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愚者とふるちん  作者: 虹色水晶
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自動販売機の起原

 『スシバートモダチ』での食事を終えた俺は店を出て、ももかん達の後をついて歩く。なにしろここは異世界なので土地勘などはない。彼女達に基本従うのがいいだろう。


「ふるちんさんは国王陛下から支度金を貰っているとは思いますが」


「ああ。金貨を100枚ちょっとな」


 俺は路銀の入った布袋を手で弄んだ。つまり弄べるくらいに、軽い。


「ですが毎晩出発地点である王都の宿屋に泊まり、宿泊費として金貨8枚を出そうものなら10日も経たずに路銀は底をついてしまうでしょう」


「本当だ!!なんてあの王様はケチなんだろうっ!!」


「そこでふるちんさんに朗報です」


 ももかんは閑静な住宅街にある、二階建ての建物を前にマントを翻した。


「私と母さんが暮らすこの自宅の二階の一室を異世界から来た勇者である貴方に御提供致しましょう!ベッドで寝れば朝までぐっすりと休むことが可能です!!」


「なんだって?!!それなら無料で体力と気力を全回復できるってことじゃないかっ?!!そいつはありがたいなっ!!!礼を言うぜっ!!!」


 俺はももかんとガラの母娘に感謝した。やはり自宅は最高のインフラである。とりあえず今日の寝床は確保できた。安心した俺はももかんの家をまるで自分の家のように玄関のドアを開けようとしたが。


「その前にちょっと飲み物でも買ってから帰りますか」


ガチャリ。


 どこでもドアーを使って村山アニメーションに移動するももかん。


「すいませーん。近藤さん。私の家の反対側に自販機3台ほど設置してください」


「おいおいファンタジー世界だろ?自販機はないだろ。自販機は」


「いえ。古代エジプトにはもう自販機はあったんですよ。ここは中世ヨーロッパ風異世界なのに既に自販機があって、ふるちんさんが自販機があるーー!!!って驚くシーンなので」


「了解。じゃあオタトモで使った自販機そのまんまセットで置くよ」


「お願いしますね」



「うあっ!!中世ヨーロッパ風異世界のはずなのに自動販売機があるぞ!!どうなっているんだっ!!?」


 俺はももかんの家の向かい側にある長方形の物体を見て驚愕した。見慣れたそれは、どう見ても飲料水の自動販売機だ。


「いえふるちんさん。自動販売機は古代エジプトの時代にはもうあったのです」


「古代エジプト?!そんな昔にっ!!!?そうか?!エジプトならアヌビス神のスタンドがあるからどこにだってコンセントはあるな」


「違いますよ。内部構造は酷く単純です。機械の中に天秤ばかりのような物があるのです」


「天秤ばかり?」


「中世ファンタジー物の市場で商人が重さを秤るシーンでたまぁに見かけるあれですね。貨幣を入れると秤りの片方が傾きます。すると重さに応じて商品が下から出てくるという構造ですよ」


「あーなるほどなー。それなら大昔の技術でも造れるな」


「だから普通に私達の世界に自販機があっても問題ないのですよ。さ、さっそく商品を購入してみてください」


「そうだな。じゃあコインを投入して」


 俺は銀貨を放り込もうとして。

 硬直した。

 顔がある。

 目がある。口がある。


「・・・やぁ。君は日本人だね?」


「な、こいつ・・・!!しゃべるぞっ!!!??」


「ええ。喋りますけどそれが何か?」


「君は転生チーターかい?それとも転移かい?いや。そんな事はどうでもいいさ。僕は元々ニホンジンだったんだ」


「なんでニホンジンが自販機になってるんだっ!!!?」


「僕はこの世界に異世界転生する際、自動販売機に転生する事にした」


「もっと他のもんに転生しろよっ!!貴族とか魔王とかドラゴンとかさッ!!!」


「そうだな・・・。君の言うとおりだよ・・・。奇をてらって余りにも王道からそれ過ぎるのはよくないんだ・・・。僕は自動販売機になって、エルフの女の子に背負われ、冒険の旅に出たかった。僕が出す商品で冒険者達の旅の手助けをする。そんな異世界冒険物語の主人公になりたかったんだ・・・」


「お前商品出すだけじゃん・・・」


「でもそれはこの世界ではかなわい夢だった。この世界では自販機なんて珍しくない存在だ。誰も僕を背中に背負ってなんてくれやしない。週に数回。管理会社のおじさんが僕の体を開けて、中のコインを取り出し、商品を補充していく。僕の体の中で、名前の知らないおじさんに弄りまわされていない場所なんてもう残っちゃいないのさ・・・」


「泣きながら言うなよ!!」


「泣きたくもなるさ。固定用のボルトで地面に設置され、身動きは取れない。まぁ自動販売機は元々動けないけどね。夏は暑く、冬は雪が降る。そんな状態での放置プレイ。犬はオシッコをひっかけ、鳥は糞を僕の頭に落とすスカトロプレイ。こんな生活にはもう耐えられない。頼む、僕に向かって荷馬車で突っ込んできてくれないだろうか?」


「なんでそんなことするんだよ?!」


「荷馬車は荷物を運ぶ車両。つまりこの世界のトラックだ。トラックで跳ね飛ばされれば異世界転生できる。だが僕は自販機だ。道端に立っているから荷馬車は突っ込んでこない。道の中央なら荷馬車も来るだろうがここは歩道の端っこだ。ならば君が荷馬車で突っ込んできてくれれば」


「俺が死んじゃうだろっ!!」


「君は蘇生魔法で生き返らせてもらえばいいじゃないか」


「ふるちんさん飲み物買わないんですか?じゃ、代わりに母さんお願いします」


「ほいきた」


 ガラは銀貨を俺の手からひったくると、異世界転生自販機に投入した。そしてボタンを。

 押さない。


「うおるやああああ!!!!」


 奇襲攻撃だ!

 自販機の側面に向かって激しいハイキックを叩きこんだ。


「うぎゃあああ!!!」

「えええ!!!??」


 がらんがらん。

 自販機の下部から缶飲料が大量に出てきた。


「やりましたよ母さん!ヤシの実サイダーが4個も出てきました!」


「あらそう?よかったわねー。ヤシの実サイダーはこの買い方でないと出てこないのよー」


 母娘は笑顔でそう言った。


「いつもこういう買い方してらっしゃるんですか?」


 俺がそう尋ねると。


「自動販売機ってこういう買い方をするもんじゃないんですか?」


 俺はその言葉を聞いて。


「なぁ自販機」


「なんだい?」


「馬車でお前に突っ込む件。考えておくよ」


「頼む」

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