鑑定3回目
「そうですか。そもそも鑑定のスキルをもっているだけでも規格外なのに、さらにスキルコピーみたいなスキルを持っているって言うことになるんですね。やはり予想外過ぎる・・・。皆さん、少し整理させてほしいので、少し考えさせてもらってもいいですか?」
ギルマスは眉間にしわを寄せて難しい顔で何かを考え始めた。
と思ったが、すぐに顔を上げると、
「念のため現在のステータスの鑑定をしておいて下さい。ダイクさん頼みましたよ」
一言付け加えるように、鑑定士さんに鑑定を依頼すると、今度はぶつぶつと一人でつぶやきながら考え事を始めた。
鑑定士のダイクさんがいるということは、あらかじめ鑑定することは予定されていたようだった。
「ギルマスも言ってますので、今のうちに鑑定をしておきましょう。それにしても、この2ヶ月程度で3回も鑑定を行うことになるとは思いませんでしたよ。しかし、こんなにちっこい従魔がとんでもない能力を秘めているとはねぇ・・」
初めての時はそっけない感じのダイクさんだったけど、こう何度も鑑定していると少し雰囲気も和らいでいるように見えた。
「鑑定の仕方はわかっているよね。よろしく」
ティスはティラノを抱えて鑑定用の水晶に手を添えると鑑定が始まった。
「それでは結果を読み上げるよ。ステータスは攻撃力C:防御力D:魔法C:力C:知力D:スピードDです。それから特殊能力として『すごく可愛い』『変身』『鑑定』『風魔法:上級』『火魔法:上級』『魔法融合』これでおわり・・・えっ、まだ続くのか!?『HP自動回復(中)』『MP自動回復(小)』『移動速度上昇(小)』こんなに能力を持っているなんて・・・・あっ、もう一つありました。『忠誠心』ってこれは能力なのか!?」
「おいおいおいっ、何だよ、その特殊能力の数は!?Sランク冒険者に匹敵・・・・いや、それ以上じゃないのか!?とにかく明らかに俺よりも多いぜ。やべぇな・・・・・いや、ていうかもはや危険だといっていいんじゃねぇのか!」
ガイドロスは特殊能力の数があまりにも多すぎる為にティラノをかなり危険視していた。
それに対して、ギルドマスターは何も言ってこなかった。
「・・・・・・・・・・・・・・・グゥゥ~・・・」
「おいっ、こらっ、ダンっ。何寝てんだよ」
「はっ・・・すまない。昨日徹夜だったんで、考え込んでいたらそのまま、ちょっとねっ」
こんなんでギルマスやってていいのか!?
試験官めっちゃ怒ってるじゃないか!
「”ちょっとね”じゃねぇよ。頼むぜ、ダン。この従魔どうするんだよ!?鑑定結果は聞いていたのか?」
「すまないな。聴いていない。教えてくれ」
「ダイクさん、申し訳ない。もう一度頼むわ」
ガイドロスは情けない顔で鑑定士さんに頼んでいた。
威厳のあるギルマスだけどなんだかどこか少し抜けてるんだよなぁ。
「わかりました。問題はないですが・・・それでは鑑定結果です。ステータスは攻撃力C:防御力D:魔法C:力C:知力D:スピードDです。それから特殊能力として『すごく可愛い』『変身』『鑑定』『風魔法:上級』『火魔法:上級』『魔法融合』『HP自動回復(中)』『MP自動回復(小)』『移動速度上昇(小)』あと特殊能力なのかどうかわかりませんが『忠誠心』があります」
「なんだ!その、特殊能力の数は・・・・・・バカげてるぞ。モンスターがそんなに特殊能力をもってどうするんだっ!」
ギルマスはティラノの特殊能力の数に驚いていた。
うわぁぁーーーー。
『可愛い』が『すごく可愛い』にグレードアップしてるよ。
いやぁ、最近のティラノの可愛さは遠くからでも他人を引き付けるものがあると思ったんだよ。
ティスは完全にティラノの可愛さにのぼせ上っていた。
周りでは特殊能力の数の多さに違和感を感じまくっていたのに、ティスは相変わらずだった。
「ガイ、お前は一般的なCランク冒険者で特殊能力はどれくらい所持しているか知っているか?」
「3つか4つくらいか?」
ガイドロスは軽く考えて応えていた。
「外れだ。では、ティス君はいくつ持っているんだ?」
「私は特殊能力といっていいのか分からないけど、残念ながら『戦士』だけです。それで、少し前に、冒険者として続けるのをあきらめました。まあ、ティラノに出会ったおかげで続けていられるんですけど・・・」
「お前は1つしかもっていないのか!?それは何と不遇な」
ガイドロスはティスの特殊能力の少なさに残念な表情をしていた。
「私はそれでもかまいません。だって、ティラノがこんなにたくさんの特殊能力をもっているですよ。Aランク冒険者のガイドロスさんが驚く位なんです。私はもう大満足です」
ティスはティラノを片目で見ながら満足だということを身振り手振りでもって伝えた。
「そうかい、そうかい。それは幸せなことだな。なんだか危険を心配するだけ損な気持ちになってくるよ」
ガイドロスはティスの従魔に対する溺愛ぶりに心配するのをなんだか馬鹿らしく感じていた。
そんなほのぼのとした雰囲気を断ち切るようにギルマスが声を上げた。
「ティス君の特殊能力が特別少ないように思えるが実際はそうではない。一般的なCランク冒険者で、特殊能力を持っているのは2つが普通だ。その中で、数少ない冒険者がレア度の高い特殊能力を持っていたり、さらに少なくなるが3つ持っていたりするんだ。ガイ、お前は幸運にもレア度の高い特殊能力を複数所持しているんだぞ。かなり珍しいことだ」
「そうだったんだな。だとすると、やっぱり、この従魔の特殊能力の数は異常じゃないのか?」
「まあ、そう言うことになるな」
ティスは部屋の中が沈黙で満たされていることに焦りを感じていた。
ティラノもいつもは気にすることなく鳴き声を上げるのに今日ばかりは何も言わずに黙っていた。
「そう言えば、この従魔は『忠誠心』といる特殊能力をもっているんだったな」
「そうですね。特殊能力といっていいのかはわかりかねますが・・・」
鑑定士さんは初めて見る特殊能力だったので、その点を再度強調していた。
沈黙した空気を破るように、かつ、水面にひろがる小さな波が優しく広がるように、穏やかにギルドマスターが話し出した。
「昔、高ランクのビーストテイマーとパーティを組んでいた時に聞いたことがある。テイムされたモンスターにおいて『忠誠心』はテイマーとのきずなを表すそうだ。ただし、よほど心と心のきずなが強くないと現れないという。つまりだ、ティス君はこの従魔とそれだけの心のきずなを構築していると考えてもいいだろう」
「ダン、いいのか?」
ガイドロスは疑問を投げかけているようで、納得したといわんばかりに相槌を打っていた。
「ああ、大丈夫だ」
ティスは何が大丈夫なのか、一瞬、気づかなかったが、すぐにティラノの事だと気づくと自然と涙が出て来た。
「あの、ギルマス。私とティラノは一緒にいてもいいのですね」
「『忠誠心』があるんだから、問題ないだろう。お前たちはとてもいい関係なんだな。それと、あまり目立ってもらっても困るから、冒険者はCランクのままでゆっくりと上がって行ってくれるか?まあ、それでも、ランクの上昇はとめられんだろうがな。はっはっはっ」
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