ランクアップ試験⑤ vsティス&ティラノ
レイリアは身体強化魔法で強化した状態でガイドロスに向かって突進した。
さらに、風魔法で後方から自分を推し進めることで、最初に飛ばしたウインドカッターに追いつきそうな勢いが出ていた。
「もう来やがったのかっ!」
ガイドロスはサイドステップでウインドカッターをよけたものの、今度はレイリアのシミターによる連続切りがやってきた。
致命傷はないものの、レイリアのシミターによる攻撃は少しづつダメージを蓄積させる危険があるとガイドロスは感じて来た。
シミターの連続攻撃で少しづつだが出血も増えて来たな。
まあ、急所狙いではないのはましだな。
それでも、防御の少ない足への攻撃が多くしてじわじわと耐久力を下げていく作戦なのか!?
ガイドロスは何気なく自分の体に視線を飛ばした。
違うくないか!?
これは明らかに足狙いだ。
レイリアは適当に撃ち込んでいるふりをして、足を狙って機動力を落とす作戦かっ!
そりゃそうだよな。
いくら耐久力があるとはいえ、まだ、若い少女だ。
持久戦に持ち込むはずがない。
なんて作戦だよ。
本当にこれでDランク冒険者なのか!?
ガイドロスはレイリアの作戦に気づいた以上、このままで行くのはだめだろうと思った。
「悪いが終わらせてもらうよっ!大・切り・斬っーーー」
ガイドロスはバックステップでレイリアから少し距離をとると、横なぎに剣を振り切った。
剣の勢いが空を切り裂き、その結果大気が押されて、押された大気はレイリアに向かって暴風となり、勢いを増して向かって行った。
「きゃぁぁぁーーーーーーっ!」
体の小さいレイリアは転がるように後方に飛ばされていった。
勢いが止まりレイリアが立ち上がろうとしたところで目を向けると、目の前にはガイドロスが仁王立ちで剣を向けて立っていた。
「参りました」
「まさか大切り斬を使わされるとは思わなかったぞ。よし次だ・・・・と言いたいが、少し休憩させてくれないか」
ガイドロスはティスに向かって声をかけた。
レイリアとの対戦で体全体に傷を負っていた事と大技を使ったので体の疲労が残っていたのだ。
「はっ、はい。大丈夫です。ゆっくり休まれて下さい」
その時、聞こえてきたのはティスの答えだけだった。
観客は口を閉ざしたように黙りこくっていた。
Aランク冒険者であるガイドロスに余裕のない声が出ていたことで観客は皆茫然とせざるを得なかったのだ。
しかし、パラパラとまばらに拍手が起きはじめると、次第にその拍手に喝さいが混じり、最終的に大喝采が起きた。
周囲のあちらこちらで「今日のランクアップ試験はどうなってるんだ!?」や「あれはほんとにDランク冒険者なのか!?」などと驚きと感嘆の混じった会話が繰り広げられていた。
ガイドロスは休憩しながら、ビーストテイマーとの試験をどうするか考えていた。
あんなにちっこいモンスターに気をつけるところがあるのか!?
見るからに岩トカゲ程度の強さと考えてもいいんじゃないのかな!?
バンが気をつけろと言っていたがどうするか・・・。
ガイドロスは何度見ても爬虫類の愛玩ペットにしか見えなかった。
ギルマスのバンクロッドはガイドロスに【鑑定】持ちだから気をつけろとしか伝えていなかった。
本来であれば誕生して間もなくに【風魔法 中級】などを取得していた事を伝えるべきであった。
しかし、【鑑定】持ちということが注目を浴びすぎた為に、その点がおろそかになっていたのだ。
まあ、少し気をつけるだけでいいんじゃないかな!?
おそらく、これ迄の3人のような規格外ではないだろう。
まあ、バンもこの3人の規格外さは気づいていなかっただろうから。
ガイドロスは少し休憩した後、HP・MP・SPそれぞれのポーションを飲んで体力他を回復させた。
一応何があっても対応できるようにしておいたのだ。
「ビーストテイマーのティス君だったかな。さあ始めるとしよう。ところでそのモンスターには名前があるのか?」
「はい、ティラノといいます。風魔法が使えるので魔法込みで戦いますが・・・」
「もちろんかまわないよ。全力でかかっておいで、それからまあサービスとしてまずは魔法を一発撃たせてあげるからね。きちんと伝えるんだよ」
ビーストテイマーのランクアップ試験はもちろんモンスターの強さも必要だ。
しかし、戦うモンスターがビーストテイマーであるホストのいうことを聞き入れるかの方が、最も重要な判定基準だった。
そんな判定基準があるとは知らなかったが、ティラノはティスのいうことをきちんと聞き入れることが出来るのでその点は問題なかった。
これまでの試験での戦いを見て来た観衆は、ティラノの姿があまりにもちびっちゃくて可愛らしかったので、前に出てくるとほのぼのとして、優しい応援となっていた。
「おうっ!そのちびっちゃいのっ頑張れよっ」
「あまりむきになって殺されるなよっ」
「ティラノちゃーーん可愛いよ~~」
「あんな試験管なんかやっつけちゃえ~~」
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