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ランクアップ試験⑥ 試験は終わり!?

「よし、こちらの準備はいいからな。いつでも撃たせていいぞ」


「わかりました。では、よろしくお願いします」


 ティスは丁寧にお辞儀をすると、ティラノの側に近寄った。


「ティラノいいか?今日の敵はあいつだ!まずは最大級の魔法をあいつにぶつけてやるんだ。いいか?」


 キャオッキャオッ!!


 ティスはこれまでの戦闘を見ていて少し気負っている所があったが、ティラノは何も変わらずにいつも通りだった。


 その姿をみるとティスは何だが一人で気負っているのが、間違いのように思えて来て、


 なんだがいつも以上にティラノと心が通わせることが出来ているように感じた。


「よしやれっ!!」


 ティスの2回目のかけ声でティラノの周りに風が巻き起こってきた。


 ティラノの風魔法 中級でいつも使っているウインドスラッシャーが起きるときと同じ現象だった。


 よし、いつも通りだ。

 このままその風をまとめて、試験官にぶつけてやれっ!


 ティスはそう思ったが、いつもよりも風がどんどん強くなっていった。


 あれ、いつもよりも風の勢いが強いな。


「ほう、風魔法か?・・・・その、風の流れなら中級レベルか!?なかなかちびっこいのにやるじゃないか」


 ガイドロスは見た感じ爬虫類であるから火魔法か風魔法の初級レベルが使える程度だろうと考えていた。


 中級レベルの風魔法ならウインドスラッシャーかトルネードあたりかな!?

 どちらも高威力の魔法だからな。

 生成に多少の時間がかかるが、遠距離攻撃で倒すなら丁度いいんじゃないのか。

 見たことのないモンスターだが、見た目以上に強いかもしれんな。


 ・・・と、それよりまだ生成が続いているんだが・・・。


 自分の所まで生成の風が届いている時点で普通なら魔法が完成されているはずなのに、一向に飛んでこないことに魔法作成に失敗したのかと考えた。


 なんだ!?

 まだ、風は止んでない・・・・いや、さらに大きくなっている。

 まて、それは風魔法なら上級レベルの生成風じゃないのか?

 こんな場所でそんな魔法をぶっ放したら、けが人が出るだけでは済まないぞっ!!


「おっ・・おい。ティス君その子は何の魔法を撃とうとしているんだ。いや・・・そうじゃない。すぐにその子を止めるんだ。早くっ!早くっとめろっ!!」


「えっ、あっ・・・はい。ティラノっもういいぞ。魔法中止だ」

 キャオッ

 ティラノは鳴き声を上げると同時に周囲を巻き上げていた風が無散していった。


「ガイドロスさん。どうしたんですか?ティラノはなんかちょっと調子が良かったみたいで、いつもよりも少し魔法が強かったみたいですが・・・・・その~頑張ったということにしてもらえませんか!?」


 ガイドロスはティスの答えが耳に入ってこなかった。


 あの風量はどう考えてもほぼ上級 風魔法だろう。

 それだけじゃねぇぞ・・・魔法を終了させる直前にちらっとだが確かに見えた。

 とても小さいがあれは炎だった。

 絶対見間違いじゃねぇ。

 そうなるとあのちびっこいのが上級風魔法に炎を融合させようとしたって事か!?

 そんなわけない・・・・・。

 そんなわけ・・・・。

 しかし、もしも・・・もしもよ。

 あのちびっこいのが融合魔法を完成させようとしていたとしたら、

 いや・・・・やっぱり、俺の気のせいだ。

 見間違いに違いねぇ。


 ガイドロスは小さな愛玩ペットのような爬虫類にどうしてそんな大それた魔法が使えるのかどうしても信じられなかった。


 なので、自部の目で見たものを信じられなかったので、必死に自分に言い聞かせていた。


 ふと気がつくと周りの視線が自分に向かっていた。


「おっ、すまねぇ。ちょっと考え込んでいたみたいだ。どころでビーストテイマーのティスだったか!?今こいつが使おうとした魔法は何だったんだ?」


 ティスは突然尋ねられて一瞬困ってしまった。

 それは、いつも使っているウインドスラッシャーよりも生成風が格段に強かったからだった。


「えっと・・・この前の岩トカゲ討伐で使ったのはウインドスラッシャーなので、たぶんちょっと強力なウインドスラッシャーじゃないかと・・・・」


「ちょっと待て、あの生成風が中級魔法だっていうのか!?いくら何でもそれはねぇよ。そんなレベルの風魔法じゃなかったぞ。・・・・・もしかして、初めて見たのか?」


「はい・・・・鑑定では風魔法中級しかありませんでしたし、それ以外の魔法は使えないはずです」


「そしたら火属性の魔法は使えないということか!?」


 ガイドロスはティスが鑑定で風魔法だけだといったので、念のために確認してみることにした。


「はい、使えないはずですし、一度も使ったことはないです」


「そうか。わかった。しかし、試験はこれで終了だ」


「えっ、まだ何もしてないですが・・・・」


「いいんだよ。終了だ」


 ガイドロスが終了の発言をしたことで、周囲に同様が走った。


 これまでの3人の攻防は、ランクを超えた激しさがあったのに、魔法1発ですら発動していないのに中止になり拍子抜けしていた。


「もう終わり!?」

「ランクアップ試験はこんなんでいいの!?」

「もしかしてあのちびっこいのはだめだったのか!?」

「でも、魔法の風は凄かったね」

「あんな風は台風の時くらいだったな」


 周囲で色んな会話がなされていた。


 そんな中ティスは何が起きたのかわからずに、茫然とするだけだった。

 そんなティスをティラノは目をパチクリパリクリと見つめていた。


「今回はだめだったのかもな。次頑張ろうな」


 キャオッ


 ティラノは1度鳴き声を上げると少し沈んだ顔になっていた。


 ティスはこれまで上級魔法を見たことがなかったので、ティラノが発動しようとしていた魔法の威力が全く分かっていなかった。


 そのため、試験を中止されたということは、Cランクに該当しないレベルの魔法だと思い込んでいたのだった。

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