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6 秋場所展望、秋場所新番付

 月刊国技、秋場所展望記事。


 各種メディアで報じられているとおり、この夏、大相撲界をみっつの悲劇が襲った。


 そのうちのひとつ。引退した金の玉征士郎に関して、発覚した事件については、他で特集を組んでいるので、ここではふれない。


 あとのふたつ。


 横綱羽黒蛇と、新三役、近江富士の故障による長期離脱である。 


 五十二連勝を金の玉にストップされ、夏場所終盤三連敗を喫した羽黒蛇は、名古屋場所、見事に復活。


 いや、連勝時をも超えた自由自在な相撲により、他に冠絶する圧倒的な強さを見せた。


 新たな連勝記録のスタートの場所。相撲ファンは、誰もがそう感じたことであろう。


 今回の横綱の故障箇所は、膝である。それも、元通りに完治することは望めない、という性質のものである。


 羽黒蛇は、休場後の現役続行を表明しているが、横綱は、その相撲の基幹をなしていた強靭かつ柔軟な下半身を、今回の故障で、失ってしまったと言わざるをえない。


 近年の大相撲は、羽黒蛇の一強時代であった。


 直近三年十八場所中十二回。直近二年十二場所中では九回の優勝。


 羽黒蛇一強時代は、突然、その終焉を迎えた。 



 投打にわたって卓越した記録を残した高校時代。

 五球団からドラフト1位指名された甲子園のスター、新谷明は、昨年初場所、三年以内に横綱になる、との公約のもと、大相撲の世界に飛び込んだ。


 そして、この名古屋場所まで、土俵に鮮やかな軌跡を残した。

 

 先の名古屋場所では、最強豪力士たちに互するだけの力量を示し、その後の夏巡業では、羽黒蛇との稽古相撲で右肩靭帯を断裂させるその瞬間まで、さらに強みを増した姿を見せていた。


 羽黒蛇時代のあとの大相撲界を展望した時、その時代を担う力士としては、照富士三兄弟、若吹雪、荒岩といった力士の名前があげられるが、近江富士は、その抜群の身体能力から、それらの力士の中でも、ひとり抜きん出るのではないか。

 そう思わせるものがあった。


 初土俵以来三年以内の横綱昇進も、この男であれば、成し遂げたであろう。


 但し、近江富士は、横綱昇進後、短期間での引退。野球の道への再転向も表明していた。


 ゆえに、彼、近江富士明の土俵人生は、金の玉征士郎にも似た、短く、栄光と伝説に彩られた物語として完結するはずだった。


 物語は、未完に終わった。


 残された力士たちにより、きたる秋場所は、行われる。


 この場所の優勝予想をするとなると、大相撲界は、群雄割拠の時代を迎えたと言うことになろう。


 優勝候補としては、横綱、玉武蔵。伯耆富士。新大関、荒岩の名前が挙げられよう。


 今年に入って、初場所からの成績を列挙すれば、


玉武蔵:11勝、全休、12勝、12勝。


伯耆富士:12勝、13勝、14勝、11勝。


荒岩: 9勝、11勝、10勝、12勝。


 羽黒蛇が不在となった今、成績の上では、この三力士の、中でも伯耆富士の安定感が、目立つ。

 

 弟である近江富士の長期離脱というショッキングな出来事はあったが、横綱二場所目。


 本命には、伯耆富士をあげたい。


 対抗は、玉武蔵。

 全盛期から比べれば、衰えを感じさせていたが、ここ二場所は、しばしば往年の力を取り戻したかのような、相撲を見せている。

 一昨年名古屋場所から二年間、賜杯から遠ざかっているだけに、この秋場所、優勝に対する意欲は強いであろう。


 三番手は、荒岩。

 何かと行事の多い新大関の場所だけに、その分、割引は必要だが。先の名古屋場所、特に後半戦は、一皮向けたかのような強みを見せた。


 ここのところ停滞気味の、大関早蕨、若吹雪も優勝争いに加わるだけの活躍を期待したい。


 先場所ともに九勝六敗だった関脇曾木ノ滝と緋縅。

 羽黒蛇との対戦がないとなれば、それだけで二桁。十勝が望めるわけだが、さらに白星を重ね、大関候補と名乗りを上げてほしい。


 十八歳九ヶ月。

 貴花田の記録を一ヶ月更新、史上最年少三役となる豊後富士。


 夏場所は横綱玉武蔵から、名古屋場所は、大関若吹雪から殊勲の星を挙げ、更には新大関荒岩にはここまで二連勝。

 既に大物キラーと言いえるだけの実績を残しており、その若さを考えれば、前途洋々。


 下位への取りこぼしを無くし、安定して二桁の星を残していけば、十代大関への展望も開けるであろう。


 その他、この秋場所は、横綱、大関、三役との対戦圏内に、松ノ花、竹ノ花、神天勝、神天剛の若手有望力士が集結した。その活躍も楽しみにしたい。


 羽黒蛇、近江富士が長期離脱となり、この秋場所は、その最初の不在場所となるが、まだまだ見どころは多い。


 白熱した場所となることを期待する。


秋場所番付(各末尾は、前場所成績)


東横綱、羽黒蛇。二十六歳。山形県出身。庄内部屋。186センチ、154キロ。優勝十六回。15-0


西横綱、玉武蔵。三十歳。埼玉県出身。菱形部屋。194センチ、172キロ。優勝二十三回。12-3


東張出横綱、伯耆富士。二十二歳。東京都出身。照富士部屋。185センチ、132キロ。優勝二回。11-4


東大関、早蕨。二十六歳。奈良県出身。瀬戸内部屋。181センチ、135キロ。10-5


西大関、若吹雪。二十三歳。北海道出身。千葉乃海部屋。190センチ、155キロ。優勝一回。8-7


西張出大関、荒岩。二十一歳。兵庫県出身。菱形部屋。188センチ、141キロ。新大関。12-3


東関脇、曾木の滝。二十三歳。鹿児島県出身。瀬戸内部屋。188センチ。147キロ。9-6


西関脇、緋縅。二十三歳。群馬県出身。石見部屋。183センチ、123キロ。再関脇。9-6


東小結、豊後富士。十八歳。東京都出身。照富士部屋。186センチ。128キロ。新小結。9-6


西小結、近江富士。二十歳。東京都出身。照富士部屋。185センチ。113キロ。新小結。12-3


東前頭筆頭、大乃洋。三十四歳。秋田県出身。伊豆部屋。185センチ。127キロ。9-6


西前頭筆頭、松ノ花。二十四歳。宮城県出身。浜寺部屋。187センチ。156キロ。竹ノ花の兄。7-8


東前頭二枚目、神天勝しんてんしょう二十三歳。愛知県出身。神竜部屋。185センチ。163キロ。9-6


西前頭二枚目、竹ノ花。二十二歳。宮城県出身。浜寺部屋。184センチ。143キロ。8-7


東前頭三枚目、神天剛しんてんごう二十一歳。モンゴル出身。神竜部屋。188センチ。150キロ。10-5


西前頭三枚目、神ノ山。三十四歳。静岡県出身。越ノ海部屋。180センチ、134キロ。8-7


東前頭四枚目、若狼牙。二十六歳。モンゴル出身。厨川部屋。187センチ。134キロ。9-6


西前頭四枚目、北都国。三十五歳。北海道出身。由比ケ浜部屋。193センチ、155キロ。7-8


東前頭五枚目、若飛燕。二十三歳。青森県出身。越ヶ浜部屋。184センチ。116キロ。6-9


西前頭五枚目、神ノ花。三十一歳。モンゴル出身。越ノ海部屋。176センチ。125キロ。8-7


東前頭六枚目、白根山。三十二歳。山梨県出身。由比ケ浜部屋。189センチ、176キロ。8-7


西前頭六枚目、梅ケ枝。三十歳。京都府出身。丸山部屋。191センチ、137キロ。3-12


東前頭七枚目、神ノ海。三十七歳。兵庫県出身。越ノ海部屋。179センチ。130キロ。4-11


西前頭七枚目、蒙古山。三十四歳。モンゴル出身。淡路部屋。182センチ。155キロ。4-11


東前頭八枚目、信濃川。二十九歳。長野県出身。伊豆部屋。186センチ、130キロ。3-12


西前頭八枚目、加古川。二十九歳。兵庫県出身。伊豆部屋。188センチ。147キロ。4-11


東前頭九枚目、吉野川、二十九歳。徳島県出身。厨川部屋。177センチ。132キロ。8-7


西前頭九枚目、備前山。三十四歳。岡山県出身。淡路部屋。185センチ。153キロ。7-8


東前頭十枚目、神天勇しんてんゆう二十四歳。青森県出身。神竜部屋。184センチ。145キロ。8-7


西前頭十枚目、印南野、二十五歳、兵庫県出身、伊豆部屋。188センチ、147キロ。9-6


東前頭十一枚目、八ケ岳、二十六歳、群馬県出身、若島部屋、185センチ、139キロ。8-7


西前頭十一枚目、蒲生野、二十二歳、滋賀県出身、瀬戸内部屋、186センチ、158キロ。8-7


東前頭十二枚目、岩手山、三十歳、岩手県出身、若島部屋、180センチ、133キロ。再入幕。10-5


西前頭十二枚目、獅子吼岩。二十九歳。中国出身。東雲部屋。183センチ、167キロ。5-10


東前頭十三枚目、韓国岳。三十一歳。宮崎県出身。筑紫部屋。183センチ、144キロ。5-10。


西前頭十三枚目、月錦。三十二歳。石川県出身。毛野部屋。181センチ。134キロ。6-9


東前頭十四枚目、築洲山。二十八歳。福岡県出身。淡路部屋。191センチ。142キロ。6-9


西前頭十四枚目、防洲山。三十二歳。山口県出身。淡路部屋。171センチ。148キロ。5-10


東前頭十五枚目、雪錦。三十二歳。石川県出身。毛野部屋。181センチ。131キロ。7-8


西前頭十五枚目、北乃王。二十四歳。ロシア出身。鶴見川部屋。193センチ。210キロ。再入幕 10-5


東前頭十六枚目、予州山。二十八歳。愛媛県出身。淡路部屋。189センチ。172キロ。6-9


西前頭十六枚目、古都乃花。三十四歳。奈良県出身。由比ケ浜部屋。182センチ。168キロ。6-9



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― 新着の感想 ―
[一言] 読まさせていただきました……実は高校時代に恩師から似たような話を聞かされ(詳しい話はここではしません)たことがあるので、話に妙なリアルさを感じました。続きがどうなるのか、金の玉がどこへ行って…
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