表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

食材認定「不可避。焼くわ!」

ドラゴンの傷は、おそるべき再生能力ですでに塞がり始めていた。

ルナはちらっと盾から顔を出して、状況を確認する。


ドラゴンが喉を「グギャァッ」と鳴らす。

舌の根に、バチバチと光が見えたが、ドラゴンブレスは出てこなかった。

残り火だったのだろう。


ふう、とルナが吐息を漏らす。


それを聞いたのか、ドラゴンはぎらりと強烈にルナを睨んだ。


空気がビリリと張り詰める。


低級魔物ならばこのひと睨みで絶命するほどだ。

しかしルナはへっちゃらな様子。


ドラゴンは「こいつは強い」と認識を改めた。

全力で殺す!! と眼差しに殺意を込める。


「うひゃ」


ルナは縮こまりながらも、ドラゴンから目を離さなかった。


刮目する。


神の瞳。


「ドラゴンの尻尾が一番美味しいって、コアさん!」

「見るところはそこか。なんともルナらしい……では根元から?」

「うん!」

「切って、焼く、肉汁いっぱい、美味しい」

「うんうんっ!」


ルナの想像を煽ってやると、ふるふると期待に震えた。

ちょろい。


「避けろ、ルナ!」

「ん!」


ドラゴンの翼がばさっと動くと、カマイタチのような風が向かってきて、盾の裏側に回り込もうとする。

盾をお茶碗に戻して、ルナは身軽になると、岩陰に滑り込んだ。


岩も砕かれる。

ルナが別のところに走り込む。

砕かれる。


その繰り返しで、粉々の岩が散乱した。


こけないように気をつけながら、ルナが駆ける。


その間、ドラゴンから目を逸らしてはならない。食欲を維持。


尻尾打ちの構え!


「衝動のままに動け、ルナよ!」


はあい! ──という返事は、ルナの動きがあまりに早かったので、風のように後方に通り過ぎていった。



──スパァン!!


とても軽やかに、ドラゴンの尻尾は切り落とされた。



美しくなめらかに、硬質な鱗さえも切断してみせる「神の武器」。


ルナは大鎌を変化させる。


「[武器創造(カトラリーメイキング)]」


巨大な三又槍(グングニル)にした。

切り落とした尾がまだ地面につかないうちに、突き刺して、確保!


にこにことそれを掲げて、言い放つ。


「ドラゴンテール! どう料理しようかなぁ? んー……すごい火力でないと火が通らないし、生のまま食べたら猛毒なの? うーん、うーん」


ぱちぱちと赤い瞳を瞬かせて[鑑定]している。


ドラゴンへの挑発だ。

ちらり、と送られるルナの流し目がドラゴンを煽りに煽っている。


グギャアアアア!!


望むならくれてやる! とドラゴンが目を光らせた。

四つん這いになって、大きく開けた口の端からはすでに溢れたブレスの雷がバチバチと眩しい光線を放っている。



太陽竜の激昂ソル・ドラゴン・ブレス!!



空に光の柱がのぼる。

天井は溶かされて、ルナもその光の中に消えた。


……殺った。



ドラゴンは大満足で、ゼエゼエと荒い呼吸を整える。

こんな全力を出したのは久し振りなのだ。



「ラララ〜♪」


歌声が洞窟に響く。


間違いなくあいつだ! と、驚愕しながらドラゴンはキョロキョロする。


「ここだよ〜♪」


ルナはドラゴンの背に降り立った。


白い髪が空になびき、まるで天使のような姿だ。


実際には死神であるが。



ルナは三又槍グングニルをナナメに構えて、ドラゴンテールを炎で炙りながら、くるくるとブレスの柱の周りを舞うように動いていたのだ。

見事な焼き加減!


「火力提供ありがとう! 食材も下さい」


首をスパァン! と切り落とした。

あっけない。



数秒の、前。



ゴウン! とドラゴンの頭が洞窟に転がる。


一呼吸遅れて、ズゥゥン……と土煙を上げながら胴体が沈んだ。

焼きたての食材を汚してなるものかと、ルナは慌ててその場を離れる。



今度はゆったりと、三又槍グングニルを嬉しそうに見つめた。


こんがりと焼かれたドラゴンテールが、ほかほかと湯気を立てている。

焦げた鱗が剥がれ落ちると、蒸し焼きにされていたらしいドラゴンの尾の肉が美味しい香りを届けた。


「はああん!」


「はああああーー……」


コアはダンジョンでぐったりと倒れながらも、手でグッジョブサインをした。

そのエールは、心を通してルナに届く。


「食べていいぞ」

「いいの!?」

「ああ。よくやった」


ルナはわくわくと「どーれーにーしーようーかなー?」と選び始める。


「……どれに? その尻尾ではなく?」

「うん……まずは前脚からに決めた。だってね、尻尾を美味しくいただくにはあとひとつ、ソースもあれば最高って本能が訴えてるんだよね!」

「本能」

「直感というか?」


コアは考えてみる。


(まあ大罪【美食】のダンジョンマスターなのだし、ただ食べるというだけでなくこだわりが生まれるのだろう。それがルナの強い力となる)


祝福するつもりでルナを見守った。

よく生還した、と。


……そして「ん?」と違和感を感じる。


「そもそもダンジョンから出るダンジョンマスターがいるか、ばか!!」

「っんう!?」


すでにいただきますしていたルナは、大切な一口めを喉に詰まらせてしまって目を白黒させた。


この件については、後でタイミングについてコアにめちゃくちゃ怒って喧嘩になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ