備がいりますね・・・」


 照れくささもありティスは、サリナではなく皆に向かって提案をした。


「いや、そんな・・・・こんな、こんな所で一緒に夜をあかすなんて、そんなこと・・・まあ、そんなことが、あっても・・・いや、まだ、順番が・・・・」


 ティスは小さな声で何かもじもじ言っているサリナをスルーして猫獣人のアイリスと元「ライトニングバレット」のミレイの方を見た。


 そもそもティスたちはバラバラの冒険者が集まっているだけで、別にパーティを組んでいるわけではなかった。


 だから、この場にいる上位ランカーといえるAランクのアイリスやBランクのミレイにどうするか決めてもらうことにした。


「そうだニャン。私とサリナは討伐依頼の帰りだから宿泊道具は準備出来ているニャン。しかし、ティスくんとミレイは準備がなさそうだニャン。ちょっとまずいね。どうするニャンよ?」


 猫獣人のアイリスとビーストテイマーのサリナは冒険の帰りだったようで、宿泊セットを準備していた。


 ミレイはもともと旅の途中だったから、それなりに宿泊の準備はしていたが、サンドスネークに追われていた時、途中で道具一式を手放していたのだった。


 しかし、アイリスの言葉に対するミレイからの返事はなかった。


 ミレイは何かを考えているようだった。


 ◇◆


 実はミレイにはティスの”「こんな場所ですが、野営の準備がいりますね・・・」”という言葉も”「そうだニャン。私とサリナは・・・・・・・するニャンよ?」”という言葉も全く聞こえていなかった。


 その間、ミレイはティスへ謝るタイミングをどうするかを考える事で精一杯だった。ティスへの謝罪は自分で考えている以上に大きかったようだ。


「えっと・・・。私は・・・あの、ティ・・ティス・・・」


 ミレイはアイリスのお陰で変な雰囲気になってしまったが、ティスへの謝罪だけはしておかないといけないと考えて、勇気をだしてティスに声をかけるために、顔を上げずに目を向けた。


 しかし、ティスはミレイから目をそらしたまま空を眺めて何か別の事を考えているように見えた。


 ミレイはすぐに目をそらして気づかない振りをした。


 ちが・・・・う。

 もしかして、無視した・・・・・の!?


 そ、そうよね。

 私達の・・・いいえ、私のしたことをそんな簡単に許してくれるはずがないわ。

 ティス会えば、そして、謝りさえすれば関係は改善の方向に向かう。

 きっと、改善できると思っていたけど、そんなに甘くわなかったわね。


 ミレイ・・・わかっていたはずよ。

 ティスが簡単に許してくれるはずがない・・・。


 ミレイはアイリスのあの言葉が悔やまれた。

 あの時、勢いで謝ることが出来ていれば、今、こんなに悩むことはなかったかもしれない。


 でも・・・仕方ないわ。

 私達が犯した罪は簡単に償えるようなものじゃないからね。

 ・・・きっと、ティスはあの後、とても苦労してきたに違いないし・・・・。


 初級冒険者はパーティを組んでスキルや能力を向上させる。

 それによって強いパーティメンバーになったり、所属しているパーティと馬が合わなくなってもソロで活動を続けることが出来る。


 しかし、当時のティスにはスキルの開花も、能力の追加も現れなかった。


 そんな冒険者がパーティを追放されてソロになれば、その後は、なかなか他のパーティに入れてもらえることもなく、みじめな思いを続けることを余儀なくされる。


 そして、そんなみじめな思いをしたくなくてソロで活動を続けていくと、最終的には早期の引退もしくは無理をして冒険の途中で死んでしまうこととなる。


 当時の私達はそんなことを考えていなかったし、そんな風になるなんて気づかなかった。

 しかし、こんなに放置することもなく、もっと早くにティスを迎えに来ることも出来た。


 分かっていたのに、誰も何も言わずに、私達はそれすらしなかったのだ。


 ティスの事は目をつむって行くと暗黙の了解のようだった。


 だから、そんなきっかけを作った私達の事をティスが簡単に許してくれるはずがない。


 そっ・・そんな簡単に許してくれるはずがないじゃないっ!!

 分かっているわっ!

 そんなの、わかっていたはずだ!


 でも、これで終わりじゃない。

 だって、ティスはまだ冒険者だもん。


 そうだ。

 まだチャンスはある。

 ティスはいまだに冒険者を続けていてくれた。


 だから、私にはまだ許しを請う機会が残されているに違いないわ。


 たぶん・・・。


 昔の戦士としてのティスではなくて、おそらくあの小さなトカゲのようなモンスターのビーストテイマーとしてだけど・・・・・・。


 大丈夫かな・・・。


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