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後片付け「ひっどい惨状だな、私のせいか」




「おかえり」

「……ただいまです」


この挨拶がなんだか嬉しくて、ルナはえへへとくすぐったそうに笑った。


「助けてくれてありがとうございます」

「……ばか。よくやった」


ルナとコアが、引かれ合うように抱き合った。


お互いの無事をしっかり確認するように。


あたたかな体温は、コアをほっと癒して、ルナの食欲をムラムラと増幅させた。



「炊かれてからしばらく経ったお米みたいな、体温ってものは罪深いよね……はあはあ……」

「37度を食欲に変換するんじゃない」


コアは呆れたようにルナを小突いたが、この食欲に先ほどは助けられたのだから、それほどキツイことを言う気にはならなかった。


なお、雰囲気によってスルーされているが、ルナを洞窟に放ちピンチに陥らせたのもこの衝動である。

コアが再びそれを思い出した時が怖い。


コアはルナの頬をつねる。

ギギギギ!


「ふあ!? 痛!?」

「ダンジョンの入り口でルナのことを待っていたら、なんと罠が発動してなァ!?」

「……それって教室開けたら金ダライ、みたいな感じですか?」

「そう金色だ。そして竜の体を覆うくらいの量の、なんだ? 金ダライ? ん?」

「金の鱗ですよねごめんなさああーーい!!」


皮肉をたっぷり浴びて、ルナがビクビクしながら謝った。

ぎゅ! と最後にひときわ強くつねると、コアはやっと許してくれた。


横着しよって、そういうとこだぞ、とのコアの注意に、ルナが日本のコミュ障時代を思い出して、ズゥンと落ち込む。


しょんぼりしながら、散らばった金の鱗をダンジョンの片隅に積み上げるルナ。


話題を切り替えよう、とコアが手を叩いた。


「はいドラゴンを見ろー」

「美味しそう!」


いともたやすくルナが釣れる。

ちょろい。


「滴るジューシーな脂のソース、作っちゃう!? あああ早くドラゴンテールも食べたいなー!」

「ドラゴンを討伐したのであればダンジョン経験値がたっぷりと得られたに違いないな!」


そっちー!? とジタバタしているルナを放置し、コアが真っ先にステータスウィンドウを展開した。



・ダンジョンの経験値チャージ・なし



「ホワーーーーーッッ!?」


とても変な悲鳴が出た。


「なぜだ、なぜだ!? ルナはあれほど見事にドラゴンを狩ったではないか!?」

「褒めてくれてありがとうございますコアさんー……えーっとね、ダンジョンの外で討伐したから、ノーカウント、という可能性が?」

「直感! なんとかならないか!?」

「なりませ、あばばばばばば」


コアがルナの襟首をつかんでガクガク前後に揺らす。


ルナがその豪力でコアを押し倒し「ストップです!」と完全静止させるしかないほど、荒ぶっていた。


「だってあんなに!」

「泣かないで下さいコアさん。もしかして頑張った私のために涙を……」

「あんなに大量の経験値を逃すなんて!」

「ああそっち……いいですけど……」

「泣いてない」

「はいはい、フーン。さっきの経験値は残念でしたけれど、今から経験値を得る方法は思いつきましたよっ!」

「なに!?」


すがるようにコアがルナを見上げる。


たらーり、と一本の雫が落ちてくる。


「料理をするのです!」

「ひいいい! 汝っ、ばかっ、ヨダレーー!」

「あ、つい」


ハンカチでヨダレを拭ったルナは誤魔化し笑いをしたが、コアに頬をつねられた。

ルナの頬は両方とも赤く腫れた。


「このダンジョンで料理をすること。つまりダンジョンマスターが新たな経験を積むんですよ。というわけで『経験値』の範疇になると思うのです!」

「それが……このダンジョンの……初期経験値……?」


コアが白眼を剥いている。

理想と現実のあまりの格差に、ガクガクと震える。


ドラゴンの討伐というカッコイイ序章は、崩れ去った。


「そう悪いコトじゃないですよ、コアさん。平和にダンジョンが成長する! わあ! これってとても革命的だし美味しいし素敵!」


コアは頭痛とともに思い出していた。


「レストランダンジョン……か……」

「レッツクッキング。美味しいもの食べましょう? 一緒に。ネッ」

「レストランなら料理を提供する側なのでは?」


ルナが青ざめて背後に雷がビシャアアアン!! と落ちる。

物理的に。

つまりそれだけの感情衝撃があって、ダンジョンに反映されたのだ。


感情の波が忙しい。


「うわっ!?」

「食べたいのに……!」


ルナがウルウルと目を潤ませると、今度は奈落の底のような深〜い海が出来上がりかける。


コアはさすがに顔を引きつらせた。


「味見! 多め!」

「素敵!!」


ぱああっとルナの顔が明るくなり、ダンジョンにはあたたかな太陽が照った。


悪い意味でドキドキする胸を押さえて、コアがルナを睨む。


悶々とした愚痴は、はあーーっと長いため息とともにコアの中から抜けていった。



「……我も助力してやろう。ソース作りな。なんだかんだと美学を語る前に、まずはダンジョン強化への地盤を固めるべきだ」

「コアさん……!」

「どういたしましてッ」



コアは先にそう吐き捨てると、プイッと横を向いてしまった。

赤い耳をルナがつつくと、ジト目で睨む。



☆料理をしよう!




なんと経験値は得られませんでした!

がーん……!


ダンジョンを活性化させるしかないですね。

料理しようぜ!キッチンどうしよう(笑)

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