ギルドマスター②
「あ・・いや、すまない。かつてのパーティがスキル【鑑定】をもっていたんだよ。それで、昔、冗談で鑑定をもったゴブリンがいたらどうなるんだろうってね。それは・・・」
ギルドマスターの話が長かったのでまとめると、
ゴブリンが鑑定をもてるとすると、それなりに知能を持ったゴブリンとなる。そして、そのゴブリンが鑑定によって自分よりも弱い敵ばかり倒してある程度強くなる。次に考えるのは相手の弱点を突いて自分よりも強者と戦い、進化する。それを繰り返していくことで、最後には、誰にも負けないゴブリンとなるだろう。
「・・・と、そんなことを長々と仲間達と冗談で話していたんだ。まさかその冗談が本当にいるなんてな。鑑定士のダイクからその話を聞いたときには、それを思い出して寒気が止まらなかったぞ」
ギルドマスターは1度ゆっくりとため息を吐いて、話を続けた。
「そして、さらに驚いたのが、ティス君のいう通りにその従魔の可愛さだ。その従魔を初めて見て、そんなに可愛い従魔が魔王になるなんて考えられないと、私も直感で思うくらい異様に可愛かったのだ」
ギルドマスターは何かを考えると、鑑定士さんに声を掛けた。
「そうだな。続きを話す前に、ダイク、その従魔の【鑑定】以外の鑑定結果を教えてもらえるか?」
「はい、わかりました。その従魔の鑑定結果ですが・・・攻撃力D:防御力E:魔法E:力D:知力E:スピードFです。それから特殊能力として『可愛い』『変身』『鑑定』『風魔法:中級』があります」
特殊能力の中に『急成長』がなくなっていた。
あのムクムクと大きくならなくなったのは急成長のせいだったんだと、不思議にその点に意識がいった。
俺がそんなことを考えていると、鑑定士さんの言葉を受けて、ギルドマスターはしたり顔で話し出した。
「察しのいいティス君なら分かると思うが、『可愛い』という特殊能力があるだろう」
やばい、【急成長】の事しか考えてなかった。
えっ、それに、可愛いのは特殊能力のせいだったのか!?
そんなことよりも、【可愛い】は何が問題なんだ。
さっぱりわからんぞ・・・!?
特殊能力というよりも、完全に見た目だろう。
その場でティラノを見直してみても、やっぱり、可愛いとしか思えなかった。
「はあぁ」
とにかく、わからなかったが話を合わせる為に生返事をしておいた。
「そうだ。その通りだ。ティス君も判っただろう・・・・・んっ!?まあ、いい」
あっ、俺が気づいていなかったことにギルドマスターが気づいたっ!!
でも、流してくれた。
さすが、ギルドマスターだ。
「その従魔はどんなに凶悪になろうとも、スキルに『可愛い』があるから、そのスキルのせいで、周りは可愛いと勝手に思い込んでしまうだろう・・・だぶん」
えっ・・・・最後にたぶんって入っていたよね。
それに、何でかギルドマスターは少し目をそらしてるけど・・・なんで、そんなに自信なさげなんだ。
つまり、このギルドマスターすごいのか、そうじゃないのか・・・・わからない!?
まあ、すごいのは間違いないが、思い込みも凄そうだ。
「いずれにしても、これは、かなり危険なことなんだ。判るだろう」
ちょっとわからないな。
いいや、わかった事にしておこう。
流してくれるだろう。
「とにかく、自ら話すことの出来ないモンスターの事なので、あくまで今までの話は私の想像である部分も多いかもしれない。しかし、気をつけておいても悪くはないはずだよ。それと、今ここで話をしたことは他の冒険者に伝えないようにしておいてくれ。変な心配をかけたくないからな。えーっと、私から言いたいのはこれくらいだが、ティス君から何か聞いておきたいことはないかな?」
「はい、では一つだけいいですか?」
「一つでいいのか?」
なんだ、もっと話を聞いて欲しいのか!?
ゴブリンの話もそうだけど、案外お話好きなのかもしれない・・・。
「前回の鑑定の時にあったのかどうかは覚えていないんですが、特殊能力の中にある『変身』って何だと思いますか?」
「んっ!!『変身』のスキルか!?まあ、なんだ。変身するんだろ。違うか!?」
えーーと、その答えはギルドマスターとして大丈夫ですか!?
隣で笑いをこらえている鑑定士さんはとても辛そうですよぉ・・・。
「ああ、そうですね。ははっ、変身するんですよね。すみません。くだらない事を聞いてしまいました」
「まあ、これだけ珍しい従魔だから変身した結果も特別かもしれん。だから、わかったら教えてくれるとありがたいかな。頼むなティス君」
空気の読めるギルドマスターなんだろう。
何となく最後は取り繕うような答えだったように思えた。
結局、ギルドマスターの話はティラノが特異ケースすぎるから、あまり他人に従魔の能力について話さないようにということで理解したらいいのかもしれない。
そして、ギルドマスターの応接室を出た。
帰りながら、今回の鑑定で一番気になったのは前回のオールFから今回かなり上昇していたことだ。
ギルドマスター達は鑑定の事で気を取られていたせいで気づかなかったようだが、攻撃力Dは今の俺と同じ位だ。
集中して戦闘訓練をしたとはいえ、ほんの10日前後位だった。
たったそれだけの期間で攻撃力Fから2段階も上がるか!?
完全におかしいだろう。
出会いからして謎だったが、これで、さらに謎が深まるばかりだった。
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