『ライトニングバレット』の神官ミレイ
ミレイはあれから数日間、部屋にこもりっきりだった。
シャナト達が借りている宿屋では、さすがにばつが悪くて、
自分の荷物を簡単にまとめて別の宿屋に部屋を借りて過ごしていた。
「あーーーなんかむしゃくしゃするわぁーーー。大体なんで私が引け目を感じていなきゃいけないの。悪いのは全てシャナトじゃない」
枕に向かって、大声で文句を言っていた。
「もうーーー部屋にこもりっきりだから、こんな気分になるんだわ。せっかくだから少し体でも動かしておきたいわね・・・」
ミレイはテキパキと装備を整えて、王都の2番街にある冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに到着すると、受付にはこれまで担当してくれていた女の子が座っていた。
昼過ぎの冒険者ギルドはいつもと変わらずに暇そうにしていた。
「おはようございます。ミレイさん、今日はお1人ですか?」
「ええ、そうなの。少し体でも動かしておこうかなって」
「へぇ、ミレイさんはこないだの討伐依頼であまり怪我はしなかったんですか?なんか散々だったって聞いてますよ」
冒険者ギルド内で受付があまり他の冒険者の事を話してはいけないんだが、
この受付は先日の大喧嘩の事は知らなかった為、ペラペラと話してくれた。
「私は丁度用事があって、その依頼には行ってないんだけど・・・」
「私も詳しい事は知らないですが、リーダーのシャナトさんは猛毒を受けて死にかけたけど、仲間に助けてもらって、なんとか命からがら逃げて来たそうなの。依頼は失敗で高級ポーションに高級解毒薬を多量に使ったって聞きましたよ。神官のミレイさんがいれば大丈夫のはずなのにどうしたのかなって思っていたんですよ。でも、そう言うことだったんですね」
受付は一人でうなずいていた。
うなずきながらも、受付の子の目がキラっと輝いたように見えた。
ミレイはそんなことに気づかづにシャナトが猛毒を受けたことを聞いて考え込んでいた。
もしかして、あの後私抜きでバジリスクの討伐に行ったのかしら。
きっとあのシャナトの事だから、事前に準備なんか何もせずに、
「俺のライトニングがあればいちころさっ」みたいなことを言って向かったに決まってるわ。
それにしても、死んでなくてよかったわよ。
私が急に抜けたせいで死なれたら、後味が悪すぎるわ。
いい気味ね。
これに懲りて、仲間を大切にすることを学んでほしいものね。
「・・・ねぇ、ミレイさん。何かありましたぁ!?」
伊達に冒険者ギルドで受付を何年もこなしているわけではなく、若く見えても切れ者だった。
パーティーの異変に気付いたみたいだった。
「ええ、ちょっとね。パーティを抜けることにしたの」
「ああ、やっぱり・・・ここだけの話、シャナトさんは女癖が悪くて、受付の女の子たちも最初は評判良かったんだけど、最近ではあんまりだって言ってましたもんね。ミレイさんもよく我慢した方だと思いますよ。ここだけの話ですよ」
女の子は例にもれず噂話が大好きなのだろう。
まあ、これで噂がまた一つ増えたってところね。
まあ、若い冒険者の女の子が悲しい目に合わないでいてもらえるように、
どんどん悪い噂を広めて欲しいものね。
「それは、どうもありがとう。まあ、だいぶ我慢していたかもしれなかったわね。シャナトは性格は悪かったけど、才能はあったからね。そうじゃなければ、こんなに若くしてBランク冒険者なんかには慣れなかったと思うんだよね。性格が悪くなければ・・・・」
仮定の話をしても意味がないので、最後まで語らなかった。
あんな別れ方をしたのに、なんだかまだ未練があるみたいな発言は嫌になったからだ。
ほんとつくづくダメな女だわと自分自身を非難していた。
「ごめんなさい。何でもないわ」
「そうですか。色々ありますもんね。・・・ところで、ミレイさんはこれからどうするおつもりなんですか?」
受付の女の子は突然話題を変えて来た。
どうしたのかと、周囲を見回してみると、受付の先輩からの視線が飛んできていたのに気がついた。
ああ、あまりペラペラとしゃべりすぎていたので注意が飛んできたに違いないわ。
暇そうなのに・・・。
受付業務も大変ね。
「一度、故郷に帰ろうと思うの、東の方に向かう護衛の依頼ってないかな?」
ティスはまだ、あの町で冒険者をやってるかしら。
とにかく1度謝っておきたい。
でも・・・・あの時の残念そうな目が忘れられないわ。
・・・・決めたじゃないの、ミレイ!
許されなくても構わないって、とにかく、謝って、それから先は・・・・。
のんびりするのもいいかも。
「え・・・・と、あっ、ありました。Cランクパーティ『レディホーク』が丁度、護衛依頼の為に神官を探しています。それと、このパーティはCランクに上がったばかりなので、Bランクのミレイさんなら丁度いいですね。あと、片道ですし、それに女性だけのパーティなんですよ。ミレイさんは可愛いですから安心かなっとおもいます」
「そんな可愛いなんて、そんなことはないわよ。でも、それは助かる。ちょっとシャナトとは嫌なことがあったからね。女性だけだと少しホッとするわ。それでお願い」
「では、2日後の朝に一般街にあるリディカ商店前で集合になっていますが、パーティには事前に会いますか?」
「いいえ、大丈夫。私自身の準備もあるから当日で構わないわ」
「では、それで受理しておきますね。でも、王都からミレイさんがいなくなると思うと少し寂しくなりますね」
「そうね。でも、また王都に来ることがあれば、その時はよろしくね」
「はい、よろこんで!」
こうして、Bランクパーティ『ライトニングバレット』だった神官ミレイはパーティを抜けて、故郷に向けての一歩を踏み出すことになった。
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