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トムじいさんの店

 ランクアップ試験までの3日間は特に何もせずに過ごしていた。


 討伐依頼を受けてけがをしたらいけないとか、疲れすぎて当日調子を崩したらいけないとか、風邪をひいてはいけないとか考えるとどこにも行けずに部屋でゴロゴロとしていた。


「ティラノぉ~、暇だな。最近は毎日岩トカゲの討伐に行っていたから、急に暇になると困るよな」


 ティラノを膝の上に乗せて、頭をなでなでしながら話しかけていた。

 相変わらずキャオッキャオッと元気な鳴き声で返事をしてくる。

 力が余っている感じだ。


「そう言えばこの1ヶ月は一度も武器のメンテナンスに行ってなかったな。大体お前が戦っていたから、武器の消耗もほとんどないや。そうだ!お金も少し増えたことだし、ちょっと武器と防具を新調してみようかな」


 ここ数年は生活費の足しにするために、岩トカゲの討伐を定期的に行っていた。


 あの硬い皮膚のある岩トカゲとの戦闘では武器の消耗もそれなりであった。


 これまで金銭的に余裕がない生活を送っていたので、なかなか武器を購入することは難しかった。

 その為、費用を削る為にも修理をすることが多かった。


 俺がよくいく武器屋はドワーフのトムじいさんのお店だった。


 高級品を置いているような綺麗な店ではなく、どちらかというと汚いが、まあ、それなりにこぎれいではあった。


 扱っている品物も中、低級品の武器防具で、俺のような才能もない冒険者やお金のない新人冒険者が初めての武器防具をそろえる為にやってくるようなお店だった。


「こんにちは、トムじいさん」


 お店の中に入ると、こちらへは背中を向けて何か作業をしていた。


「トムじいさん、客だぞ。客が来てやったぞ」


 挨拶をしても返事をしてくれないので、ティスはからかうようにもう一度声を掛けた。


「うるさいのぉ。今忙しいんじゃ。んで、誰だ?」


 トムじいさんはわずらわしそうな声で返事をしながらこちらを見た。


「おお、ティスじゃないか!久しぶりじゃのぉ。生きておったんか?久しく顔を見せんかったんで、死んだかと思って追ったぞ」


「もう、トムじいさん。ひどいじゃないか!!」


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。冗談じゃよ。それにしても1ヶ月ちょっとぶりじゃの。武器のメンテナンスは大丈夫なのか?それとも、何か・・・ペット屋でも始めるのか?」


 トムじいさんはティラノに視線を移すと笑いながら答えた。


「違うよ。とにかく紹介させてくれ。この子はティラノていう名前で、種族はTレックスだと・・・たぶん。それで、こう見えて、この子はかなり強いんだぞ」


「名前はティラノで種族はTレックス・・・ほぉ~変わったモンスターじゃの。・・・ということは、ティス。お前ビーストテイマーになったのか!?」


「え~と、正確にはまだだけど、明日ランクアップ試験があるんだ。その時に、職業をビーストテイマーでCランク冒険者になるんだ」


「Cランクって・・・おまえ・・ティス、おまえ・・・ランクアップできるのか!そりゃ・・・本当に・・・良かったなぁ」


 ◇◆


 トムじいさんとはもう10年位の付き合いになる。


 最初にこの店に来てから、こんなに長く通うことになるなんて思ってもいなかった。


 この町で冒険者をすると決めて、最初に武器防具屋をたずねたのは、トムじいさんの寂れた店ではなかった。


 将来高ランクを目指していた俺は大通りにある高級品店に入って行った。


 そこに並んでいたのは、ドラゴンの素材をふんだんに使用した鎧や盾にミスリルゴーレムの素材で出来た武器など親からもらった金貨1枚では手の届かない高級品の数々だった。


 きらびやかに飾られてそれはそれは強そうな武器防具ばかりだった。


 12歳の俺はキョロキョロしながら店内を眺めていた。


 手が届かない高級品だったが、それでも詳しく聞いてみたくなり店員に声を掛けたが、全く相手にされなかった。


 声を掛けたにもかかわらず、返事すらしてくれなかったのだ。


 俺はその時くやしくてしょうがなかったが、すぐにその店を出てトボトボと歩いていた。


 そんな時に声をかけてくれたのがトムじいさんだった。


「おい坊主、何くだらない顔をして歩いているんだ!」


 高級品店で嫌な思いをした直後に『くだらない顔をして』なんて言われて、むしょうに腹が立って声をかけて来たドワーフをにらみつけた。


「ほぉ。なかなかいい顔をするではないか!」


 すると返ってきたのは予想外の返事だった。


「坊主ちょっと中に入れ」


 何なんだこのドワーフは、何を言っているんだ。

 何でついて行かないといけないんだ。

 しるかっ!


「何やっとるんだ。とっとと来ないかっ!」


 無視しようとしたら怒鳴られてしまい、ビビった俺はそのまま中に入って行った。



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