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風魔法

 今日もいつも通りに町から東に進んだところのロックキャニオンにきている。

 ここは岩トカゲが生息している場所だ。


 昨日はちょっと変わったギルドマスターに会って色々と普通では考えられない情報が入ってきた。

 その後は何をどうするかを色々と考えて部屋で一緒にティラノと戯れていたけど、

『強くて可愛いを目指す』目標は今の所変える必要はないと考えた。


 で、朝から岩トカゲの討伐依頼を受けてこの場所にやってきたという訳だ。


 まあ、俺は頭がいいわけじゃないしな。

 色々考えても大したことは浮かんでこなかったし。

 結局思いついたのは、

 ギルドマスターの名前を聞き忘れたことぐらいだった。


 ただ、ティラノの特殊能力で『変身』と『風魔法 中級』というのがあると分かっただけでも、

 銀貨5枚を払った価値があるってもんだ。


 銀貨5枚・・・1ヶ月の収入の半分は痛かったなぁ。


 というわけで、

「ティラノお前の為に使った鑑定料を頑張って稼ぐんだぞ」

 キャオッ

 それにしても返事だけはいつも一流だよな。


 岩トカゲの討伐報酬は銀貨1枚だ。

 これは何匹倒しても、特に報酬は変わらない。

 その理由は、依頼主が冒険者ギルドにあるからだ。


 昔からこのロックキャニオンは岩トカゲの天敵がいないことで繁殖が盛んにおこなわれている。

 昔、お金にもならないからという理由で放置されていた時代があったが、その時、大量に繁殖した岩トカゲの群れが町にあふれて来た。

 岩トカゲのスタンピートが起こったのだ。

 解決にものすごい犠牲と労力を払った冒険者ギルドはそれ以後定期的に間引くために常設の討伐依頼を設置するようになった。


 しかし、硬い皮膚は武器を痛め、素材としては初級冒険者の安い皮鎧にしかならず、その肉ですら低級の干し肉の材料にしかならない。

 討伐するにしても、攻撃力や耐久性が高い為、なかなか大変である。

 一方、その硬い皮膚は武器の耐久性をへらしてやっと倒しても、傷だらけになった岩トカゲは素材としての価値が下がり、実りも少ないのが大きな問題でもある。

 だから、俺のようなうだつの上がらない冒険者が生活費の足しにするために、やむを得ず、1週間に1度程度の討伐に行くのだ。


 それに反して、ティラノはガジガジと噛みつくことで岩トカゲを倒すことができて、その肉が食事となるので、計算上では毎日討伐に行くことが出来る。

 しかし、そんなティラノであっても、上手く討伐できずに怪我をすることもあり、もちろん、怪我をすれば討伐はお休みとなる。


 まあ、仮に大きなけがをせずに毎日討伐に行ければ、1日銀貨1枚を討伐報酬で受け取ることが出来る。

 これは、俺が岩トカゲで月に銀貨を4~5枚しか稼げなかった頃に比べると、今では月に30枚近く稼げる計算になる。


 あくまで計算上だけど・・・。


「ティラノ、お前がもっときれいに岩トカゲを狩ることが出来たらな・・・・。素材としての価値が上がるんだが・・・まあ、そんな贅沢は言えないよな」


 キャオッキャオッ


 ティラノに愚痴をこぼすと、キャオッキャオッと騒ぎだした。


「なんだ怒ったのか?ごめんな、贅沢言いすぎだよな。ただでさえ、収入は2~3倍位になるというのに、人間は欲が出るとだめだな」


 キャオッキャオッとティラノが俺の足を甘噛みしてきた。


「なんだ・・・元気出せとでも言っているのか。うれしいことやってくれるじゃないか、ティラノ。・・・・さあ、気を取り直して今日の岩トカゲの討伐だ。ガジガジいくぞっ!!」


 俺がそうティラノに伝えると、正面にいた岩トカゲに向かって走りだした。


「よーーーし、ガジガジいったれぇーー」


 ティラノを援護するために、俺もティラノの後をついて行った。

 スピードはあまり早くないので、すぐに追い付けるんだが、今回はいつもと少し違っていた。


「どうしたんだ!?せっかくのスピードを生かして戦うのがお前の戦い・・・・・・!?」


 普段、攻撃の直前で立ち止まることなんか1度もなかったのに、ティラノは何を考えたのか急停止した。

 ティラノの真後ろで、それを見た俺はいつものように戦うことを促すために声をかけた。


 いや、声を掛けたが、最後まで伝えることは出来なかった。

 ティラノが何かをしようとしていたからだ。


 いつもと違う行動をするティラノに、これから何をするのかドキドキとしながら様子を見ていた。

 すると、少しづつティラノの体の周りに風がまとい始めた。


 そして、ティラノは大きく口を広げると、


 キャオッ!


 いつもの鳴き声を上げた。


 何だよ・・・。

 声で岩トカゲを威嚇しているだけかよ。

「おいおい、何か起きると思ったじゃないか、今更そんなことする必要ないだろ」と声をかけようとした。


 ブワォンッッ!!


 俺の髪の毛が後ろに向かって、風で大きくなびいていた。


 そして、次に視界に見えたものは、ティラノの口の前から、三日月状の風の塊が岩トカゲに向かって飛び出た。

 それは、まるで風魔法のウインドカッターのようなものだった。


「ティラノ・・それは・・・魔法なの・・か!?」


 強風の為、少し話にくくなりながらも、驚きと共に口からこぼれて来た。


 ・・・・・岩トカゲの首が飛んだのは俺がしゃべり終わるのとほぼ同時だった。


「ティラノ、今のは何だったんだ!?魔法か・・・いや、魔法だよな。すごいぞっ、岩トカゲの首を真っ二つだ。なんて強力なんだよ。お前、何時からそれを使えるようになっていたんだ。っていうか、どうやって取得したんだよ」


 思わずティラノに向かって色々と聞きまくってしまった。

 ティラノはキョトンとした顔で俺を見ているが、

 ほとんど話は通じていないだろうと話終えた後に思いついた。


 とにかく、活動を停止した岩トカゲを確認に行った。


 完全に首と胴体が離れていて、その傷跡はとても綺麗だった。


「ティラノ、すごいぞ。これだけ綺麗な状態ならば、銀貨半分くらいの素材の価値があるかもしれんぞ」


 俺は喜びを隠せなかっただけでなく、魔法の力すげーーと感心していた。

 これまで魔法といえば、パーティで一緒になった魔法師が、

 初級の攻撃魔法を色々と使用していたのを見たことがある。

 しかし、今回の魔法と較べると攻撃力があまりにも違いすぎるのではないかと思った。


 それにしても魔法1発で岩トカゲを倒しきるなんて・・・。


 そういえば、俺が知っている強力な魔法といえばシャナトの雷魔法位じゃないかと、遠い昔を思い出していたが、その後の事も合わせて思い出したら嫌になったので、すぐに思い出すのをやめた。


そして、ドヤ顔のティラノを見ながら、

「そうだった・・・お前は、風魔法中級が使えるんだったな」


 鑑定の中で『風魔法 中級』が使える事を思い出して、今のがそれなんだろう理解した。


読んでいただきありがとうございます。


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