ランクアップ試験
「ふぁぁ~~。今日はいい天気だな」
トスカーナ産のカフィールを飲みながら男はつぶやいた。
「そう言えば、今日はランクアップ試験の日か・・・」
コツンッ
カフィールの入った銅製のコップをテーブルに置くと、めんどくさそうにテーブルの上に置かれていた一枚の紙を手に取った。
「今日の受験者は4名か。戦士に魔法師に・・・なんだぁ~ビーストテイマーかっ!戦士はいいとしても、他はめんどくせぇなぁ。それにバンからのたっての希望だしなぁ。仕方ねぇか」
受験者情報の乗った紙をテーブルの上に投げ捨てるように置くと、カフィールの残りを一気に飲み干した。
そして、テーブルの側に立てかけてあったロングソードと防具一式を丁寧に装着していった。
男は防具装着の不備がないかを確認すると、そのままドアに向かって歩き出した。
「そう言えば、バンから今日の受験者は情報をしっかり確認するように言われてたっけか!?なんか、癖がつえぇ奴ばっかりだっていってたしな」
テーブルの上に投げ捨てた紙をもう一度手に取って確認を始めた。
「えっと・・、戦士はロングソードで火魔法を使うのか。火魔法か近距離戦ではめんどくせぇ技を使うんだろうな。魔法師は一人がシミター持ち!?なんだそれは、魔法師のくせに剣士気取りかよ。ちなみに風魔法メインか。で、もう一人は水魔法ね。あとは、ビーストテイマーだけど・・・・レア種で鑑定持ち!?はぁ。モンスターが鑑定をもっていても意味ないじゃん・・・・・って、そうでもないか。もしかして、今回一番めんどくせーのってこいつじゃないのか?バンの奴め。この事は秘匿するつもりだな。まあ、公に出たら間違いなくめんどくせー大賞だもんなぁ。あ~あ、今から大雨でも降らないかな」
雨なんて全く降りそうにないくらいの良い天気だった。
男は嫌々ながらも、もう一度装備を点検して家をでると、冒険者ギルドに向かった。
◆◇
「ティラノ今日はいい天気だな」
ティスは朝早くから何となく落ち着かなかったこともあり、早めに家を出ることにした。
ティラノの調子も良さそうで、キャオッキャオッと元気に鳴き声を上げていた。
「ティラノ。いつものお前の戦いを披露すれば問題ないからな。今日は受験者が俺以外に3人もいるからおそらく見学者も多いに決まっている。緊張しなくてもいいからな」
宿の入り口でティスは大きく深呼吸をするとその場でティラノに向かってゆっくりと緊張をほぐすように声を掛けた。
普段、冒険者ギルドに行くときは、あまり他の冒険者に会いたくなかったので、出来るだけ人の少ない時間を狙って依頼を受けに行っていた。
しかし、ランクアップ試験は新しいCランク冒険者を披露する側面もある為多くの見学者が集まるのだ。
「まあ、ティラノはモンスターだから、周りの冒険者達は気にならないかもしれけどな」
ティスはティラノの頭をなでなでしながら、気負わなくていいと声をかけていた。
「実際、気負っているのは俺の方かもしれないな・・・はははっ」
ティスはティラノがいつもと変わらないので、それを見て、逆に自分を落ち着かせていた。
冒険者ギルドまでの道のりは、ティスにとっていつもと変わらない、いつもの道だったが、今日は何だかいつもと違って見えた。
左腰にトムじいさんにもらったロングソードを下げていると、まだ、なってもいないのにCランク冒険者に成ったような気持になっていた。
「浮かれ気分で試験に臨んで、不合格だったら恥ずかしいもんな。気を引き締めていこう」
ティスは気を引き締めて、いつも通りの自分に戻って歩き始めた。
冒険者ギルドまでゆっくりと歩いていった。
到着して中に入ると、早朝ということもあり特に冒険者の人達もあまりいなかった。
今日は依頼を受けるつもりがなかったので、そのまま、まっすぐに受付に向かった。
「おはようございます。少し早かったですけど筆記を先に終わらしたいのでお願いできますか?」
「全部で3枚分ありますので、昼前までに全部記入して持ってきてくださいね。あと、名前を忘れずにお願いしますよ。時々、忘れる方がいらっしゃるので、こうして声をかけているんです。はい、どうぞ」
Cランク冒険者のランクアップ試験では筆記試験があるが、これはその場で記入しても構わないし、持ち帰って記入しても構わなかった。直筆で記入さえしていれば仲間に尋ねても構わなかった。
確認後は、本人に返却されるので間違った内容を覚えているよりも、冒険者にとって正しいメモとして持ち歩いてもらうことを重要視している。
ティスにとってはこれまでDランク冒険者としての期間が長かったので、全て記憶している内容だったのでその場で記入して提出した。
「ティスさん。筆記試験は確認をして実技試験後に返却しますね。後は、ギルド会館裏の大型モンスター解体所で実技試験がありますので遅れないようにお願いします」
「そうだ。今日の試験官はどういった方がされるんですか?」
「試験官ですね。名前はガイドロスさんです。Aランク冒険者で職業は戦士ですね。「風のゆりかご」っていうパーティに所属しています。下位ランクですがアースドラゴンを討伐した記録があります。そのパーティでは前衛を任されていて、耐久力と攻撃力それに突破力に定評があるんですよ。それと、ギルドマスターとは同じパーティいたこともあり古い友人といわれていますね」
「へぇ~、すごい人が試験官なんですね」
「いつもはAランクでも下位の冒険者の方にお願いするんですが、今日は上位Aランクの冒険者であるガイドロスさんが試験官をされますね。珍しい事ですが、過去にないわけではないですからね。とにかく怪我をしないように頑張って下さいね」
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