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愚者とふるちん  作者: 虹色水晶
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勇者の初期装備

 俺はステテコパンツのまま城を出て街の商店街にやって来た。途中すれ違った買い物中のカップルにクスクス笑われたり、軽装の制服警官のような男性に職務質問されたが、ガラとももかん母娘の連れだとわかると。


「これはこれは。職務中でありましたか。失礼いたしました」


 と、敬礼して去って行った。どうやらこの母娘かなりの有名人らしい。


「ていうかガラさん。アンタの恰好俺と対して変わらないだろう」


「それは母に対する侮辱です。撤回してくださいふるちんさん」


「そうよふるちん。私はきちんと籠手も脛当ても首甲だってしているのよ。防御は完璧だわ」


 胸と尻とへそを守れ。あと妙なティアラじゃなくて兜はきちんと被った方がいいぞ。


「それで、どこまで行くつもりなんだ?」


 俺の問いに、ももかん母娘は実に意外そうな表情を見せた。


「聞ききましたももかん。この勇者ふるちんはパンツ一丁で旅立つつもりらしいですわ」


「いえ母さん。ふるちんさんは異世界の勇者です。きっと異世界の勇者はパンツ一丁で槍を投げて魔王と戦うに決まっています」


「いやそんなわけないだろ」


 ももかんは近くの雑貨屋の店先に大量においてあった竹竿を一本手に取り、俺に突き出した。


「さぁ!このたけざおこそが貴方の一番いい装備です!これを装備して墓場のゾンビをなぎ倒し、廃墟の悪魔を蹴散らし、洞窟のドラゴンをつらぬき、魔王城の骸骨の群れを振り払って囚われの姫君を救い出してください!パンツ一丁で!!」


「できるかよっ!!途中で骸骨になるわっ!!!」


「魔法の鎧がないとだめだとか、短剣以外の武器は使いたくないだとか選り好みをしてはいけないのです!真の勇者はパンツ一丁ですよっ!!」


「いけないわ。ももかん」


 ガラが横から口をはさんだ。


「パンツ一丁だなんて。それでは防具を装備していないのと変わりない。ふるちんは異世界から来た勇者なのだから旅立ちの際には用意できる最高の装備を見繕って差し上げないと」


 いや。ガントレットとグリーブ以外は裸同然の恰好のアンタがそれ言っても説得力ゼロだろ。


「そうですね。母さん。私が間違っていました」


「そういうわけだからまずはこの店で買い物をしましょう」


 俺はこの世界の文字が読めない。だが看板の図柄で扱っている商品がわかる。盾に交差するように二つの剣。ここは武器と防具の店だ。入店すると早速禿げ頭の褐色の如何にもといった感じの親父が声をかけてきた。


「いらっしゃい。ここは武器と防具の店だよ。何を買うかね?」


ひのきのぼう

こんぼう

ナイフ 各種

どうのつるぎ

くさかりがま

かわのたて

うろこのたて

せいどうのたて

かわのぼうし

けがわのふーど


「たいまつが売っていませんね」


「そうね。斧も売っていないようですわ」


「すいません。農耕用の斧は生憎品切れでして」


 店の親父が平謝りする。


「お前ら!俺に松明だの斧だの装備させてどうするつもりだ!」


「母さん。こないだ来たニホンジンの話してあげなさい」


「こないだ来たニホンジン?」


「あのセンスのない男の事?」


 ガラはこないだ来たニホンジンとやらの説明を始めた。


「この店にニホンジンが来た事があったわのよ。その男は刃こぼれした時に刀身をすぐ取り換えられる簡単に刃が外れる薄い剣を造れと言っていたのだけど」


「そこにたまたま母さんが言わせていたんですよ」


「だから私は言ってさしあげたのよ。『剣ではなくハンマーにすれば鎧を思いっきり叩いても絶対に刃こぼれしないわよ』」


「・・・まぁ刃こぼれしないな」


「するとその人はカルチャーアナフィラキシーショックを起こして死んでしまったわ。悪い事をしましたかしら?」


「・・・別に必要に応じて武器を交換するって発想をしてるんですからガラさんは悪くないと思いますよ?」

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