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アイリス

 あの取り巻き達の殺人視線が嫌だなぁと思いながらも、声を掛けられたからには振り返るしかないと思って、顔を向けた。


 あれっ!

 いつもの取り巻き達がいないぞ。

 どうしたんだ。

 でも、ちょっと・・・いや、かなり、ホッとするわ。


「やあ、こんにちはサリナさんじゃない。どうしてロックキャニオンにいるんだい?」


「えっと・・・あの・・ですね。ティスさんが・・・いえ、何でもないです。つまり、そう・・・たまたま、たまたまですよ。討伐依頼の帰り道で通りかかったら、ティスさんの姿が見えたので・・・・ていうか、私の連れが、どうしてもティラノに会いたいっていうんで連れてきたんです」


 サリナに理由を聞いたら、なんだか的を得ない変な理由を並べ立てていたので、何を言いたいのかよくわからなかった。

 それでも、ティラノに会いたいっていう人がいると説明されたので、どの人が会いたいのかとても興味がわいた。

 可愛いティラノを好いてくれる人が、一人でも多く増えてくれると思うとそれはそれでたまらないっ!


「・・・で、そのお連れの方は、そこでもじもじされているお方ですか?」


 サリナの後ろでローブをかぶっている小柄な人が、俺とサリナが話をしている時からずっとそわそわもじもじしていたのだ。

 ローブの中からキラリと光る瞳がすごく嫌な予感をさせていた。


「え~と、この子はアイリスっていうんだけど、爬虫類系統の生き物がとても好きなの。それで、今回の討伐の時にティラノの事を話したら、絶対、絶対、ぜ~ったいに紹介してとそればっかり頼まれていたんだ。だからここを通りかかった時にティスさんがいたので丁度いいとおもって連れてきたんですよ」


 ローブの中からなんだか吐息が漏れて来ているように見えるのは気のせいだろうか。

 とにかく、早めに紹介を終わらせてもらわないといけないかな・・・・。


「そうかい、そうかい。ティラノを可愛がってくれる方はだれでもいいですよ。この子の可愛さを共有できる方が増えると思うと、それだけで俺ももじもじなってくる・・・なんてね」


「ねえ、ねえ、いいの。サリナ、もういいかにゃ。私もう抱っこしたくてたまらにゃいんだけど・・・。もう、心臓がバクバクいって止まらにゃいよ」


 ローブのフードの中から、さっきの2倍位目を輝かせて、息も荒々しく声を上げて来た。

 少し痛い子なのかと思ったが、聞こえてくる声はとても澄んでいて幼い感じがした。

 それだけでなく、ホッとするような優しさも感じられた。


「ティスさん、アイリスは普段はこんな子じゃないんだけど、爬虫類系のテイムされたモンスターを見ると少し壊れちゃうんだよね。という訳で、ティラノを抱っこさせてもらえますか?」


「それなら、遠慮なく。いいよな、ティラノ?」

 キャオッ!!

 ティラノは嬉しそうに返事をしていた。


 それにしても、ティラノがなんだかいつもよりも少し嬉しそう返事をしたように見えたのは気のせいだろうか!?

 フードはかぶったままだから、よくわからないはずなのに・・・・。


 そう思ったが、ふとティラノは鑑定を持っているので、

 もしかすると何か鑑定で気になることでもあったのだろうかと考えた。


 しかし、アイリスさんが頭にかぶっていたフードを取った時、俺は思考停止した。


 太陽の光でアイリスの髪はキラキラと銀色に眩しいくらい輝き、その綺麗で柔らかそうな毛先はくるくると跳ねていて、フードが後ろに下がる動きに合わせて後ろに流れていた。

 目は大きくて、ティラノを見つめる視線はパチクリパチクリと瞬きを繰り返していた。

 だた、人と思っていたがそれとは違い、猫耳が頭の上にちょこんと乗っかって、パタパタしていた。


 アイリスは猫の獣人モフモフだった。


 しかも、サリナに負けず劣らずの美少女だ。


 ああ、美少女に美少女獣人がセットになるのは世界の損失だよね。

 そこに居るだけで、偉大にして孤高なるオーラが輝いているよ。

 ティスは思わずどうでもいい事を考えていた。


 ティスは冒険者として、長く過ごした経験から何度も獣人を見て来た。

 そして、猫系統の獣人は大体美形であったが、いつも、すました顔をしていて少し関わりにくいと常々思っていたし、ティスにとっては実際にそうだった。


 それなのに、目の前に走ってきているアイリスは猫系統の獣人の中でもトップクラスじゃないかと思える位可愛かった。


 だけど・・・、


 へぇ~猫の獣人もこんな可愛らしい顔をすることがあるんだ。


 かなりデレデレした表情だったが、元がいいのでそれはもう十二分に可愛いと思った。


 アイリスは側まで走ってきて、そのまま、ティラノを抱きかかえるかと思ったら、

 ティラノの前で一度立ち止まった。


「あ・・・あの、わ・・私はアイリスですニャン。ティラノちゃん。抱っこさせてもらってもいいかにゃ?」


 ティラノの正面で少し、緊張気味だったが、アイリスは丁寧に声をかけて来てくれた。

 しかも「ニャン」付きで!!


 アイリスは他の猫の獣人とは違っていて、ティスは少し驚き戸惑っていた。


 すると、ティスをしたから覗き込むようにパチクリと1度瞬きをしてお願いするように見上げて来た。


「はっ、ご・・ごめんなさい。いっいいですよ。さあ、どうぞ」


 近距離であのお願いは強烈なアッパーカットに見えた。

 ティスは心臓がドキドキなりながらも、何とか答えを返すことが出来た。


「あっ、もしかすると・・・・」


 ティスはティラノが初めて触る時に、光ることがあるのを思い出してそれを伝えようとしたが、


 ピカァァァァァーーーーーー!!


「キャァーーッ、ゴメン・・・ごめんなさいにゃん。私が悪かったニャン」


 アイリスがティラノを触った瞬間に、やっぱりピカッと光った。

 光った事で、アイリスは素早くティラノから手を放して、何度も謝っていた。

 しかも、目には大粒の涙をためて・・・・それが、太陽に反射してキラキラと輝いていた。


 ティランはきょとんとアイリスを見つめていたが、

 キャオッ

 と一度、可愛く慰めるように鳴き声をあげていた。


「アイリスさん、大丈夫です。本当、大丈夫ですからねっ。今度は光らないから抱っこしてあげて下さい。頭を撫でると、少し喜びますんでそれも、ぜひっ!」


 俺は慌てて、アイリスを安心させるように促した。


「うん、うん。分かったニャン。ティラノちゃん。わたしはアイリスだよ。これからよろしくね」


 アイリスは抱っこして、何度も何度も可愛い可愛いといって、頭をなでなでしていた。

 すると、サリナが「私もなでなでするよ~」と言い出して、荒野のロックキャニオンで黄色い声がしばらく鳴り響いていた。


 それを側で見ている俺も眼福!眼福!とその姿を見続けていた。


 今日は、射殺される心配がないのでそれはもうゆっくりと・・・

読んでいただきありがとうございます。


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